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弁当やさんの正体、そして〝付録〟

父と姉と私の3人暮らしが始まって、2〜3ヶ月が経ったある日。

相変わらず 父は家にいない、姉はリア充、私は謎の弁当を食べる日々。

この生活、ずっと続くのかな〜と思っていた その時だった。

***

ある日、珍しく 父が家に帰ってきた。
しかも ひとりじゃない。

父の隣には——

めちゃくちゃゴージャスな女性が立っていた。

— ………え、誰??

バッチリメイクにキラキラのアクセサリー、毛皮のコート。
明らかに この家には似合わないオーラ を放っている。

私はじっとその人の顔を見つめた。

— …………ん???結構年上??

いやいやいや、そうじゃない。
ちょっと待て待て待て。
なんでこんなゴージャス??
というか、なんでゴージャスな人がうちにいるの??

すると、ゴージャスさんは 当然のように家の中へ。

そして 当然のようにそのまま住み始めた。

父 → 何も言わず、ニヤニヤ。
ゴージャスさん → 当然のように生活開始。
私 → ?????????

父よ、何か説明してくれ。
と思ったけど、彼が発した言葉は たった一言だけ だった。

「お前ら、弁当の御礼言って!」

……それだけかい!!!!!!!

いやいや、他に言うことあるでしょ!?
「今日から一緒に住む」とか、「大事な人だからよろしく」とかさ!!!

でも 父は完全にゴージャスさんの言いなり状態。

そして私は知ることになる。

弁当屋さんじゃなくてこの人が作って持ってきてたこと、実はスナックのママであり、そして父の彼女(=離婚の原因)だったことを。
そして一回りも年上だということを。
(私の見る目は正しかった。そこじゃないか)
***

ゴージャスママの生活リズムはこうだった。

・昼に起床(朝ごはんの概念なし)
・夕方に出勤(スナック営業)
・夜中に帰宅(めちゃくちゃテンション高い)

つまり、家で一緒に過ごす時間はほぼゼロ。
話す機会もほとんどない。

そんなある日——

ゴージャスママは、私と姉に向かって 忘れもしない言葉 を放った。

「あなた達は 彼についてきた付録だから!」

***

……付録?

私たち、付録??

たしかに 雑誌の付録って、ついてくるだけで選べないもの だけど……

子どもって、そんな扱いなの??

その日から、私は 自分の存在価値がよくわからなくなった。

この家で、私は何なんだろう?
父は母を追い出したけど、同じことしてない?
誰が私の「親」なんだろう?

美味しかった謎の弁当は、
家で作る出来立てになり、
同じ人が作るから味は美味しいはずなのに
前よりずっと味気なくなった——。

(続く) 

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