短編 | 浮雲③
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短編 | 浮雲③
私には日常生活がある。どんなに平凡に思えることでも、誰一人として私と同じ日常生活を送っている人はいない。だから、何か特別なことを書こうとしなくても、私が思ったことを思った通りに書けば、読む人にとっては特別ななにかを感じるのだろう。
みなそれぞれ、重きを置くものが違うことを尊重し合うのを「多様性」というならば、今は亡きチクりんさんがかつて書いていたブログは、「我以外、人にあらず」という独裁者に近いものがあったように思う。
「スキが少ない記事には価値がない」「PVが少ない記事には価値がない」
「私の書くことに同意できなければ、読解力がない」
「私を褒め称えることが出来ない者は『ホース・ディア』(バカ)に他ならない」
チクりんさんの記事を読めば、どの記事からもチクりんさんの肉声が聞こえてきたものだった。
どうなんだろう?
チクりんさんは、最初の頃は「メサイアコンプレックス」的な気持ちを抱えていたのかもしれない。
自ら抱える劣等感を、他人を助けることで解消したいという…
けれども、自らの劣等感を隠して記事を書いているうちに、「なんで私の優しさが分からないのだろう?」という思いを肥大化させていき、いつの間にか、チクりんさん自身が本当のメシアであると思い込むに至ったのかもしれない。
誰にでも「チクりん化」は起こりうる。しかし、決して正当化してはならないだろう。
「なぜなぜブログ」から、チクりんさんだけでなく、運営の方のお母様まで亡くなったと風の噂で聞いた。このような悲劇は繰り返してならない。
ブログには確かに、ジコマンがつきまとう。しかし、ブログというものは、たとえジコマンに基づくものであっても、他人を叩き落として、自らを相対的に上位に立たせるという「ゼロサム・ゲーム」ではないはずだ。
私は間近で目撃して感じた、老夫婦の美しさを今日は書いてみたい。ありふれた光景かもしれないが、私の思いが少しでも読者に届くことを願いながら… …
今日も私は、私の心の中に浮かぶ雲に形を与えるべく、ブログを更新することにしよう。
…つづく
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この小説は、ももまろさんとの共作になります
連載物ですが、1話ごとに単独の短編小説として読むこともできます
作中の「私」は
ももまろさんや私の人格ではありません
フィクションです
「浮雲」は、
こちらのマガジン(↓)に収録していきます。
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