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属格 | genitive

さほど難しい内容ではありませんが、やや専門的な内容になります。
言語学および英語に関心のない方は、スルーしていただいて構いません。
興味のある方だけ、お読みいただけたら嬉しく思います。


属格の分類


英語で、「~'s •••」(屈折形)および「•••of ~」(迂言法)で表される格を属格(genitive [case])という。

属格には大別すると、限定属格独立属格の2つがある。

限定属格はさらに、個別的属格種別化属格に分類される。
個別的属格には、「所有属格」「主語属格」「目的格属格」「同格属格」「部分属格」という下位分類があり、種別化属格には、「属性の属格」「尺度の属格」「起源の属格」「材料の属格」という下位分類がある。

独立属格には、「絶対属格または遊離属格」「二重[後置]属格」「通常の独立属格」という下位分類がある。

表にまとめると以下のようになる。

属格の分類


[1] 限定属格
(attributive genitive)


(A) 個別的属格(individualizing genitive)


(a) 所有属格(possessive genitive)
→the man's passport 
(その男が所有しているパスポート)

(b) 主語属格(subjective genitive)
→the referee's decision
(その審判が下した決定)

(c) 目的格属格(objective genitive)
→the governor's election 
(知事を選ぶ選挙 [知事選])

(d) 同格属格(appositive genitive)
→the city of New York
(ニューヨークという都市)

(e) 部分属格(partitive genitive)
→the journey's end 
(旅のおわり)
⚠️(a)と似ているが、「旅」が「おわり」を所有しているわけではないので区別する。


(B) 種別化属格(classifying genitive)


(a) 属性の属格(genitive of quality)
→a man of iron(鉄の男)
「鉄のような強い意思」という属性を表している。

(b) 尺度の属格(genitive of measure)
→one month's vacation(1ヶ月の休暇)

(c) 起源の属格(genitive of origin)
→the manager's letter 
(マネージャーの手紙)
⚠️マネージャーの所有物ではなく、マネージャーから送られてきた手紙、ということ。

(d) 材料の属格(genitive of material)
→a curtain of smoke(「煙幕」のこと)
⚠️煙から出来たカーテン。カーテンの「素材」は煙。


[2] 独立属格
(independent genitive)


(a) 絶対属格または遊離属格
(absolute genitive, elliptical genitive)
→St. Peter's (サン・ピエトロ寺院)

(b) 二重[後置]属格
(double [post-] genitive)
→an opera of Mozart's
(モーツァルトのオペラ)

⚠️これと似ている表現には、
「a friend of mine」(私の友人の一人)がある。
「my friend」と結局は同じ意味だが、「a」と「my」という2つの限定詞を並べることはできない。
「a friend of my friend」というと、friendという単語が繰り返されることになるので、「mine」という所有代名詞が使われている。

(c) 通常の独立属格
→grocer's(食料品店)、barbar's(床屋)など。

⚠️店を表すstoreやshopが「'」(アポストロフィ)のうしろに省略されていると考えられる。


後書き


「言語学辞典」(成美堂)の内容に、加筆してこの記事を書きました。
学校文法だと、「所有格」と呼ばれるものがおおよそ「属格」に該当する概念です。

ただ「所有格」と言うと、「なにかを持っている」というイメージが強くなります。

「属格」とは簡単に言ってしまえば、日本語の「~の」に相当する「格」ですが、日本語の「の」も、英語の属格も、さまざまな意味がありますね。

例えば英語で、
「their children's education」(子どもの教育)と言った場合、意味は二通りに解釈できます。

「子ども受ける教育」あるいは「親がどのように自分の子どもを教育するのか」。

今回の記事は、英語を話したり書いたりするという意味では、あまり実践的ではありませんが、英語を日本語に翻訳する際には役立つと思います。

そのまま英語を日本語に置き換えると、「何々『の』何々『の』~」というように、やたらと『の』の多い翻訳になり勝ちです。

さきほどの例で言えば、文脈に応じて、「子どもが受けている教育」「どのように子どもを教育するのかということ」という日本語に訳したほうが、誤解を減らすことができるでしょう。



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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします