#23 消えた世界のその先に
在りし日の記憶を頼りに歩く
足跡はまだ、
帰る場所を覚えているはずだ
ひとのこころが読めなくなった
目を開いても、あなたが誰かわからない
文字の羅列は理解できても
書かれた言葉は読み取れない
いま、わたしが進むべき道は
右か左か、はたまた上か?
頭の中でこだまするわたしの叫びに
わたしの身体は答えない
歩みを進める意味さえも
一歩進む毎に溶けてゆく
積み上げてきた月日はまるで
砂の城のように地面に還る
家の戸を開けるとあなたが待っていた
おかえり、と掛けられた声に
ただいま、と返すことができて安堵した
擦り減る日々は
波打つ音が高くなり
潮が満ちて
砂浜はやがて消えてゆく
❇︎
こちらを向いて
笑っている女の人がいる
かわいいひとだ
手にしたものには
不思議な記号が並んでいる
ここでは何故かみんな熱心にそれを眺めている
窓の外は今日もとても晴れていて
気持ちの良い風が入ってくる
わたしはだれた?
沸いた気持ちを考える間もなく
腹の虫がそれに応えた