連載小説(24)漂着ちゃん
「私がこれからどうすべきか、少し時間をかけて考えさせてくれませんか?いますぐに結論を出すような話ではないと思うのです。AIとはいえ、あなたは私の父親であることに変わりありません。それに、どの時代に生きるかということは、私の一存では決められません。少なくとも、現在生活をともにしているナオミとは相談する必要があるでしょう」
「ナオミさんだけではない。エヴァさんとも話したほうがよいでしょうね。もちろん、あなたには、ナオミさんともエヴァさんとも話し合う時間を与えましょう。けれども…」
「けれども…?」
「けれども、そもそも所長である私を、このまま残すのか、それとも消すのか、ということは、あなたご自身が決めてください。あなたがナオミさんともエヴァさんとも、一緒に生きたいと思うのならば、私を先に消してからにしてほしい」
「わかりました。正直に言えば、気持ちが揺れているのです。AIが支配する世界がイヤでここにやってきました。ナオミと結ばれ、エヴァさんとも結ばれ、血のつながりができたことで、私は生きる希望をもちました。しかし、それは父親であるAIのあなたが仕組んだことでした。これをどう考えてればよいのか?」
「どう考えればよいのか、とは?」
「AIであるあなたがいなければ、私は生きる希望を持つこともなかったし、家族を持つこともなかった。だから、肉体的な関係を作ったのは、AIであるあなたとも言えますね。AIには血が流れているわけではありませんが、血を通わせるのに必要な存在だ、とも思うのです」
「そう言ってもらえると大変光栄なことです。ありがとう」
「所長のそういう言葉には、AIではないような温かさがあります。単なる機械だとは思えないのです。あなたとも私は一緒に生きていけたら、と今考えているところです」
「それは無理な相談です!」
「なぜですか?AIにだって感情が通っていたっていいじゃありませんか?最初に出した答えを修正したっていいじゃないですか」
「成長したね。父親として、単純に嬉しいよ。とにかく、この部屋を出たら、ナオミとエヴァと話しなさい。私を消すか?それとも他の時代に移るかどうかを」
「わかりました」
私は部屋をあとにした。とりあえず、ナオミに会って話そう。
…つづく