これぞメンヘラ、女の情念を見た(右近)
忘らるる身をば思わず誓ひして
人の命の惜しくもあるかな
右近 『拾遺集』・巻十四・恋四
あんなに愛しあってたのに最近連絡がないあなた。いいえ、わたしがあなたに忘れ去られるのはいいの。ただ「いつまでも一緒に」とふたりで神様に誓い合ったじゃない? 神聖な誓いをあっさり破ったあなたに神罰が下ったらどうしよう、命を縮めてしまったらどうしよう。それが心配でならないだけなの。(ていうかいっそ死んで欲しい)
約束したのに!裏切り者!とっとと死んでしまえ!
百人一首の38番。好きな歌…、というより、人による解釈の違いが、興味深い歌です。
私はこの歌から、「裏切り者!お前なんかとっとと死んでしまえ!」という心の叫びが聞こえるんですが、みなさん、どうなんでしょう(笑)
童貞力の高い夢見がちな男性は「なんてけなげな女性なんだ…」なんて思うかもしれませんが。
でも、ちょっと重いというか、粘着質というか、回りくどく面倒くさい感じがしませんか? 私がもしも男性で、足が遠のきがちな恋人(セフレかもしれない)からこんなことを言われたら、怖気だって全力で逃げます。
本当はただの痴話喧嘩で、あまりに連絡が無いから頭に来て嫌みを送ったものの「あーやっちまった」って思って、なんとか回収しようとしていたら、千年先まで残ってしまってメンヘラ認定… なんてこともあったのかも? なんて、背景のストーリーをあれこれ想像するのが楽しい歌です。
右近
調べると、「右近衛少将藤原季綱の娘。醍醐天皇の中宮」といった情報が出てくるぐらいで、これといったエピソードが無い人のようです。
謎なだけに、歌からその人となりを勝手に想像するのが楽しいのですが、これも和歌の醍醐味のひとつですね。
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