母校訪問 | 中学生日記
先週の金曜日から腹痛がつづく。
ほとんど風邪もひかず、虫歯になることもなく、鼻水が止まらないなんてこともない。怪我もしていない。
だから、医者も歯医者も耳鼻科も眼科も、私には無縁だった。
身体的な痛み、苦痛などを経験したのはホントに久しぶりだった。15年ぶりに保険証を使った。
そんな僕(どんな僕?)は、なぜか先日、中学校を訪問することになった。用事があるから、なんとなく呼ばわれたわけだが、プライベートなことだから、この記事ではそこら辺のことには一切触れない。
それにしてもまだ脇腹が痛い。運転するから鎮痛剤を飲むこともできぬまま、いま僕は何十年かぶりに、母校の中学校の門をくぐった。
以下に、僕が見てきたことを淡々と書く。
昇降口や職員室の場所は、僕が通っていたときと、まったく変わっていない。
どこにどんな部屋があったのかは、朧気に覚えているが、どうやら僕が通っていた頃とまるで変わっていないようだ。
ちょっとだけ変わったのは、自習室が増設された程度だった。
教室の大きさも、もちろん僕が通っていたときと同じ。あぁ、エアコンがある。僕の頃は、冬になるとストーブがおかれたが、エアコンなんてなかった。暑い時は窓を開けるだけ。扇風機すらなかった。
3年5組の教室で待っているように言われたから、僕は3年5組の教室へ向かおうとした。
とその前に、一応、職員室へ行って、怪しい者ではないことを告げておこう。
「あぁ、あきらさんですか?お待ちしておりました。ここで、校長先生をお待ちになりますか?」と教頭先生が言った。
「いえ、校長先生には3年5組で会おうと言われていますので」
「左様でございますか?今日は部活が休みの日ですから、教室にはだれもおりません。では、ごゆっくり」
僕は誰もいない教室へ向かい、いちばん前の席にすわった。教室の椅子に座るなんて、ホントに久しぶりだった。
こんなに小さな椅子と机だったかな。懐かしいけど、あまり記憶に残っていなかった。
僕は校長先生がいらっしゃるのをひたすらに待ちつづけた。
5時をすぎた。
6時もすぎた。
教頭先生がやって来て言った。
「校長先生は、必ずいらっしゃると言っております。いま、しばらくお待ちください。いま校長室にいらっしゃいますが、あきらさんとはここでお会いしたいとおっしゃっております」
「そうですか?別に私は用事もございませんので、ここで待っているとお伝えください」
「そうですか?ではそう伝えておきます。申し訳ないですけれども、私はあがります」
教頭先生はそう言い残して、教室を出ていった。
気がつけば、辺りは真っ暗になっていた。
「そうだ、電気を付けよう!」と思ったが、スイッチの場所がよくわからない。僕は手探りでいろんなスイッチを押してみた。
「これか?」と思ったら、廊下の電気がついた。間違ったか?
「じゃあ、これか?」と思って押したが、どこの電気もつかなかった。
これでもない、これでもないと、片っ端からスイッチを押したが、どのスイッチもまるで反応しない。
僕は教室の後ろ側に向かって、そちらにあるスイッチも片っ端から押していった。
これでもない!
これでもない!
とうとう押していないスイッチはただひとつだけになった。
これを押して電気がつかなかったら諦めるしかない。
僕は最後のスイッチを押した。
そのときである。
僕はフワッと浮いた気がした。
えっ?ウソだろ?!
僕は底の抜けた教室の床から下へ下へと落ちていった。
「死ぬ」と思った。いや、死んだのか?
そう思ったとき、一気に辺りが明るくなった。
「あきら君、久しぶり。ようこそ校長室へ」
目の前には、僕が3年5組だった時の担任の先生がいた。ようやく校長先生になれた、とのことだった。
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします