短編 | 赤と黒
地下室に隠れている男がいた。
「お前の名前は?」
「言えぬ」
「言わないのなら撃つぞ」
「お前たちは本気で言っているのか?私の顔を見て気づかないとは愚か者めが」
「口を慎め!何様のつもりだ!撃つぞ!」
「私はこの国の王だ!」
「えっ?!」
私たちは男の思わぬ言葉に耳を疑った。本当か?こんな砲弾の飛び交う場所に護衛の者をひとりも付けることなく隠れているなどあり得るだろうか?
私たち占領軍は、この男を探し求めていた。それが見つかったかもしれないのに、半信半疑であった。
男に尋ねる。
「身分を証明出来るものはあるか?」
男は答える。
「王が王だという証明は、この顔以外にはない。私の顔に威厳を感じないのか?」
正直に私は答えた。
「まったく威厳など感じない。お前は本当にこの国の王なのか?」
男が答える。「そうだ。私は紛れもなくこの国の王だ」
さて、どうしたものか?
こいつが王であることをどう証明したら良いのだろう?
そうだ!
そういえば、この国には大量破壊兵器があるはずだが、どこを探してもいまだに見つかっていない。こいつが本物の王ならば、大量破壊兵器の在りかを知っているに違いない。
「貴様が王ならば、大量破壊兵器の在りかを知っているだろう。どこにあるんだ?」
「そんなものは始めからないと、あるほど言ったではないか!それなのに、お前たちは私の言うことを信じなかった。そして、有りもしない物をでっち上げた」
それから数ヶ月が経った。いまだに大量破壊兵器は見つからない。おかしい。そんなはずはない。絶対にどこかにあるはずだ。
この国中を探してもない。あと探していない場所は。。。そうだ!こいつの体の中だ。
私たちは国王と名乗る者の口を開いて、大量破壊兵器がないか調べ始めた。
「あった!!!これに間違いあるまい。気をつけねば。慎重にな」
王の金歯をゆっくりと引き抜いた。その瞬間、凄まじい真っ赤な閃光が放たれた。辺りには暗雲が立ちこめて、真っ暗になった。
おしまい