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共同生活の距離感〜ケントの懐かしい日々〜
I君と一緒に、久慈川流域で釣り系を垂れた
I君は僕より4歳年上
三春町のシェアハウスでも
青森の旅館でも一緒に暮らし
一緒の作業に通っている
つまり僕が日常的に一番接している人だ
釣りの間、僕らは話らしい話をしなかった
作業でもハウスでも一緒にいると
話題をあわせようという気持ちもなくなる
I君も一人の時間が好きだと知っているし
二人とも人の噂話をするほうじゃない
もっと言えば他人に興味がないのかもしれない
全く話をしないわけではないが
どんな話をしたのかはあんまり覚えていない
「天気がいい」とか「魚がかからない」とか
最近読んだ本の話や音楽の話だろうか
(藤井風もI君に教えてもらってから聴くようになった)
I君と休日を過ごすのは、久しぶりだ
2年半前、
シェアハウスで暮らし始めた頃の僕は
ずっとI君と一緒だった
I君が作業から帰ってくると
話を聞き、聞いてもらい、夜は色々語り合った
休日もI君とドライブに行き
一緒に買い物をして、服を選んでもらい
I君が好きな音楽や本を教えてもらったり
ごはんに連れていってもらったりした
正直不安だったのだと思う
僕は高校生の頃から22歳までひきこもりだった
人がいる環境は慣れなかったし
ほっといてほしいという気持ちもあったが
それ以上に不安が大きかった
どうふるまっていいのか分からず
誰かを頼りたかった
(今思うとかなりトガっていたけれど)
そして、I君は大人で落ち着いているように思えた
(あとからそうではなかったことに気づいたけれど)
僕もあんなふうになりたいと正直憧れた
だから、仏頂面をしながらI君につきまとい
仏頂面をしながら質問ばかりしていた
I君は話題が豊富で、楽しい人で
彼を頼りにしている人は多い
だけど、どこかドライでクールだ
誰とでも程よい距離感でつきあっている
共同生活をはじめたばかりの頃は
一緒にいるとき彼が無言になると
嫌われているのではないかと急に怖くなり
悩み過ぎて気分が悪くなったこともある
(結局Tさんに相談して解決した)
I君がクールなので、喧嘩はしなかったけれど
僕が一方的にI君に食ってかかったことはある
子ども扱いされているようで、腹が立った
対等な関係になりたかったのだ
今思うと、かなりウザいヤツだったような気がする
あとから彼にもニコニコ顔で
「ちょっとウザかった」と言われたことがある
いろいろなことがあったが
少しずつ彼との〈距離感〉がつかめるようになった
それはI君とだけでなく、他の同居人や会社の人もそうだ
ひきこもりの僕に共同生活ができるのか
はじめは不安だったけど、少しずつ慣れていった
今はシェアハウスに来てよかったと思っている
仲間たちに会えてよかったと思っている
帰りにI君とラーメンを食べた
無言で肉を食べて、ラーメンをすすり
たあいもない話をした
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◆三春町のシェアハウスで暮らすケントのプロフィール
◆ケントの記事
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