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ホンダビート

 レックスで絶対馬力のないクルマを元気よく走らせる楽しさを知った。年を取ったせいか、スポーツ系なら軽自動車も面白いかもしれない。
 スポーツ系とは、軽トラでもスポーツは出来るので定義が曖昧だが、移動や輸送より優先する価値をもつクルマ、ということとする。ただし、それは笑顔を作るクルマではない。それは尤もらしく叙情に訴え、実は会社を守るためのイデオロギーとして使っている会社のいっている事である。

所有まで

 スポーツ系マイクロミニの理想はバークレースポーツという英国車だが、そんな財力はないので、現実的な線を考えてみる。
 現在、スポーツ系軽自動車は、2022 年にS660 がEOP した今、既販車ではダイハツコペンとホンダN-ONE RS しかない。ただ、乗り出し200 万以上する新車は選択肢にない。絶対的速度は求めないし競技をするわけではないから、アルトワークスやミラ、ヴィヴィオでもない。帰結として、1990 年代2 シータースポーツ、即ちABC トリオであるAZ-1(キャラ)、ビート、カプチーノだろう。
 中古車情報誌で調べると、ビートが最も手頃だ。AZ-1 は高すぎるし、私にはカプチーノは壊れるという偏見がある。そもそも過給機は選択肢にない。ビートはタマ数があるし値段もピンキリだ。前回りを修復済みとある売り物も多いが、これでも旧車と云われるクルマたちと付き合いが長く、大古車に手を出すならある程度の出費は当然である。
 方々回った挙句、ある中古車屋にその個体はあった。95 年式のバージョンZ という、限定車だがタマはたくさんあるという意味不明の限定車だが、試乗したが最後だ。引取り時に送ってくれた子に運転させたら喜んでいた。
 引き取ってから見るとドアの小さい凹みやサイドシル継ぎ目に錆びが浮き始めていたが、ディーラーで車検整備がされ、新車からの整備履歴もあった。OMや車載工具もついており、いわゆる「人気車」を所有するのは初めての新参者だが、まあまあよい買い物だったと思う。

手元に来てから3 年ー故障は

 まず、オーディオが鳴らなくなった。インパネの先にもスピーカーがある、スカイなんたらという4way オーディオだが、スピーカーを全交換した。オーディオ本体は修理済みらしく、元気に動いている。
 カッコつけて標準の伸縮アンテナから短い棒のアンテナに交換したらラジオの入りが悪く、戻そうとしておねじ部が欠けた。
 また、P 席のガラス昇降がガクガクするようになり、トリムを剥がしてみるとなんとガラスホルダとアームを止めているボルトが外れて落ちていた。苦労したが元通りに出来て良かった。
 それからクラッチマスター交換だ。クラッチフルードが室内に漏れ始めた。マスターの先に綿を巻き付けてごまかしていたが、結局Assy 交換した。油圧クラッチの作業は初めてだったが、クラッチ側シリンダーにエア抜きがあり案外簡単にできた。外したマスターはカップを新品に交換して予備に保管してある。
 少し前からチェックエンジンが時々点灯した。ダイアグを調べると、触媒のヒーター断線だ。ハーネスをクリップで引っかける部分にゴムのある、純正同形状の社外品の触媒センサと交換した。非常によい買い物だった。
 メーター10 万キロの区切りの車検時にタイミングベルトを交換してもらった。スバルならいざ知らず、ビートは自分でそこまでの面倒は見ない。その時、ミッション側の車速センサを交換してから、時たま起きていた車速計のフリーズも直った。
 以上で灰汁だしは終わったようで、窓枠の錆び以外に当面不満はない。
 一番大物を忘れていた。購入当初からD 席シートバック、クッションY/外土手部の表皮が破れていたが、1 万キロ以上乗ると目に余るようになった。
 殆どの純正シート表皮は破れている。フルシートカバー仕様が定番であるが、補修を試みた。
 当面手持ちのコルビューに替え、表皮を剥がすとウレタンパッドがカステラボーロのようにボロボロでフレームが見える。中古シートバックのパッドを切り出して接着した。上から補強布を当てたのでパッドは丈夫になった気がする。表皮は破れた部分を切り取り、別表皮を縫製に沿って縫い付けたら結構うまくいった。
 ただ、上手にできたので使うのが勿体なく、今もコルビューのままだ。

へんなところに縫い目がある

 シート以外の変更点はホイール・タイヤとヘッドランプである。ホイールは無限のCF48 が好みだが、良いのがなくワタナベの13/14 インチにネオバを履かせている。サイズは155/65R13 と175/60R14 だ。深い緑の車体に黒ホイールは悪くないが、後輪は気持ちはみ出しているような気もする。
 樹脂のヘッドランプレンズが黄ばみ暗そうなのでLED を入れた。照度は十分で満足している。
 あと、MR2 の巻き込み防止ガイドを付けた。ビートにもボルトオンで付き、立てて走れば多少は役立っていそうだ。

ビートの乗り味

 まず、暖気にえらく時間がかかる。暖気中は少しポコポコした音が目だつ。10分以上経ち、ようやく水温計の針が上がると気にならなくなる。ただし、ガシャガシャした音は依然うるさい。
 そんな遅くないが、街中は低回転でもなまじ走れてしまい、ついだらけた走り方になる。回転は8000rpm 以上回るが、盛り上がりに欠け、その割にうるさい。誤解を恐れずに言えば、レックスのほうが力があるように感じる。レックスは3000rpm 以下がスカスカなので当然だ。すべては相対的である。
 ただ、平地や5%以下の勾配なら動力性能の不満はない。それ以上の上り坂は正直かったるい。

チーム・リッター100馬力

 舵を切ると向きたい方向に素直に向く。無意識に理想的なハンドル戻しをしている。これはミッドシップレイアウトのなせる業なのだろう。 オープンで走ると大変気持ちがよい。サイドガラスを上げれば風も巻き込まないし、開放感は抜群だ。目線は低く、コルビューは余計に低いようだ。S600(S660 ではない)ほど地べた感がないのは、ヒップポイント高が高いのだろう。ただ、絶対位置は低く、夜は後続車のLED ランプがサイドミラーに反射してまぶしい。
 コルビューのおかげか、⾧時間乗っても腰は痛くならない。横方向をきちんとホールドするとよいようだ。この前の遠乗りも腰は楽だった。バケットでも腰部の余裕があり、かつ上体位置が決まらないオートルックやインプレッサのイカシートは⾧時間乗っていると腰が固着する。
 総じて私のビートの乗り方は、バイクに例えると、かっとぶ2 ストのレーサーというより、遠乗りし、ツーリングキャンプに行こうっていうバイクのメンタリティだ。荷物をP 席に載せてたまに遠くに行く。

 この個体は幌やW/S から漏水せず、雨の日も非常に快適だ。だが、幌は外と通じているから、室内の湿度は室外と同じであり、屋根付き車と同じではない。そのうち色々な不具合もでるだろう。
 所有車では一番燃費がよく、唯一のレギュラーガソリン仕様で16-7km/lは走る。インプレッサより古いのに、普段は買い物車と化しており、こんな使い方でいいのかと思う。でも、それが僕の使いかただ。
 これでFF、4WD、RR にMR が揃った。そろそろFR も復活させたい。

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