#10 蛙は大海を知らず、天の深さも知らずして
白いチョークを手に取って
真っ直ぐ伸びたものさしを使い
世界とせかいに線を引く
彼女の世界はそこからここまでで完結する
白い線のこちらとあちら
結んで描いたら、はい、おしまい
それはそれは、狭くて、小さい
かわいそうで、もどかしい
世界はもっと広いのだ
斯くいうわたしの世界というと
あっちの端からこっちの端まで
境目がわからないくらい広い
1日かけても回れない
広々として、大きい
満ち足りている
こんなに世界は広いのだ
それを側からみていた何某は
空の上から苦笑する
世界には、境界線はなく
大きさと、きもちも比例しない
ものさしは、皆同じ長さではなく
自分のものさしは己にしか使えない
それを知らねば蛙はいつまでも、
井戸の外へは出られぬのだ