見出し画像

【月刊pic-step7月号】〈前編〉古弥月先生 インタビュー

こんにちは!月刊pic-step編集部です。
今回はフリーイラストレーター古弥月(こみづき)先生へのインタビューを公開いたします。
今回はスペシャルインタビューとして、前編・後編に分けて記事を公開いたしますので、ぜひお楽しみに!


古弥月(komizuki)
ゲームイラスト会社でのイラストレーターを経て、2020年よりフリーランスに。書籍の表紙・挿絵、キャラクターデザイン、ゲームイラスト、イベント用イラストやグッズ等幅広く制作している。



イラストが仕事になりフリーランスになるまで

背景・キャラクターの両方を描く「1枚絵」を得意とする古弥月先生。今回、先生の作品の中から編集部目線で気になったイラストを何点かピックアップさせていただき、イラストのポイントやこだわり、エピソード等を深掘りしていきます。

ーよろしくお願いします。事前に募集した、ファンの方からの質問をベースにインタビューしていきますね。
最初の質問はこちらです。

古弥月(こみづき)っていうペンネームの由来を教えてください。

古弥月先生:本名がベースなんですけど、もじってもじって、原型がないくらい変形させて考えたペンネームです。

ーインパクトがある綺麗なお名前ですよね。

古弥月先生:何かうまい具合にハマった感じです(笑)。だいぶ悩みましたけどね。

ー次の質問です。

いつ頃から絵を描き始めましたか?

古弥月先生:幼稚園生とか小学生の時から、遊びの一つとして絵を描いていました。アニメや漫画などで好きな作品などがあると、その絵を描くっていうのが習慣だったんです。
みんなが「何とかごっこ」をやるのと同じ感覚で、自然と絵を描いていましたね。

ーその好きなアニメや漫画とかで、影響を受けた作品などありますか?ファンからもこのような質問が来ています。

好きなアニメやゲームや漫画はありますか? また影響を受けた作品やクリエイターさんはいらっしゃいますか?

古弥月先生:好きな作品は、『ボクらの太陽』っていう、ゲームボーイアドバンスの頃に出たゲームです。
影響を受けたクリエイターさんは、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の監督をやられている、村瀬修功さんというアニメーターの方です。

村瀬さんはもともと作画出身の方で、『新機動戦記ガンダムW』のキャラクターデザインもされていたんですよ。その後、監督になられましたが、作画出身ということもあり、監督自ら原画も描いてるタイプの方なんです。
その方の作品自体もすごい好きですし、絵の描き方も影響を受けました。

私の絵を見ても「どこに影響を受けてるんだ?」っていうくらい、絵柄的には分からない感じですけどね(笑)。でも、影響を受けたクリエイターさんとしては村瀬修功さんですね。

ー村瀬さんに影響を受け、絵の道に進んでいくわけですね。どうやって今のようなフリーランスで活動するようになったんですか?

古弥月先生:そうですね。ずっと学生時代も変わらず絵を描き続けて、大学を卒業した後に、ゲームのイラストを描く会社に入ったんですよ。なので、個人でのお仕事より先に、会社員として会社の中で絵を描いていました。
その会社員時代に、某Vtuberの立ち絵を描いてほしいという依頼を個人的にいただいて。それが私個人としての最初の案件で、それを機に、徐々に個人の仕事をいただけるようになったことがきっかけで、フリーランスの道に進みました。
フリーランスになってからは年月が浅いので、まだまだ駆け出しなんです。

イラスト紹介①:Soda break

Soda break

―こちらのイラストはどういうコンセプトがあって描かれたものですか?

古弥月先生:このイラストはまず、「おしゃれな絵を描きたい」っていうシンプルなコンセプトがあって描いた絵です。
なぜおしゃれな絵を描きたかったかというと、もっと性別や年齢問わず、誰からも好かれるイラストを描きたいという思いがあって。

そのためには、ただ綺麗な女の子の絵を描いてるだけでは男性向けになってしまって、もっと女性が好きな要素を入れないと女性からの支持を得られないと思ったんです。
女性から見ても男性から見ても、このキャラクターが「素敵だな」って思われるような、おしゃれな女の子の絵を描きたいって思って描いたのは、私の初めての試みでもあって、このイラストがそのスタートラインになりました。

―なるほど。戦略的に考えられたイラストだったんですね!具体的には、どのようなところを女性向けに意識されたのでしょうか?

古弥月先生:そうですね。具体的には、意外と男性の作家さんがあまりフォーカスしない、ネイルとかアクセサリーとかの細かい装飾品などに注目してこだわっています。

―イラストの中のクリームソーダも可愛いしおいしそうで、そのあたりも女性向けを意識されてるのかと思いました。

古弥月先生:実は、このイラストの本当の着想としてはクリームソーダっていうところから始めたんですよね。緑色をテーマにした絵を描いてみたくて。そこからクリームソーダを連想して、それに合わせておしゃれな女の子を合体させて構図を考えました。
おしゃれなかっこいい女の子と、かわいいクリームソーダを組み合わせるっていうところに着地したっていうのが制作の経緯になりますね。

―確かに、このイラストの女性は一見オトナでかっこいい雰囲気ですけど、クリームソーダを飲んでるのはギャップがあって魅力的ですよね。

古弥月先生:最初クリームソーダと可愛い女の子の組み合わせにしようと思ったんですけど、自分的にうまくいかなくて。
それでかっこいい系の女の子にしたら、「こっちの方がいいな」と思ったので、路線を変更したという経緯です。


女性の審美眼をかなり研究されて描かれたことがわかるイラストですね。「ただ可愛い女の子を描くと男性向けになってしまう」、というのは本当にそう思います。
クリームソーダに合わせてアクセサリーやネイルを緑色で統一したり、さくらんぼとストローの赤色で差し色にしたりされていて、細かいところにまでこだわりを感じます。

イラスト紹介②:待ち合わせ

待ち合わせ

―背景のタッチがすごく柔らかくて、優しい気持ちになるようなイラストですね。日常にあるような雰囲気も素敵です。

古弥月先生:この作品は、自分が出かけた時に、たまたまレトロな喫茶店に出会えて、「こんな雰囲気の空間を描きたい」って思ったことから描いた絵です。
私、いくつか着想のパターンがあるんですけど、自分が実際に行った場所で「これを描きたい」ってなるパターンが多いんです。このイラストもそういう着想で描きました。実在の喫茶店をベースに、私なりにオリジナルで描いたので、全然違うデザインになってるんですけど。

―じゃあ基本的には、実際に見たものや景色などをインプットとして蓄積されているんですか?

古弥月先生:もちろんこのイラストの時のように、出かけた先でたまたまピンと来たものに出会うパターンはあるんですけど、逆もあって。
絵を描く時に、「今の自分にはこの要素が必要だな」って思ったら、そこを重点に思いっきりリサーチして、インプットすることもあります。

あとは、他のイラストレーターさんの絵を参考としてインプットすることも多いですし、それこそ映画などの映像作品やアニメなどもなるべく見て、吸収するようにしています。

ーなるほど。普段から意識してインプットされているんですね!
イラストの話に戻りますが、先ほど紹介した「Soda break」のイラストとはまた違ったお色味で、全然印象が違うイラストですよね。

古弥月先生:実はこのイラストは、色味において、ちょうど私の絵のアップデートをしたいって思ったタイミングで初めて挑戦した絵なんですよ。
これ以前の絵は、結構コントラストが強めな絵が多かったんです。でも自分自身は、淡い色や彩度が低い色が好きなんですよ。
なので、「何でこんなにコントラストがバリバリ効いた絵になっちゃってるんだろう」っていうのはずっと思っていて。それを克服したくて、頑張って描き方を自分なりに変えて、改良した最初の絵ですね。
これ以前の絵と比べると、色味が違うと思います。見てくれた人は分かるか分からないんですけどね。 例えば影色が分かりやすいんですが、以前の絵は影色が強くて暗い色を使っていて、新しい絵(「待ち合わせ」や「Soda break」等)は青が強くて明るめな色です。 その辺を比べていただけると分かるかもしれません。


先ほどの「Soda break」のイラストでは緑を中心とした鮮やかな色使いが特徴的だったのに対し、こちらの「待ち合わせ」のイラストでは、全体のコントラストを落とし彩度が抑えられ、温かみのある色使いに仕上がっていますよね。色表現だけでもここまで幅が広がるとは、本当にイラストって奥深い世界ですよね。

イラスト紹介③:雪世界へ一緒に

雪世界へ一緒に

―先ほどの「待ち合わせ」のイラストと比べ、タッチが柔らかいですよね。

古弥月先生:これは「待ち合わせ」のイラストより前の絵なので、アップデート前の絵ですね。

―これも実際にこういう場所があったんですか?

古弥月先生:そうです。これも元々、絵の資料探しで行った公園がモチーフです。
でも実際は、雪は降ってなかったんです。私が見た時の公園は、このイラストと全然違う見え方だったんですけど、この絵を描く時の季節が雪だったので、写真にストックしてあった公園を見て、もう自分で雪を降らせて改造しよう!ということで、雪を降らせました。

―頭の中では、すでに「こういうイラストにしよう」というイメージができてたんですね。

古弥月先生:そうですね。「もしこの公園に雪が降ってたらどうだろう?」と想像して、ちょうどよく階段があったので、そこにキャラを配置して描いてみよう、というところまで脳内で出来てました。
また、根本として私は、綺麗な色使いの絵を描きたいという気持ちで絵を描いているので、この絵自体も例えば雪景色だけど、温かみを表現したくて、暖色系の光を使って描いています。
実際にはこんな風には写らない色を使っているんですけど、それもイラストならではの表現なので、絵の色は本当に工夫しています。

―このイラストのリアリティさは、どういう技術で再現されているんだろう?と気になっていたので、今のお話で色味を工夫されていたからだと分かりました。

古弥月先生:厳密には、先ほどのお話のとおりこのイラストに暖色系の色を使うのはリアルではないんですけど、コントラストの差や遠近感をうまく使って、空気感やリアリティを表現しています。
なので現実にはあり得ないような色の使い方のはずなんですけど、リアリティを感じるための空気感の作り方の技術(空気遠近法のような、距離ごとに色の強さを変える工夫など)に、 「どういう色を使ったら綺麗に見えるか」という二次元ならではの要素をプラスして、合わせ技で作ってます。
先ほど紹介いただいた「待ち合わせ」の絵と比べると黒が強いので、コントラストは強いんですけどね。
だからこそ、さらに柔らかい色を使って、色使いの面白味を増やしたいって思って描いたのが、さっきの「待ち合わせ」の絵ですね。



古弥月先生は色々試行錯誤されてイラストをアップデートされていますが、ここまでタッチや色使いをガラッと変えて印象を変えることができるのが、なかなかできないことだと思います。

特にある程度自分のスタイルが決まってからだと、どうしても殻を破るのが難しいと思いますが、古弥月先生は自分で自分の可能性を決め付けず、あえて自らスタイルを壊しにいくことで、さらに高みを目指されています。本当に貴重なお話でしたね!

さて、前編はいかがでしたか?
後編では、この前編でのトークをもっと掘り下げて、イラストの深〜いお話をしていきます。古弥月先生のイラストに対する姿勢、熱意、考え方が伝わる回になること間違いなしです!

後編に続きます!


この内容が「いいな」と思ったら、ぜひ「スキ」していただけると嬉しいです!
また、Twitter等でシェアしていただけると、イラストレーターさんの励みになります。
よろしくお願いします。
次回もお楽しみに!


インタビュー: 大森 康政/萩谷 勇也
記事:橘 爽香

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?