【月刊pic-step10月号】アートプロデューサー色先生インタビュー
こんにちは、月刊pic-step編集部です!
今回は、アートプロデューサー色先生のインタビューをお届けいたします。
イラストレーターのSakura先生もご参加された「夏色ハーモニー2023」を主催されたそのご縁を通じて、今回のインタビューが実現しました。
アートプロデューサー色(しき)
ヴィジュアル系バンドのボーカリストとして音楽活動を重ねた後、
詩人に転向。詩人としてはイラストレーターや写真家、造形化など、
ジャンルの壁を越えた様々なアーティストとのコラボレーションを実現。
その経験をもとに、アーティスト同士を繋ぐ展示会を考案したのが、
アートプロデューサーという現在の活動の始まりだったのだとか。
アートプロデューサー色先生は現在、絵画を中心に展示会を主催しているキュレーターです。展示会の場ではアーティストとアーティストを繋げる架け橋として活躍され、2023年現在も新たなアーティストを発掘すべく日本全国にアンテナを張り巡らせているのだそうです。
動画サイトYouTubeで企画された番組では、司会としても活動しています。
今後も大きな目標を掲げて活動を続けていきたいというアートプロデューサー色先生から、展示会プロデュースの裏側や、キュレーションを始めたきっかけなどを伺うことができました。イベントに参加する側からはなかなか知ることができない、企画する立場から見た風景をご紹介いたします。
少年漫画が大好きだった
―改めましてよろしくお願いいたします。まずはアートプロデューサー色先生ご自身について伺っていきたいと思います。現在はアートプロデューサーとして活動なさっているわけですが、幼少期はどんなお子様だったんですか?
アートプロデューサー色先生: 小さい頃はいわゆる子供らしい子供だったと思います。家の中でゲームをするような子供ではなかったですね。友達がいれば外で遊ぶのが当たり前でした。
―活発なお子様だったんですね。子供時代に影響を受けたもの、好きだったものなどを教えてください。
アートプロデューサー色先生:父がバンドマンだったんですよ。それで、本当に小さい頃から洋楽はいつも聞いていました。親の影響を抜いて自分自身が好きだったものということだと、少年漫画ですね。週刊少年ジャンプの黄金期ってありますよね。僕の少年時代がまさにこの黄金期だったんです。それもあって漫画にハマっていました。
―そうだったんですね。特にお好きだったのはどの作品ですか?
アートプロデューサー色先生:僕が一番好きだったのは「BOY」という漫画です。週刊少年ジャンプ以外では「クレヨンしんちゃん」が好きでした。主人公が自分と同じくらいの年齢というところに親近感があったんですよ。昔は本当に大好きで、単行本まで購入していたほどです。
―いまだに人気があるすごい作品ですよね。昔は漫画がお好きだったとのことですが、最近お好きなもの、ハマっているものはありますか?
アートプロデューサー色先生:観葉植物にハマっています。コロナ禍が始まるか始まらないかという頃だったんですけど、たまたま出かけて行ったお店で「いいな」と思ったのがきっかけです。もともとインテリアには興味があって、室内空間をよりよく演出する方法を模索していた時に、観葉植物に出会って、ハマったという感じです。観葉植物が成長していく過程とか、少し変形したような自然な姿が好きなんです。
ベランダにオリーブの木みたいな、大きなものが多少あるんですけど、コレクションのメインは小さいサイズの観葉植物です。今日も観葉植物の調子を確認して、お手入れをしてきました。
―観葉植物がお好きな気持ちが伝わってきます。素敵ですね。教えていただきありがとうございます。
ヴィジュアル系バンドに影響を受けて音楽活動へ
―次に、経歴について伺います。バンド活動をされていたんですよね。どんなバンドだったんですか?
アートプロデューサー色先生:ヴィジュアル系バンドです。音楽性としてはメタル、ハードコア系統の、にぎやかな感じでした。見た目も気合を入れていたので、髪の毛を金髪にして逆立ててみたり、横髪を刈り上げてモヒカンみたいにしたり、色々と挑戦していました。
―私が中学生の頃にはGLAY やL'Arc〜en〜Cielが流行っていたので、よく聞いていたのですが、アートプロデューサー色先生がお好きだったのはどのバンドですか?
アートプロデューサー色先生:僕はLUNA SEAが好きでしたね。LUNA SEAの後にPENICILLIN、SHAZNA、MALICE MIZERといったビジュアル系バンドのビッグネームが出てきて、ものすごくハマったんです。
―私もLUNA SEAが大好きです。もしかして同世代なのかな、と感じたのですが……
アートプロデューサー色先生:同い年です。なんだかうれしいですね。同級生ってなかなか出会うことがないので。
―ありがとうございます。バンド時代は本名で活動されていたんですか?
アートプロデューサー色先生:「色」という、今も使っている名前をステージネームとして使っていました。僕の担当はボーカルだったんですが、表現者として声をパレットのように多彩に使っていきたいなと思ったんですよ。どの色と指定するような言葉で印象付けたくなかったので、色彩の総称である「色」を名前にしました。
バンドに所属して音楽活動に身を投じていた色先生は、現在は「アートプロデューサー色」というお名前でキュレーションをなさっています。
どのようにしてバンドマンからアートプロデューサーになったのでしょうか?
詩人として活動する中でやりたいことが見えてきた
―色先生は現在アートプロデューサーという肩書で活動なさっているわけですが、バント活動からイベントを企画するようになるまでに何かきっかけがあったのでしょうか?
アートプロデューサー色先生:バンドをやめて1人でフリーランスの活動することになったんです。バンド以外の形で自分が表現できるものを考えた時、一番フィットしたのが「詩」だったので、詩人になろうと決めました。
ただ、文字情報だけだと展示会の演出は難しいかなと……。それで、イラストレーターの方とか、写真家の方とか、造形化の方とか、いろんなアーティストの方と作品同士でコラボレーションするというアイデアが生まれました。
コラボレーションで直接アーティストの方々とつながるようになって、プライベートのお話や、業界のお話を聞くようになったんです。今の日本のアート業界がどんな状態なのかとか、どんな問題があるのかとか、すごく考えさせられる経験でした。
―色んなジャンルのアーティストの方から生の声を聞いて、世界が広がったという感じなんですね。私も興味があります。特に印象に残ったのはどんなお話ですか?
アートプロデューサー色先生:例えば展示会で言うと、参加費が高いという方が多かったですね。参加費が高いのにあまり人との繋がりができないとか、それほど結果を得られないとか、そういった悩みを抱えるアーティストが多いなと感じました。詩人だった時はまだまだイベントの主催は考えていなかったんですけど、現在のプロデュース業の根本に、あの頃の「気づき」があると思っています。詩人としてのコラボレーションもやり尽くして、次のキャリアをどうやって積み重ねていくかというのを考えるようになった時期があったんですが、その時に、それまでに聞いてきたアーティストさんの悩みを思い出して、そうだ、悩みの逆を行く展示会を主催したらいいんじゃないか?と……。自分の中でアイデアの欠片がぴたっとハマって、形になった感じです。
―そこから展示会を企画して、主催するようになったんですね。
アートプロデューサー色先生:この思い付きが最初のきっかけでした。展示会の場が、アーティストさんも、自分も、新しい繋がりを見つける場になるといいなと思ったんです。そこから最初の展示会に向けて動き出して、ギャラリーに出向いてプレゼンをした時に、初めて「アートプロデューサー」という職業を知ったんですよ。アート業界を盛り上げたい、こういう展示会をしたいというプレゼンをしたら、ギャラリー側の方がアートプロデューサーにならないかと声をかけてくださったんです。今から10年前くらいのことです。僕自身が「詩人」だったところに、「アート」と「プロデューサー」という言葉がバチンとハマってめちゃくちゃ面白いと思ったんです。それで「アートプロデューサー色」と名乗って、活動するようになりました。
―すごいですね。ものすごく行動力がある方なのかなという印象を受けました。
アートプロデューサー色先生:ありがとうございます。バンド時代は5人で活動していたんですけど、その中で僕はよくアイディアを出す方だったんですよ。でも、メンバーが5人いると、5人全員が納得しないと動けないですよね。1人になった時に、自分で思いついて、動くまでがすごくスムーズで驚きました。思いついたらすぐ実行できる、やりたいことがすぐできるというのがとにかく面白かったんです。アートプロデューサーとしてのホームページはすぐに作りましたし、ギャラリーと出会ってからの契約もすぐでした。3月に「展示会をやろう」と決めて、4月にはギャラリーを契約して、6月ぐらいにはもう展示会の内容が決まっていましたね。いままでやれなかったことが出来る、テンポよくどんどん動いていけるっていうのが楽しくて、今でも続いている感じです。
―なるほど、行動していった結果、今のアートプロデューサー色先生があるという感じなんですね。ちなみに、新規のイベントを開催する場合、通常はどれくらい時間がかかるものなのでしょうか?
アートプロデューサー色先生:だいたい1年くらいです。企画するだけなら1人ですぐに出来ますが、ギャラリーの方にまずアイデアをお話しして、企画として練り上げていくんですね。アイデアから展示会の具体的な形に出来上がったものを持って、アーティストさんに声をかけていくことになります。その後、作家さんに制作していただく時間を用意しなければならないですし、作品情報を揃えてイベントとしてPRする時間も必要です。企画を3か月で形にするとして、イベントの2か月か3か月前には作品の情報が揃っていてほしいわけです。会期から逆算していくと、作家さんが作品の構想と制作に充てられる時間は9か月しかないんですよ。そう考えると、1年間というのが最低限の期間だと思います。
―イベントの開催には外から見えない部分で、すごい準備が必要なんですね。大変なお仕事なんだなと改めて思いました。アートプロデューサー色先生は毎年、たくさんの展示会を手掛けていらっしゃるイメージです。複数の企画を同時進行で進めていくのは大変なのではないでしょうか?
アートプロデューサー色先生:イベントは立ち上げが大変なんです。回数を重ねるうちにパッケージ化していって、最初の練り込みの作業がなくなっていくので、負担という面ではそれほどでもないですよ。同じタイトルで、作家さんを入れ替えて、毎年開催しているのもあります。月に1回、開催しているイベントもあって、もうルーティン化していますね。
―イベントに参加していただくアーティストの方や、ギャラリーはどのようにして選定されるのでしょうか。
アートプロデューサー色先生:色んなパターンがあるので一概に言えないんですが、比較的多いのは、最初に会場を決めるパターンです。会場を先に決めて、会場の中のイメージを決めます。会場の中のここにこういう絵が欲しい、こういう立体が欲しいというコンセプトを決めて、そこから全国の作家さんを探して、アプローチしていく感じです。作家さんを探す方法としてはSNSを使うこともありますが、個展や合同展で見かけた作品を覚えておいて、後から声をかけさせていただくことや、アーティストの方の横の繋がりで出会った作家さんに声をかけさせていただくことが多いです。
「夏色ハーモニー2023」
―今回「夏色ハーモニー2023」を拝見しました。こちらの展示会では、作品の配置から音楽まで、すべてアートプロデューサー色先生が決めて、直接指示された形ですか?
アートプロデューサー色先生:夏色ハーモニーという展示会については、音楽はすべてギャラリーの方にお任せしていますが、それ以外はすべて僕がプロデュースしています。会場のレイアウトも、設営も、直接手掛けています。
―本当にすごいと思います。今回の「夏色ハーモニー2023」は東京のギャラリー自由が丘での開催でした。アートプロデューサー色先生が手掛けるイベントは東京が多いように感じました。何か理由があるのでしょうか?
アートプロデューサー色先生:日本全国で活動している作家さんたちに話を聞くと、東京に集まりたいという方が多いんです。地方の方も参加しやすいイベントにしたいですから、これからも基本は東京での活動になると思います。
ただ、地方の会場さんからお声がけいただいたとしたら、条件さえ合えばどんどんイベントを企画していきたいですね。
アートプロデューサーとしての大きな目標に向かって
―興味深いお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございます。今後についてお伺いします。アートプロデューサーとしての目標をお聞かせください。
アートプロデューサー色先生:実は大きな夢があります。色んなジャンルのアーティストさんを集めて、1つのコミュニティみたいなものを作れたらいいなと思っています。
ジャンルにとらわれず、それこそ写真家の方、彫刻家の方、伝統工芸の方、洋裁の方、音楽家の方が、実際に生活できて、アトリエとして使える場所が出来たら面白いと思うんです。アーティスト村みたいな感じですね。
現実的なところで言うと、オンライン上でのコミュニティから始めて、
ジャンルレスのアートイベントを開催できたら嬉しいです。フェスのようなイメージで、大きな規模で開催したいです。
―素敵な目標だと思います。実際に開催されたら、ぜひ参加したいです。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
アートプロデューサー色先生:こちらこそ、ありがとうございました。展示会は僕1人でやっているわけではなくて、アーティストさんや、ギャラリーの方とか、いろんな人が力を合わせて作り上げるものです。色んな人が関わるからこそ、予測できないことがよく起こって、固定観念を覆されるのが面白いと感じています。
「夏色ハーモニー」という展示会は毎年、東京のギャラリー自由が丘さんで開催させていただいているイベントです。絵画展を観覧したことがない方にもぜひ足をお運びいただいて、僕の感じている「面白さ」に触れていただけたら幸いです。
今回のインタビューでは、展示会の開催に至る裏側のお話しを伺うことができました。
実際にどれくらい時間をかけて企画を立ち上げるのか、そして、どのように参加アーティストを選定しているのか、プロデュースする側ならではの内容だったのではないでしょうか。
皆様のご参考にしていただければ幸いです。
アートプロデューサー色先生、この度は本当にありがとうございました。
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よろしくお願いします。
次回もお楽しみに!
インタビュー:林 真一
記事:葉月 によ
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