ディズニーヴィランズ考②「国盗り物語『アラジン』」
ジャファー様だけに焦点を当てると理性を失うので、極力冷静に各キャラの言動を追っていきます。
アニメは映画3作見てますが、アラジンの出自に関しては省きます。
アラジンの言動おさらい
・アグラバーの城下で貧しいながらも自由気ままに生活。「いつの間にか泥棒に」(作中曲より)なっていた。
・「生きるため盗むのさ♪仲良くしよう♪」→「NO!!!」そりゃそうだろ。
・盗んだパンを子供に与える
・パンをうっかり盗んだマブい女(ジャスミン)を(窃盗&逃走で)助けて仲良くなる
・ジャファーから仕事を引き受けランプを入手→絨毯、ジーニーと友達に
・「アリ王子のお通り!」→ジャスミンにうんざりされる
・ジーニーの忠告「本当のことを言え」を撥ね付け再度口説くも失敗→魔法の絨毯の物珍しさに食いついた王女をデートに連れ出し「A Whole New World」
・デート中、王女にかまを掛けられ半分正体がバレる。「本当のことを言って!」にまだシラを切る→なんとかやり過ごしキスして別れて有頂天
・『親友』ジーニーとの最初の約束「自由にする」を反故に。理由は「自分一人じゃ何もできないから」。のび太君かお前は。→失望したジーニー、アブー、絨毯に逆切れ。直後にジャファーに捕まり正体がバレる。
省略して……
・なんとか王宮に戻りジャファーと対峙。「お前なんか所詮2番目じゃないか!」(自力で2番目にもなれなかったお前が言うな)の煽りをかまして勝利→ハッピーエンドへ
何度でも言います、昔からアラジン自体嫌いなわけじゃない。颯爽と現れて「美しい」以外まだよく魅力が分かってない女を結婚相手に選ぶ王子たちよりは好きだった。
だが酷すぎんかこれ。本編の3分の2は嘘ついてる。
魔法の洞窟は「ダイヤの原石」=アラジンと判断したわけですが、「原石」要素として考えられるのって①明らかな弱者(女子供と猿)には優しい②機転とフットワークの軽さ③人たらしの才能くらいしか個人的には見つからない。あとは若くて顔が良い。
ジャスミンとの出会いだって、パン泥棒が若くて綺麗な女じゃなかったら彼は果たして声を掛けたのか。ジャファー扮する禿げた老人だったら?危険を冒してまで助けたのか?
作中も大小さまざまな窮地が訪れるんですが、改めて見直すと基本的に「魔法の洞窟で得た友達」の力で乗り切ってんなこいつ……と。
友情を担保に得た力が全くの自力でないとは言わないけれど、その親友たちの忠告も散々スルーして、魔法と嘘で取り繕い、諸々の過ちに気付くのはジャファーに全て暴かれて極寒の地に飛ばされた後。
「原石」とはよく言ったもんで、磨いて光った結果最後は本当の王子様になれたんですが(今まで自力では磨けなかったからあんな暮らしだったんじゃないかな…)とか意地悪なことを思ってしまう。
ジャファー&イアーゴの言動おさらい
・ジャファーは国務大臣として働きつつ、日々ランプの手がかり探し。黄金のスカラベ(魔法の洞窟まで連れていく虫)→「ダイヤの原石」(抽象的すぎる人材探し)→神秘のブルーダイヤ入手→アラジン発見。イアーゴはひたすらサルタンからまずいクラッカーを食わされる
・変装までして洞窟へアラジンを連れていくが、ランプは入手失敗
・イアーゴ、ジャファーが王になることを提案(超有能)。ジャファーもすぐに賛成→魔術で暗示をかける、が、「じゃがお前は年じゃろう?」で正気に戻るサルタン→「アリ王子のお通り!」
・パレードを王宮にだけは入れまいと頑張ったのに二人して大扉に潰されるし、イアーゴはまたサルタンon絨毯に追っかけまわされるしで碌な目に遭わない
・即座にアリ王子の正体を見抜く(有能)。信用できないと国王に上申するも全く取り合ってもらえない→魔術でどうにかしようとするもアラジンに杖を折られて失敗、逃走
・城内の隠し部屋に潜む。イアーゴは「あぁもうおしまいだ!」と喚きながら一緒に逃げる気満々(寝床にツーショット写真隠し持ってて最高)。やはり鍵はランプということで、相棒に指示するジャファー
・完璧な声真似でランプを奪取するイアーゴ。自分で「100点どころか120点だ(ジャファーの声)」喋って意気揚々と戻る。ジャファーの反撃が始まる!
・以下省略
イアーゴが「毎度毎度カビだらけのクラッカーなんぞ食わせやがって、あの風船親父が」「俺たちゃこの先一生あの風船親父とじゃじゃ馬娘におべっか使って生きていくんだぜ!もうやってらんないよ!」と捲し立てるシーンがありますが本当に、心から、そうだね‼‼としか言いようがない。鳥って本当にストレスで毛が抜けるんだよね。
あのまま働き続けてもキャリアは頭打ちで、しかも(王女に蛇蝎のごとく嫌われたので)結婚=サルタン引退と同時に首が危なくなるのも分かっていた。ここまで頑張ってきてそりゃあないよな!国盗り、反逆、やるしかないよな!
初老?の男が王女に結婚を迫る辺りで嫌悪感を抱く人もいるかと思いますが、ジャファーってあんまりジャスミンを性的対象?には見てなかったのではないかな。少なくとも最初は。
王女と結婚して国王に!なんて普通に考えれば一番スマートなのに思いつかなかったし……「お前のような美しい砂漠の花は強い男と一緒にいるのが」云々とは喋っているので、せいぜい装飾品とか褒賞扱いというか。良くも悪くも。
最後に魔人化するまでは本当に彼らの関係は良好で、イアーゴが怒ればジャファーが諫め、ジャファーが怒ればイアーゴが打開策を提案し、二人で高らかに笑いあうという……まあランプの中でも仲良く喧嘩してたんですけど、ああ本当に、アラジンさえいなきゃなあ!!!
サルタンは本当に人の話を聞け
細かい行動のおさらいなぞしませんよ。
婿探しか、遊んでるか、催眠入ってるか、プンプンしてるか。以上。
国務大臣の進言?もちろん聞かない聞かない、堅いこと言うなよ「ワシの人を見る目は確か」だよ!
ビジュアルと仕草で誤魔化されてるけど普通に暗君です。
大臣を心から信頼してた割に、アラジンが杖を折った瞬間「裏切り者めが!衛兵衛兵!!」だし。ジャファーほんと報われない。
何より、何より
いきなり大パレードかまして乗り込んできた成金王子(所在地不明)のこと一切疑わず娘の結婚相手にしようとするサルタン控えめに言ってもヤバすぎるし国盗り待ったなしでしょいいカモだよほんと……
※アニメ視聴直後のツイート
ジャファー逃走直後にサルタンは結婚を即OKし、すぐ結婚式だ国王即位だとはしゃぎます。
長年信頼してた部下を切るのも、娘が愛した男に全て与えようとするのも一瞬。危うすぎる。
余談1
じゃじゃ馬娘に対して「母親はあんなんではなかった」ってぼやいてましたね。この男に従順に従うだけの女がいるのかよ……と思いました(まあ王様だしね)。
余談2
初期ディズニーアニメの「父親」って権力があって、満ち足りていて、それ故悪気なく傲慢で、親しくない身内(ヴィラン)に不遇を、かわいい我が子に理想を押し付け……ってパターンが目立つ気がします。
ヘラクレスとかライオンキングとかリトルマーメイドとか。どこかで書きたいな。
まとめ
――国盗り物語「アラジン」
自力で道を切り拓いたのは誰か
国王の件で逸れたので戻すよ!
アラジンの願いは、
「王子様にしてくれ」
「命を助けろ(忖度)」
「ジーニーを自由に」
しつこいようですが、大体の窮地 はジーニー&絨毯に救われている。
対してジャファーの願いは、
「この国の支配者にせよ」
「世界で一番強い魔法使いにせよ」
「世界最強の魔人にせよ」。
全て、これまで積み上げ続けても得られなかった立場や力を手に入れることに使っている。
失敗はしたけれども、「自力で進んできた」のは主人公アラジンでなく、悪役(ヴィラン)であるジャファーではなかっただろうか。
「王様にしろ」「支配者にせよ」、二人の最初の願いは同じものですが、そこに至るまでの道のりは全く違う。
「本当の俺はこんなんじゃない。もっとビッグになる」とかほざいてるその日暮らしのコソ泥(若くて顔が良い)と、上司から「お前もう年だろ?(だから娘はやらん)」って煽られるくらいの年齢まで働き続けた男は全然違うよ。
ジャファーは王族からアグラバーを奪おうと長年奮闘するも、アラジンの登場によってこれまでの積み重ねを完全にぶち壊されて敗北、(自分が願ったとはいえ)ランプの魔人なんていう取り返しのつかない姿になって退場した。
貧しい泥棒暮らしから冒険を経て友情と愛と富を手に入れたアラジンですが、黒いランプの中から見れば、盗んだ国の宮殿で我が物顔に振る舞う「襤褸をまとったこそ泥」にしか見えないだろうな。
完全なるひいき目ですが……私は自分の持てる能力や頭脳を駆使して這い上がっていく狡猾な男がとても好きで、ヴィランズが好きです。
読んでいただきありがとうございました!