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無人島生活福袋

 体はいたって健康だ。怪我1つない。しかし、何も思い出せない。意識を取り戻したときには、右手にオールを握っていた。近くには、烏賊の残骸が転がっていた。辺りには誰もいない。

 この状況から私は無人島にいると推測した。

「あの、どなたかいませんか?」

 不思議なことに「誰かいませんか!」と大声で叫べはいいと思うのだが、気恥ずかしさがあった。どういう理由でここにいるのかわからないから。

「あの、どなたかいませんか?」

 私が好き好んで無人島にやってきたとはどうしても思えなかった。

 しかし、それにしても暇だ。
 助けを求めるにはどうすべきか?とか、食糧や水、寝場所など、考えなくてはならないことが山ほどあるはずだ。しかし、人間は途方に暮れると暇だと思うらしい。

 あれこれ考え始めた頃、1人の男がやってきた。

「無人島生活体験はいかがでしたか?」

 あぁ。そういえば、福袋の商品で無人島生活をすることになったんだったな。

 

(401字)


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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします