恋なんて憎しみ合ってもできるものである。
それは例えば、レコードの音楽が流れる店。
あのときは楽しかったねと彼は突然呟いた。
あの頃は私たち、何もかも楽しかったわね。
何でこうなちゃったんだろうね、愛は儚い。
話せば話すほど私たちの距離は遠ざかった。
一体喧嘩の理由は、なんだったのだろうね?
好きという感情から私たちは遠ざかったが、
憎しみの感情において、私たちは近づいた。
憎しみ合うほどより強烈に記憶に刻まれた。
それはレコード以外何にもない店の片隅の、
暗い座席で語られた男と女の追憶で始まる。
男はいいよね。傷つくのは、いつも女なの。
いくら男女平等なんで叫んだって体は違う。
子宮がある女だけにしかわからないことよ。
急激な展開に男と女は戸惑い、憎み合った。
ゆっくり考えている暇など一秒もなかった。
私はカウンターで、カクテルを作っていた。
これから始まる物語の序章に過ぎなかった。
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