インド経済・産業のアレコレ #2 「自動車のシェアは?」
成長する自動車市場
今回はインドの自動車市場について見ていきます。昨年2023年のインドにおける新車販売台数(乗用車と商用車)は過去最高の500万台超えとなりました。既に日本の新車販売台数を超え、アメリカと中国に次ぐ世界第3位となっています。
私の会社のインド人同僚や仕事で付き合いのある人たちの中にも初めて車を購入する人や、小型車からSUVなどへ乗り換える人も何人もいます。
日本の若者の車離れとは逆方向に、所得が増え生活に余裕が出てきたところで夢のマイカーを手にする人が増えており、旺盛な需要に支えられ新車販売台数が伸びてきている状況です。
メーカー別シェア
インドの自動車市場におけるメーカー別のシェアはどのような構成でしょうか。ここでは乗用車の新車販売台数ベースでメーカー別シェアを示しています。
第1位はMaruti Suzuki(マルチスズキ)、そう日本のスズキです。インドでスズキは圧倒的な知名度を誇っており、まず知らない人はいないのではないでしょうか。街で道路を見渡すと必ずスズキ車を目にしますし、都市部から田舎に行くほどスズキ率が増していきます。スズキは40年以上からインド市場に参入し、名車「M800」を中心とした小型の低価格車両で爆発的な成長を遂げてきました。
車両は現地生産をしており、北部ハリヤナ州と西部グジャラート州の既存工場に加え、現在新工場の建設も進めています。ワゴンRやSWIFTといった日本で人気のモデルもインドで生産され、販売されています。
インド人の同僚にスズキの良さを聞くと、「インドで長年販売されているスズキ車は、もし壊れてもサービス部品があり安心して長く使える」と言われたことがあります。低価格だけでなく日本メーカーによる高品質な車両は長持ちすることもあり、インドで信頼を積み上げてきたのでしょう。
第2位は韓国の現代自動車(ヒュンダイ)です。日本でも数年前から「ヒョンデ」というブランド名で電気自動車を販売しています。ヒュンダイもインド市場では小型車から中型車まで幅広くラインナップしており、最近ではSUV人気により街中でも真新しいヒュンダイのSUVをよく見かけます。
ヒュンダイも現地生産を行なっており、南部タミルナドゥ州に2工場を持つ他、西部に新工場建設の計画もあります。首位のスズキに迫るべく生産を加速させています。
第3位はインドの地場メーカーTATA Motors(タタ)です。TATAといえば2008年に「Nano」という小型車を発表し、目標価格を10万ルピー(現在のレート(1ルピー = 1.8円)で計算すると約18万円!?)という超低価格で日本でも話題になったことがありました。
現在は小型〜大型車まで広くラインナップしシェアを拡大しています。特に近年は電気自動車(EV)市場で躍進しており、インドにおけるEVのシェアでは7割程度と圧倒的なシェアを占めています。インドのEV事情については別途記事にしたいと思います。
第4位もインドの地場メーカーMahindra&Mahindra(マヒンドラ&マヒンドラ)。MahindraはSUVを中心に乗用車をラインナップしており、またTATAと同じく電気自動車も発売済みです。モータースポーツのフォーミュラE(F1の電気自動車版)にも参戦しており、EVの技術獲得にも真剣な姿勢が伺えます。
第5位以降は簡単に見ていきますが、5位には韓国のKIA自動車(KIAはヒュンダイグループ)で、KIAの車も街中でよく見かけます。6位のトヨタで新車販売台数シェアで4.4%というのは日本人からすると意外に思われるかもしれません。トヨタは南部バンガロールに工場を持ち現地生産を行なっており、昨年は新工場建設も発表されました。世界の巨人トヨタは今後インド市場でシェアを伸ばしていけるのでしょうか。7位はフランスのルノー、8位にホンダ、9位はシュコダ&フォルクスワーゲンと続きます。
スズキのシェアはもっと高かった?シェアの変遷
2023年の乗用車新車販売台数で40%超えのシェアを誇るスズキですが、2019年のメーカー別シェアを見ると様子が異なります。
なんと2019年はスズキが50%超のシェアを占めていました。しかしこの数年で地場のTATAやMahindra、韓国系の猛追でシェアを落としています。スズキのインド国内販売台数を見ると、2019年の175万台からコロナ禍の減少を経て、2023年には170万台と回復しています。
シェア低下の理由として、人々の所得拡大とともにSUVなど小型車より高価格帯でデザインの優れた車種への人気が広がり、SUVのラインナップが少ないスズキはシェアを落としていると言われています。また電気自動車で存在感を示すTATAが勢いそのままにガソリン車でも販売台数を伸ばしています。
スズキもSUVの市場投入を進めており、日本でも人気の「ジムニー」の5ドアモデルを昨年発売した他、2025年には電気自動車も投入すると発表しています。
少し長くなりましたが、インド自動車市場の様子をなんとなく掴んでいただけたでしょうか。今回は乗用車について触れましたが、成長する電気自動車については別途見ていきたいと思っています。
またインドの交通手段として忘れてはならない二輪車(バイク)や、インド特有の三輪車?事情についても追って記事にしていきます。
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