オープンマイク百態(脳髄液線状降水帯発生地に於ける避難メソッド其の一)

ライブハウス、ライブバー、ライブレストラン、ライブカフェ、音楽喫茶…呼称は様々だが、主に生演奏と飲食を伴う客席数が限られた(ざっくり言って約50席未満?)の場所で、出演者だけでは営業日程が埋まらない、これからライブ活動を目指す出演者予備軍的な方々の力試しの場として、出演者と同じ音響設備でステージに上がってみたい方々の為…以下略、様々な理由で、"オープンマイク"と称する"解放区のような日"が設けられている。

いわゆるエントリーフィー(ステージ参加費用)が必要なお店もあれば、飲食だけでもよいお店もあれば、これらがセットになっているお店もあり、条件も多種多様。

持ち時間はひとり(ひと組)当たり約10分〜15分くらいの所が多く、簡単な自己紹介と2,3曲演奏して次の方へ、という感じ。
参加者が多いと一回(一巡して終わり)だけの演奏、少ないと何巡か演奏機会がある、といった塩梅だ。

お店の人(マスター、或いはスタッフ)が進行する、時には伴奏・合奏にも加わる、或いは"ホストミュージシャン"と称する方(お店の常連客ミュージシャン)が進行する、ホストミュージシャンに拠る伴奏・合奏が可能、不可能…etc,etc.とどのつまり、"オープンマイクのルール(というかお店のしきたり)"は、お店の数だけ存在すると言っていいだろう。

そのお店の数以上に、訪れる方々の目的や手段はバラエティに富んでおり、時としてお店の空間が異界や魔界に変わる瞬間に遭遇する事も。

…括弧内のケッタイな副題から大体想像がつくとは思うが、オープンマイクの持ち時間内で、私が何をやろうと私の自由だっ!という、いわゆる"魂を解き放つ系の方"、その荒技の影響でその後の進行が氷結する(決して音楽として全くいただけない感じ、という訳ではないが、明らかに異質な空気を醸成する、というか、何というか…。)とか。

物腰が穏やかで人品卑しからぬ外見の方が、
"オリジナルをやって音楽活動をしています、宜しく。"
と渋く挨拶された後、暫くの間チューニングをしながら近況報告やら他の場所でのライブ予定などを延々と話し、
"う〜ん、やっぱり今日は気分的にカバーかな?"とか言ってかなり生煮えなコピーを披露し1曲で止める。
…その後のまばらな拍手までの、絶妙にいたたまれない感じ(決してディスってなんかいません、ただ、どうしていいか判らなくなるだけで。)とか。

"初めて来ましたっ!"とかなり緊張していて初々しい様子だが、いざ歌い出したり、演奏し始めると、とんでもない迫力と流麗な技術で辺りを圧倒する"完全にプロ仕様みたいに仕上がっちゃってる方"に遭遇する時とか。

…私個人にとっては"素晴らしい音楽に触れられた良い時間"なんだけど、余りにも抜きん出た感がある内容だと、その後にステージに上がる方が萎縮してしまったり、"仕上がった方"の周りに居合わせた方々がインタビュアーみたいに群がってしまったりして、進行上はかなり微妙な感じに。

そんな時、ちょっと逆ギレ気味に、
"なんかやりづれ〜なぁ、
プロの後はさぁ!"
と言い放つ"アルコール注入過多な常連うるさ方"なんかが噛んできたりすると余計にややこしい。

気の弱い私は、もうトイレへ行かせてくださいっ!お願いしますっ!みたいになる。

そして大概、トイレは並んでいる。

いわゆる、お稽古事、習い事の延長線上のような、"自らの歌唱演奏技術の進捗度を発表する場"を求めてやって来る方達の場合、ジャズ、クラッシック、フォーク、ロック、ポップス…etc、の有名な曲、スタンダードとか定番とか呼ばれるヒット曲をやって場を盛り上げよう、或いは盛り上がろうという"強い意志"が感じられる。

幾人かのグループでいらして、歌う方だけ交代して伴奏は同じ方、なんていう場面が現出したり、その場で知り合った方と急遽合奏をするという"セッション"(乱入に近い惨憺たる結果の場合も!)とか"絡む"(正に一方通行的演奏でやはり惨憺たる結果が!)という和気あいあいとグダグダ合わせ技一本、みたいなエンディングを迎えたり。

ここまで随分な事をいろいろと書いてきたが、そういった場所に度々出入りしている自分自身、果たして他者からどのような"珍獣"扱いをされているのだろう?

…今から30年くらい前、当時参加していたユニットでのライブを"ヤンバルクイナを観るくらい難しい"と、とあるミュージシャンに例えられた。

いまだにそのユニット時代の曲を簡易なギター伴奏に変えてオープンマイクで演奏する私は、やはり"生きる化石"並みに周囲からは扱いに困る存在に違いない。

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