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毎ショ | 世界一しょぼいタイムスリップ
「タイムスリップなんて、あるわけない」と私は信じていなかった。
荒川は、またもやガラクタを作ったようだ。「タイムマシンだ!」と興奮する彼を、私は鼻で笑っていた。
「映像を再生するだけかよ。それでタイムマシンと言えるか?」
彼のタイムマシンは、錆びた鉄板に配線を繋いだ粗大ごみのようだ。これで何が出来ようか?
半信半疑だったが、試してみることにした。
「そこに座るだけさ」
私が座ると激しく振動した。すると意識が遠のいていった。
気がつくと森の中にいた。蝶にいざなわれるまま、ついていくと小屋にたどり着いた。そこには、若い頃の希望にあふれていた頃の自分がいた。
「夢か?」と思った瞬間に目が覚めた。
「どうだった?」と荒川が聞いたから、「すごかった」とだけ答えた。
帰宅して、過去の自分との出会いを反芻した。不思議なことに、前向きに生きる気持ちに包まれていた。
「見た目は世界一しょぼい。だが効用は世界一だな」
私は荒川に感謝した。
(410字)
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