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#31 行きし世界の備忘録

絵の具を垂らした水色の
空に輝く雲のきらめき
薄青いちいさな花々は
そっと巡る季節を語りゆく

いとけない姿の愛し子は
砂に塗れてきんぴかの
団子を両手に咲く花よ
いつしか消えた片方の靴
けんけんぱしながら帰り道

滲む紅、薄青に
宵の明星きらきらと
群青に染まる草ぐさは
流るる風の行き先を語る

指切り交わす紅葉の手
弾む心に巾着揺れる
空かしたお腹に白米を
かき込む姿は愛し君
ご馳走様の姿に後光差す

濃紺のオリオン瞬く新月の
丑三つ時の宵闇に
息を潜めて風は凪ぐ

いつしかつむじは見えなくなって
見上げた先に交わる視線
残るはひとり
解けた手のひら

絵の具を垂らした薄水色の
暁の空に輝く星のまたたき
夜明けとともに
朝日に向かう背中を送る

そっと願ったしあわせは
白く輝く月だけが
静かに静かに、聴いていた

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