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短編 | 金色の切なさ
金色に輝く陰毛が見えた。
思わず「あっ」と声を出しそうになった。私は体を洗っていたのだが、私の後ろを通る気配を感じて、目の前の鏡を見たのだった。
彼はほりが深く、前からハーフなのかな、と思っていたが、クウォーターだと知ったのはつい先日のことだった。
「あぁ、ここね。髪の毛は黒いんだけど、ここの毛は金髪なんよ」
小さくつぶやいただけだから、聞こえていないと思ったが、彼にはしっかりと私の「あっ」が聞こえていたのだ。
「やっぱり、君も僕が外国人の血をひいていることが気になっていたのかい?」
私は返答に窮した。別に外国人の血をひいているからといって、彼のことを差別する気持ちなんて全くないつもりだった。心の中では、これは差別ではなく、区別なのだと、自らに言い聞かせていたが、区別も差別も結局のところ同じなのではないだろうか?
「いや、なんと言えばいいか。気にならないと言ったら、ウソになるかな。でも、ふつうの人とはちょっと違うのかな、と」
彼は悲しそうな表情を浮かべた。
「君が差別していないことは分かっているつもりだ。でも、僕は小さな頃から、なんとなく物珍しいものを見るような目で見られることが嫌だった」
私はなんと言っていいのか、わからなくなった。
「ごめんね。戸惑わせてしまって」
彼は我にかえって言った。
切なそうな彼を前に、私に言えたのは次の言葉だけだった。
「もう、風呂出るのかい?」
…おわり
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