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~様々な方向からの『幸』を制作~もちや幸こうぼうさんの作品紹介
今回は、もちや幸工房さんからいただいたコンセプトテキストとともに、作品展「追想と改新」出展作品をご紹介いたします。
作品にぎゅっと込められたもちや幸こうぼうさんの想いやこだわりを、ぜひじっくりとお楽しみください!
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宝珠幸狐・幸守狐
宝珠幸狐・幸守狐は、活動初期に制作した作品です。
その当時は細かなキャプションを考えるよりも、誰かの幸せを呼んでくれるような、誰かの幸せを守ってくれるような、そんな立体作品を私なりに狐で表現した作品でした。
私の制作する狐が宝珠や鍵を持っているのは、伏見稲荷大社の“玉鍵信仰”というところからインスピレーションを受けています。
「玉」は稲荷大神の霊徳の象徴を表し、「鍵」はその霊徳を身に付けようとする願望とされており、「玉と鍵」の二つは、陰と陽、天と地といった万物が二つの働きによって生み育っていく理を表しているそうです。
まずそこから、狐に宝珠や鍵を持たせる造形が生まれました。
「宝珠」には、様々な意味がありますが"縁起の良いものを寄せ集めた玉"とも言われていて、そんな縁起の良い珠を持つ狐は、家に沢山の幸を呼び込んでくれるだろうと考え、狐の造形に組み込んでいます。
「鍵」には、計り知れないほど優れた徳(霊徳)を身に着けようとする願望という意味が含まれていますが、私の中では、良い幸を呼び込み、それを守ろうとする象徴と嚙み砕いて表現するために造形に組み込みました。
幸守狐が鍵を持って構えているのは、そのまま幸を守る姿を狐で表現した形になります。
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ワレガエリ(ヨル)・ワレガエリ(ナク)
良いことが続きすぎて少しずつ不幸に傾いている人を見つけては、少しばかり毒を与えて我に返らせ、導く狐。
腹と背に浮かぶ花は毒をもつキョウチクトウ。キョウチクトウの花言葉は『注意・危険・用心』です。
ワレガエリを見た時には、自身の行いを振り返ると吉に進む。
初心忘れるべからず、という言葉を作品として表現しました。
今回、(ヨル)と(ナク)という2種を制作しました。
(ヨル)は、「縁る」という言葉と「依る」という言葉を表したものです。
危機を知らせる笛を手に、近寄ってくる様をポージングで表現しています。
(ナク)は、「鳴く」という言葉から。
笛を口に当て、今すぐにでも「用心して!」という警笛を鳴らす仕草を表現しました。
ワレガエリは、ヨルもナクも、「あの時ああすればよかった」と後悔しないよう、今一度気を引き締めて歩めば、先の道がどんな形であれ、後悔することは少なくなるだろう。
そしてそのことが『幸』に繋がるだろうと考えた作品です。
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トドマレリ
時として、長い時の淀みが人の心に不注意や緩みを生む時があります。
この狐は、緩んだ心を持つ人を見つけては歩みの足を掴み、動きを引き留めて、心が緩んでいることを示す狐です。
トドマレリの腹に浮かんだ花は「注意を怠るな」という花言葉の百日草(ヒャクニチソウ)。
トドマレリを見た時には、何か大切なことを忘れていないか、今一度思い起こすと失いかけていたものを取り戻せる。という作品です。
ワレガエリの続編として制作した作品でした。
お迎えしてくださった方が、『後悔先に立たず』『腹水盆に返らず』等、こういった想いをすることが無いよう願って制作した作品です。
失敗は成長に繋がったりすることも沢山ありますから、絶対に失敗してはいけないということはありません。
ただ、『二度と戻ることができない』事は、時として起こったりします。それも、気がちょっと緩んでしまった時などに。
そういった時に、一度立ち止まって考えてみようと思い起こすことができれば『幸』に繋がると、私は思っています。
トドマレリが手に持っている巻物は、人の記憶がつまった巻物です。
一度記憶を思い起こして、そのまま先に進むのか考えて欲しいと反対側の手で「ちょっと待って」という仕草を取っています。
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ケトバグイ
この作品は2021年2月に制作した作品です。ちょうどCOVID-19が大きく広まり始め、様々な推測や荒々しい言葉がSNS上に増えたあたりです。
人の出す言葉は、「言霊(言魂)」とも言われ、霊的な力を持つとも考えられています。
ついつい周りに足を引っ張られて、ネガティブになってしまったり、負の言葉を言ってしまったり、聞いてしまったりすることも多い毎日ですが、この作品をお迎えしてくださった方が言葉のマイナスエネルギーを溜め込みすぎないよう願い、制作した作品です。
ケトバグイの漢字名は、『言葉喰』。
「言葉」をケトバという読みにしたのは、実際に奈良時代の東国で話されていた上代日本語で、「言葉」を「ケトバ」という読みで話していたところから使いました。
そこから「喰」を付けて、そのまま言葉を食べるという意味で名付けています。
「言葉」は自分自身にとっても、他人にとっても『大切なモノ』になる時が沢山あります。
人から受け取る言葉も、自分から発する言葉も、素敵な「言の葉」であるよう、ケトバグイの手には金色の葉を持たせています。
良い言の葉は、良い事が起こる縁も生んでくれるものです。
良き縁が広まり、葉が成長して広まっていくように、『幸』が広まってくれたらと考えております。
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琴月狐(きんげっこ)
この狐が持つ鈴は、『水琴鈴』という鈴です。
日本庭園の装飾の手法で、手水鉢の近くに穴を掘って地下に空洞を作り、そこに水滴を落下させると、地下でその音が反響する仕組みの『水琴窟』というものがあります。
この音が清らかで美しいということで、江戸時代の庭園を主に重宝されてきました。
水琴窟の音にはリラックス効果があるといわれ、仕事やストレスなどで乱れた心に落ち着きを取り戻し、癒やしにつながるとされています。
水琴鈴は、この水琴窟の音を再現できるように作られた鈴です。
この水琴鈴のリラックス効果と、私が使っている水琴鈴が満月のお月様のような見た目だったため、水琴鈴と月をかけまして、癒しの狐として制作した作品です。
背中の光背は、月の光を表現したものです。
手に持っている水琴鈴は、琴月狐を振るとシャランと鳴ります。
ちょっぴり疲れてしまった時、「この鈴を鳴らして、少し耳を澄ませてみて?」と水琴鈴を差し出す仕草をとっている姿を制作しました。
是非、狐の造形と合わせて水琴鈴の癒しの音を聞いてもらえたらと思っております。
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水狐芭蕉(すいこばしょう)
「美しい思い出」という花言葉を持つ『水芭蕉』をモチーフに制作した作品です。
水辺に美しく咲く水芭蕉を、狐と融合させて制作いたしました。
個人的に水芭蕉は、とても神秘的な花だと感じています。
童謡の『夏の思い出』という曲でも出てくるように、昔見た懐かしい美しい景色を思い起こしてくれるような水芭蕉。
水と狐と水芭蕉で、お迎えしてくださった皆様の良き思い出が、この作品を通していつまでも思い返せるような作品になって欲しいと願って制作した作品でした。
水の上に浮かぶ狐の花、是非楽しんでいただけたらと思います。
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さちよひ猫・さちよひ狐・さちよひ狸・さちよひ狐
さちよひシリーズの作品は、現実に馴染む非現実の癒しの立体作品をテーマにしております。
片手に瓢箪を持ってお酒を飲む仕草をしていますが、近くにいる人と共に、何かを語らいながら楽しい時間を過ごせるよう願いを込めた作品です。
「今日もお疲れ様!」と言ってくれるような子達を制作してみました。
座りの体制なので、その個体に合う高さの段差があれば、付属の台以外のところにも座らせることが可能です。
是非、お好きな場所に座らせて楽しんでいただけたら幸いです。
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福音狸・福音天狐
こちらは『さちよひシリーズ』の派生作品です。
お酒を飲む仕草のさちよひシリーズと共に同じ空間で癒しの音楽を奏でる子たちが居たら、更にその場が幸多い空間になるかなと考え、制作いたしました。
人が和笛を吹く姿を狐や狸で表現しています。
自分自身の好きな音楽を聴きながら、共に楽しんでもらえたら嬉しい作品です。
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幸舞狐
夏祭りの季節になってきました。
私は日本のお祭りがとても大好きです。
香ばしく、美味しそうな香りを放つ屋台、賑やかな人並、提灯が沢山並ぶ先に組まれた大きな台と太鼓。
そしてそれを囲んで踊る人たち。
お腹や体に響く太鼓の音と、ちょっと恥ずかしいけれど、前の人を何とか真似て踊った盆踊り。
周りには笑顔があふれ、どこか懐かしい盆踊りの曲が流れる場。
幸舞狐は、そんな踊りの場を思い起こせるような狐を表現しました。
片手に提灯。もう片手に団扇。
ちょっぴりひねった上半身の立ち姿は、狐だったらこういった舞を披露してくれるかなと、私の想像で造形しています。
どんなときにも、心を躍らせてくれる踊りを披露してくれる狐が、皆様の心に『幸』を呼びますように。
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幸狐・幸狼
もちや幸こうぼうの最もオーソドックスな形の作品です。
胸をはって前を向き、両手を縁起が良いとされる末広がりの八の字に広げて立っている作品です。
胸をはって前に進む勇気と、その勇気が沢山の幸を広げてくれるという意味を込めて制作しました。
この作品は今後も様々な動物で制作していきたいと考えています。
並べて楽しむのも良し、好きな一匹を選んで楽しむのも良しな作品です。
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宗旦狐
京都の『モノノケ市』というイベントに出展する時に制作した作品です。
京都にゆかりのある狐のお話しを探したところ、京都市上京区の相国寺に伝わる化け狐『宗旦狐』にいきつきました。
千利休の孫、千宗旦に化けて茶席に現れ、見事な点前を披露した宗旦狐。
宗旦狐は宗旦の姿に化けて、相国寺の雲水たちと一緒に托鉢をして回ったとか、近くのお寺の和尚さんと碁を打ったとか、門前のお店が破産しかけたときは神通力で助けたなど、宗旦狐は人々と関わりを持つ中で、次第に慕われるようになっていった話が伝わっています。
宗旦狐が亡くなった後、相国寺の雲水たちが供養のために建てた祠が、宗旦稲荷として、今も残っています。
そんな宗旦狐を、是非とも立体作品で表現したいと思い、制作しました。
正座姿で、お茶のお椀を持ち、静かにお茶の時間を楽しむ姿は、宗旦狐だからこそできる姿だと考えています。
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もちや幸こうぼう 作品展「追想と改新」は、いよいよ今週の日曜日で終焉いたします。
『幸』に溢れた素敵な作品たちが一堂に会するこの機会をぜひ、お見逃しなく!
【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561
■各展示の詳細
HP「お知らせ」よりご覧ください!
https://picaresquejpn.com/category/information/
■開催予定の展示は
HP「【随時更新】展示スケジュール」よりご覧ください!
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/
もちや幸こうぼう 作品展「追想と改新」
〈会期〉
2023年8月2日(水) 11:00 – 8月13日(日) 18:00
〈詳細〉
https://picaresquejpn.com/mochiyasachikobo_exhibition_2023/
もちや幸こうぼう 公式SNS
Instagram https://www.instagram.com/motiyasatikoubou/
Twitter https://twitter.com/SATIKOUBOU
HP https://satikoubou777.wixsite.com/satikoubou