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mizuiro_no_natsu
エッセイ |「ありがとう」は有り難し。
「ありがとう」は漢字で書くと「有り難う」。「有る」ことが「難しい」ということだろう。
しかしながら、「ありがとう」という言葉は最もありふれた言葉だ。買い物に行けば、「ありがとうございます」と言われ、職場でも「ありがとうございます」は日常的に聞いたり、言ったりする言葉だ。
日常生活を振り返ってみると、お客様に「ありがとうございます」と言うのも当然のことであるし、仕事もやって当たり前のことに対して「ありがとうございます」と言っている。いずれの場合も「有り難い」ことではなく、「有り易い」?ことに「ありがとう」と言っている。
さらに言えば、当たり前のことに格段の感謝の念をもっているわけでもない。しかし「ありがとう」と言っておかないと無用なトラブルを引き起こすから、言わざるを得ないだけだ。
では、本当に感謝している「有り難いこと」に、「ありがとう」と言う言葉が咄嗟に出てくるかというと、こういう場合に限って何も言葉が出てこない。言葉の代わりに出てくるのは、せいぜい会釈だけの場合が多い。
「起こりやすいこと」に「ありがとう」と言い、「起こりにくいこと」(有り難いこと)には「ありがとう」と言う言葉が出てこないのは、大いなる矛盾なのではないか。
他の人はどうか知らないが、「ありがとう」と言いたくないときに「ありがとう」と言わざるを得ないことに苦痛を感じてしまうことが多い。心の底から「ありがとう」と言ったことがないような気がしないでもない。
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