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札幌駅から小樽駅まで歩くだけ

当日までは歩き通せるだろうかという不安にうじうじしているんだけど、始まってみればあっというまで心に残るのは記憶の上澄みだけ。終わってしまってから ようやくさまざまな場面の断片が少しずつ記憶の定位置に収まっていき、歩行祭全体の印象が決まるのはずっと先のことなんだ。

夜のピクニック

一昨日、札幌から小樽まで夜通し歩くという企画をしました。
(自分はこの機会に夜のピクニックを2回読みました。昔からあらすじは知っていたものの実際に読んだことがなかったんです。あれ良いですね。若いうちに読めて良かったと思います。この物語は多感な時期に読んでおくべきです。読んでみましたけど、まだ自分も多感でした。多感で良かった〜。夜のピクニックの一節とともに振り返ります。)

少なくとも大学に入るまでは私たちの「人生」は始まっていない。暗黙のうちにそういうことになっている。進学校というレッテルの箱に入っている今は、全ては大学進学の準備が基本にあって 人生とよべるだけのものに専念できる時間はほんの少ししかない。

夜のピクニック

この企画は部活終わりにそのまま歩いて小樽まで行くという、ただそれだけの企画なんですけど、一緒に行った6名のうちH(20)はその日の部活で負傷、そしてT(19)はその日の練習で心を病んでいました。しかしながら行くと約束した以上、みんなで出発します。

札幌駅を出発

まだ小樽まで歩く辛さを知らない人たち

高校三年生の後半になると何か感情的な記念を残しておきたいという気持ちになるのは分からないではない。

夜のピクニック

手稲まで

まず札駅から手稲まで歩きます。途中、みよしのという北海道のご当地チェーン店で夕飯を食べました。
夜遅くに入ってしまったのでバイトの人たちには迷惑をかけてしまいました。
申し訳ありませんでした!

手稲

24スイーツショップ

24スイーツショップ札幌手稲店でスイーツを食べました。
ここでNさん(21)が22歳を迎えたということでケーキを購入。
このとき食べるのに解凍が必要だったことは知りません。カッチカチでしたね。

22歳おめでとうございます。

星置

手稲からはちょっと歩けば星置です。星置公園の階段で星ポーズの写真を撮りましょう。

星置公園にて、星ポーズ(6人用)
疲れて星置公園の階段に座りこむT(19)

確実に何枚かのショットは自分の中に残る。二度と通らない何気ない風景だけれど、この一瞬は永遠なのだ。

夜のピクニック

銭函まで

星置まで行けた人は銭函まで行けます。銭函まではコンビニも疎らにあるので、そこは安心。

道中発見した可愛らしいキャラクター。

ハウルの動く城に出てくる炎のキャラであるカルシファーみたいなコキア?

銭函

銭函のセブンで休憩しておきます。ここから先にコンビニはありません。
このセブンでの休憩が終われば、朝里まで単調な道が続きます。景色もほとんど変わらず、コンビニも何もありませんから、飯とトイレはここで済ませます。

銭函のセブンで休憩、腹ごしらえ

ここでご飯を食べていたらパトカーがコンビニに来ました。
警察もコンビニに寄って朝飯でも食うのかな?と思ったら、僕らの方に歩いてきました。

「君たちはどういう集まりなの?」
『大学の部活の……』
「あぁ、部活の大会できたの?」
『いや、違います。』
「え、じゃあ家が小樽にあるとか?」
『いや、違います。』
「あ、大学が樽商?」
『いや、それも違います。部活終わりに、ただ札幌から小樽まで歩いていくだけで……』
「あぁ……ずいぶんと酔狂な部活で……。」

職務質問 in 銭函

こんな感じだったかな、職務質問。

朝里駅まで

職務質問が終わって、朝里駅までの道は苦しい単調な道。みんながいないと歩けない、そういう道。

道のり、雪が数cmほど積もっている

世界は連続しているようで連続していないのではないかという感じもする。一枚の大きな地図ではなく、沢山の地図がちょっとずつあちこちで重なり合って張り合わされている、というのが融が歩いていて感じるこの世界だ。だから、ところどころで「つなぎ目がぎくしゃく」していると感じる場所があるし、「薄い」と感じる場所と、「濃い、重要な」感じのする場所があることに気づく。

夜のピクニック
張碓トンネル
薄明光線が綺麗に見えます

朝里駅

銭函から歩いてもたどり着けないと思うような距離にある朝里駅にやっと着きました。(朝里駅と銭函は遠いことを教科書に載せておいてほしかった。教科書を作った人はこの区間を自分の足で歩いてないから、遠いことに気づいていないんだ。やっぱり信じられるのは伊能忠敬だけ。)

なんかいい路地

海辺の集落には独特の雰囲気がある。背後に海があるということが確実に分かるのだ。潮風を意識した佇まいや潮海にさらされた歳月を無意識に感じるせいだろうか。

夜のピクニック
朝里駅

ここでT(19)は札幌へ帰りました。バイトが昼から入っているため先に離脱です。お疲れ様。そしてすまんな、こんなところまで歩かせて。

小樽駅まで

もう最後は気合いで行きます。橋の欄干に寄りかかって、意味のない声を出しましょう。そうすれば体の疲れは海に溶けて歩く体力は戻るはずです。

意味のない声を出す あ〜〜〜あ〜〜〜〜

正しく狂えば人は回復できます。

太陽、雲、山、海、全てがある写真。そしてこの先に交差点もある。

小樽にて

流石に歩き疲れてもう立つのも厳しいので「合理性」のある中段構えで体を整えます。

歩くのはここで中断
北菓楼でスイーツ購入

ようやく小樽の観光スポットになっている場所につきました。
とりあえず北菓楼に行ってソフトクリームを食べます。いやぁ、やっぱうまい。疲れた体に染みる。ソフトクリームのソフトクリームの部分がワッフルの内部空間に隙間なくギッチギチに詰まっていて、全部食べられませんでした。ソフトクリームの上半身部分を食べて満足したので下半身は右にいたNさん(22)にあげました。これが私からの誕生日プレゼントです。嘘です。
ちなみにNさん(22)は皆んなにバウムクーヘンを買ってくれました。ありがとうございました。美味しかったです。

当たり前のようにやっていたことが、ある日を境に当たり前でなくなる。こんなふうにして、二度としない行為や、二度と足を踏み入れない場所が、いつのまにか自分の後ろに積み重なっていくのだ。

夜のピクニック

あと近くに線路があるってことで、線路といえばリットン調査団をしました。

リットン調査団

小樽駅

適当に歩いて、やっと着きました。小樽駅に。小樽駅にずっと会いたかった。

小樽駅ホームにある小樽駅の看板に抱きつく皆、お疲れ様でした

記憶の中でどんな位置におさまっているだろうか。
だけど今、私は自分の位置も自分がどんなピースなのかも分からないのだ。

夜のピクニック

札幌駅まで

札幌までは電車で帰りましょう。歩くのはやめた方がいいと脚が逝っています。

JR車内、座れる喜びを心から感じる

電車に乗って瞼を閉じれば、次に瞼を開いた時にはもう札幌。
電車ってすごいです。

札幌まで750円、有料の1時間。
でも歩けば0円、無料の13時間。
どっちが良いんでしょうか。
僕たちは無料の方をお勧めしたいです。

これにて夜のピクニックは終わり!

なぜ振り返った時には一瞬なのだろう。あの歳月が本当に一分一秒ごとに全て連続していたなんてどうして信じられるのだろうか。

夜のピクニック

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