神話物語 | 霧の女⑦
前話はこちら(↓)
どこをどう歩いたのか覚えていない。
気がついた時には、ホテルのベッドに横たわっていた。
自力でたどり着いたのだろうか?
それとも霧の女の力に依るものなのか、私にはわからない。
ただ、わかるのは、明らかにいつもと異なる心臓の動きをしていることだ。
ふだん鼓動など、あまり気にかけることはなかったが、霧の女が私の心臓になってから、明らかに私の心の持ちようが変わった。
妙にふわふわしている。
心臓は体の中にあるはずなのに、左胸から青い閃光が放たれている。
私は明らかに、霧の女の素顔を見た。
見たはずなのに、思い出そうとすればするほど、私の記憶の中から、霧の女の素顔が消えていった。
しかし、私は「霧の女」のことが気になって気になって仕方なかった。
その夜は、結局一睡もできなかった。
日の光がカーテンから差し込んできた時には、私は霧の女の素顔をスッカリ思い出せなくなっていた。
「君の顔を思い出すことが出来なくなったよ」
私は絶望感を持って独り言を言った。
「私の顔なんて、忘れてしまっていいのよ」
我が胸から放射される青い光が、私に語りかけているかのように光った。
そして、次の瞬間、私は急に激しい眠気に襲われて、そのまま眠ってしまった。
…つづく
第8話はこちら(↓)
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