【未知に揺らぐ感情を肯定する】 本荘早紀 (旧 小林さき) インタビュー
本荘早紀 (旧 小林さき) 個展「いま かくしたもの みせて」を、2024年12月25日(水) – 2025年1月12日(日)の期間にピカレスクギャラリーで開催いたします。
今回は、本荘早紀 (旧 小林さき)さんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。
自己紹介をお願いします
大阪在住、二児の母です。
絵本を描いたり、育児マンガを描いたりしていました。
現在は作家として、幼少期の喜びや恐怖心を、ぬいぐるみなどをモチーフに表現しています。陶土で形をつくり、アクリル絵の具、布、ビーズを使って表現しています。
制作中は、日常にある身の回りの色が、突然響き合って見えるので、その瞬間が好きです。
現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。
世界観と呼べるかはわかりませんが、最近の作品は、「大人は経験し、学び、大人として振る舞えるようになった子ども」だと感じたことがきっかけになっていると思います。
子どもが怖がることはいつしか大人は怖がらなくなったり、また逆にずっと怖いままだったりすることがあるなぁ。と子育てをしながら感じたこと。その上で、人間の感情について考え始めたことだと思います。
現在使用している素材で作品を作る理由を教えてください。
陶土はイメージ通りの形をつくりやすいです。自由に曲線も作れますし、乾いてきたら木材のように削ったりして形を整えることもできます。そうやってコンセプトに合わせて支持体の形から表現に加えられるのが楽しいです。またビーズや布は、その陶の質感と競争し、引き立たせあってくれるので、独特な表現ができると思っています。
普段、何からインスピレーションを受けていますか?
新しく知る、全てのことです!
とても恥ずかしい話ですが、私は子供の頃全く勉強していませんでした。
でも学校は大好きだったので、毎日楽しく通ってました。
授業開始のチャイムが鳴ると、私は席につき、「今日は何にについて考えようかな」と思って過ごしていました。要するに授業は全く聞いていなかったわけなんです。
高校も美術科に進学したので、絵を描くことが中心の生活でした。
ですので最近、歴史や物理を学ぶことで今までとは違った見方で世界を認識し、たくさんのインスピレーションを受けています。
影響を受けたアーティストや、作品はありますか?
たくさんあります。ありすぎて絞るのが難しいですが…。
まず、井上直久さんの「イバラード博物誌」。これで、日常のものの見方が変わりました。 この衝撃は、今も私の作品のテーマになっていると思います。 他にも、ドゥシャン・カーライは色彩面でとても影響を受けています。長井朋子さんの世界観もとても好きで、かなり影響を受けています。
これからどんな作品をつくりたいですか?
インスタレーションが好きなので、空間ごと作れたらいいなという野望はあります!
10年ほど前、絵本の原画をギャラリーの壁面に散りばめて、物語のカケラを浴びてもらうような空間を作りました。その時は絵本がテーマでしたが、今度はテーマを新たにしてまた作りたいです。
また、作品単体では、本の装画に使っていただきたい野望があります!
本はただの紙の束なのに、そこに人間の感情や知識、あらゆるものが詰まっています。そんな世界を構成するひとつになれる作品を作りたいです。
ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?
帰り道
お友達のお家での出来事を考えながら、少しずつ現実に戻っていく帰り道を描きました。帰り道には、楽しい世界が終わってしまった物悲しさや不安と同時に、お家まで導いてくれる美しい世界の匂いがありました。あの時間は、ただ距離を移動しているだけではあるものの、異空間のトンネルを通り抜けるような感覚がありました。
よるの中-だれにも言えない-
誰かからの言葉、何かの出来事で今まで見てきた世界が一気に崩れ落ちるようなことがあった時、心がゆらゆら揺れてしまい、不安で孤独になります。そんな時は自分で自分を守って欲しい。そんな安全で安心な場所を描きたいと思いました。周りの植物のようなフレームは、心の壁のようなイメージです。他の作品にはフレームとの間にすき間はありませんが、このシリーズはすき間を作っています。安心できる場所で、ゆっくりして欲しいという願いがあります。
大人は、不安や恐怖を「たいしたことない」と思えるようです。これは今までの経験で、「たいしたことない」と学習することができたから。けれど経験の少ない子どもは、目の前の不安や恐怖な出来事の一つ一つが、命を落とす危険があるものなのかどうかわかりません。ですので、生きるために、より一層不安や恐怖を感じるようにできているそうです。そのことを知って、不安や恐怖をそのまま肯定する意味で描きました。
ゆっくりとける-これで本当のさよなら-
今回の展覧会は6シーンに分けて描いています。「ゆっくりおいで」では、子どもが自分自身を、世界を認識する場面を描いています。「たからものみつけた」では、この世界は何て楽しくて、美しいんだろう!という喜びを表現しています。「こわいゆめ」では、不安や恐怖を、「よるの中」ではそんな恐怖心を肯定し、守る場面です。「とおくとおく」では、そんな様々な経験をそれぞれのキャラクターが突破するシリーズです。前に進んでも、逃げても、戻ってもいいということを描いています。そして最後の「ゆっくりとける」では、そんな幼い感情を受け入れて溶け合って、ゆっくり前に進もう。という意味を込めています。そんなラストシーンのこの作品は、ぬいぐるみが元の世界へ帰っていくところです。その子自身に戻っていくイメージです。子どもの頃の、ぬいぐるみは自分自身であり、親友であり、母親であり…。その別々に分かれていた感情が、成長とともにひとつになってコントロールできるようになった、少しの辛さや嬉しさを描きたいと思いました。
お客様、ご来場予定の皆様に向けてメッセージをお願いいたします!
私が作品を鑑賞する時、ガツン!と衝撃を受けるような作品もあれば、「何か気になる」「好きかも」と、少しだけ引っかかるという作品もあります。そこにはきっと私の感情を動かす何かがあるんだと思います。その何かは私にしかわかりませんし、もしかしたら私も一生わからないままなのかもしれません。どちらにしても、「なぜ好きなんだろう」と考える時間は好きです。
今回の展覧会で私の作品が、みなさまに衝撃を与えられたり、または、「何か気になる」を探る贅沢な時間を共有できたら嬉しいです。ぜひ、原画をご覧いただけたらと思います。
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本荘早紀 (旧 小林さき)さん、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。皆さまはどのエピソードが心に残りましたか?
ピカレスクスタッフは「不安や恐怖をそのまま肯定する」という言葉が印象に残りました。不安や恐怖の感情は、大人になるにつれ表に出す機会が減ってゆく傾向にあるように感じます。
ですが、それらを表出することを作品を通じて肯定されることで、今まで蓋
をしていた様々な自身の想いや感覚が蘇ってくるような気がしませんか。
「何が怖いか」「何に対して不安を感じているか」を明確化し向き合うこともまた、"大人のふりをする"上での重要なメソッドなのかも知れません。
本荘早紀 (旧 小林さき)さんの展示作品実物を一堂に鑑賞できる貴重な機会です。皆さまのお越しを、お待ちしております。
本荘早紀 (旧 小林さき) 個展「いま かくしたもの みせて」
〈会期〉2024年12月25日(水) – 2025年1月12日(日)
〈詳細〉https://picaresquejpn.com/saki_honjyo_exhibition_2024/
〈本荘早紀 (旧 小林さき) 公式SNS〉
X(旧Twitter) https://twitter.com/kobasaki20
Instagram https://www.instagram.com/ko.ba.sa.ki/
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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561
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■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/
■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/
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