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#32 明けない夜は無いとはいえど

寝返りを打ち
ずれた布団を引き戻す

真昼の机の上ならば
いとも容易く夢の世界に飛び込めるのに
真夜中の、時計の針が響くいま
いかにして夢の世界に向かえばよいか
思考の海で溺れだす

ひとつ寝返りをまた打って
くるまる布団と目を瞑る

吸って吐いて
吐いては吸って
はて、今はどちらのタイミング
浮かんだ時にはまるで水中にいるように
布団の海で溺れだす

ふたつ寝返りを打って
仰向けになり天を仰ぐ

今日は何年何月で
生まれてからは何年経って
寿命は果たしていつ頃か
逆算しながら
導いた答えに息を呑む

今月の給料は何円で
貯金の目標額にはあと何年
いや、寿命から逆算すると
一体いくらあればいい?
こんこんと溢れる煩悩の海

沈みゆく

沈みゆく

沈みゆく

みっつ寝返りを打って
まぶたと共に
からだの奥底へと意識は向かう

吸って
吐いて
また吸って

燦々と光が差し込んで
埃がきらきら
夜の気配が消えてゆく

吸って
吐いて
また吸って

溺れた記憶は遥か彼方へ

また
新しい朝がきて
今日も今日とて
足を止めることなく過ぎてゆく


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