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【月刊pic-step10月号】きさらぎゆり先生インタビュー

こんにちは、月刊pic-step編集部です!
今回は、イラストレーターのきさらぎゆり先生のインタビューをお届けいたします。



きさらぎゆり
Vtuberのキャラクターデザインの他、ライトノベルの装画・挿絵を手掛ける人気のフリーイラストレーター。X(Twitter)のフォロワー数は15万人以上を誇り、現在でもSNSやコミックマーケットを通して自身のオリジナル作品を公開している。


きさらぎゆり先生はみずみずしい女の子の描写を得意としていらっしゃいます。これまでに手掛けたキャラクターデザインの代表作は「転生王女と天才令嬢の魔法革命」「勇者パーティを追い出された器用貧乏」など。
先生はどのようにしてイラストを構想なさるのでしょうか?また、いつごろからイラストレーターを志し、どのようにして職業として確立なさったのでしょうか?


祖母に買ってもらった少女漫画に感動

―本日はよろしくお願いいたします。きさらぎゆり先生は現在フリーイラストレーターとして活躍なさっていますが、いつごろからイラストレーターを志したのでしょうか?

きさらぎゆり先生:絵を描こと自体は物心つく前からしていました。今みたいな女の子のイラストを描き始めたのは小学校3年生くらいの頃です。祖母に買ってもらった少女漫画雑誌に感動して、自分でも描きたいと思うようになったんです。

―具体的な作品は覚えていらっしゃいますか?
 
きさらぎゆり先生:りぼん(集英社)という雑誌です。この雑誌は絵を描きたい女の子に優しくて、雑誌やホームページに描き方のアドバイスが掲載されていたんです。それを見ながら描くようになったのが、最初のターニングポイントだったと思います。このころは基本的にすべてアナログでした。
ただ、家にもともとパソコンがあって、それにフォトショップ(Adobe Photoshop)が入っていたんですね。なので、アナログで描いたイラストを取り込んで、マウスで色を入れていました。タブレットも親に買ってもらったんですけど、中学生の頃はあまり活用していませんでした。
 
―大学ではイラストについて専門的に学ばれたんですか?
 
きさらぎゆり先生:中高生の頃は国家公務員に憧れていたこともあり、一般の大学に進学しました。大学時代には漫画研究会に入って、周りの人から沢山のアドバイスや指導をいただいて、イラストの基礎知識を学ばせていただきました。
 
―本格的にイラストレーターとしてお仕事を始められたきっかけなどありましたら教えてください。
 
きさらぎゆり先生:学生時代からイラストのご依頼は結構いただいていたんです。お仕事をしたい人と頼みたい人をつなげるサイトがあって、そこに登録してご依頼をいただいていました。お小遣い稼ぎという感じだったんですが、就職活動の時期になって、イラストと関係ない道で就職するのか、ゲーム業界とかデータ業界に進んで就職するのか、それともこのままフリーランスでやっていくのかっていう、選択を迫られて……。そこからイラストレーターとして生きていこうと決意した感じです。
 
―そうだったんですね。ちなみに先生がイラストを描く時に、気を付けていらっしゃることはありますか?
 
きさらぎゆり先生:作品によって変わってくるので、一言でいうには難しいですけど、ひとつ言えるのは、「良いイラストになれ」「かわいくなれ」と思いながら描いているということです。そのためにどうしたらいいのか、イラストと向き合う時はいつも考えています。
 

きさらぎゆり先生は「良いイラストになれ」「かわいくなれ」と思いながらイラストを描くとお話ししてくださいましたが、具体的にはどのように
イラストの制作を進めていかれるのでしょうか?
ここからは、ファンの方から寄せられたご質問に絡めて、少し踏み込んだ内容を伺っていきます。

イラスト1:「仕返しするからこっちに来てっ」

「仕返しするからこっちに来てっ」

―最初にご紹介する作品は「仕返しするからこっちに来てっ」というイラストです。とても素敵なシチュエーションですね。この作品はどのようにして発想なさったのでしょうか?
 
きさらぎゆり先生:これは「こういうイラストにしたい」というイメージが先にあって、描いた作品です。もともとこの女の子をを主人公にした同人誌を1冊発行しておりまして、続編にあたる新刊を作りたいなと思ったんです。ちょうど夏のコミックマーケットのタイミングだったので、夏っぽいイメージを出すための装置として、学校のプールで水をかけあいながら遊んでいる、そういう画面構成にしてみました。
 
―夏らしい青春の1ページという感じで素敵ですね。こちらの美しいイラストで一番こだわったポイント、気に入っているポイントを教えてください。
 
きさらぎゆり先生:一番こだわったのは、いわゆる「濡れ透け」です。夏っぽいイラストの最大の魅力は、服が濡れてうっすらと肌が透けている、そういった感じだと思うんです。このイラストは、どうしたら「濡れ透け」できるのかを前提に考えたような気がします。
このキャラクターについてはこれが2作目になりまして、この作品で私のオリジナルキャラクターとして定着したと思っています。

―なるほど、ちなみに先生は絵を描く際に、どういった気持ちで取り組んでいるのでしょうか?
 
きさらぎゆり先生:そうですね、気持ちの浮き沈みはどうしてもありますよね。でも、メンタルがイラストのクオリティに影響しないように心がけています。絵を描くこと自体、私にとっては当たり前なんです。もはや生活の一部という感覚です。なので、特別に気持ちを作ったり、身構えて構想を練ったりということはないです。本当に好きなことがお仕事になってるという感じで……、だからこそ自然体でいられるのかもしれません。
 

―素晴らしい考え方ですね!先生がイラストを描くにあたって一番こだわっているポイントはどこでしょうか?

きさらぎゆり先生:作品ごとにといった感じです。どのイラストも「これが描きたいから描きました」というのがあるんですよ。ただ、それを言葉にすることはあまりないですね。どの作品もそれぞれこだわって描いています。お仕事ですとどうしても締め切りがあるので、締め切りが許す中で、一番気持ちが乗った状態になった時に、集中して制作するようにしています。

イラスト2:「本当に、何も覚えてないの…?」

「本当に、何も覚えてないの…?」

―次の作品は「本当に、何も覚えてないの…?」というイラストです。女の子が2人描かれていますが、こちらはどのような作品なのか伺っていきたいと思います。
 
きさらぎゆり先生:こちらはキャラクターの設定をしっかり作りこんだうえで構成を練ったイラストです。女の子2人は双子で、前世が恋人同士だったという設定です。

ーとても魅力的な設定ですね。

きさらぎゆり先生:イメージとしては大正時代のあたりで、当時は双子って不吉な存在だって言われていたみたいなんです。歴史的に、女性同士で心中するのが流行った時期があったという話を聞いて、そこから発想を膨らませました。

ー実際にそういう時代があったのですね、初めて知りました。

きさらぎゆり先生:そうなんです。この女の子たちは前世も双子で、心中してしまった間柄なんです。
それで、生まれ変わってもまた双子だったけど、1人は記憶があって、1人は記憶がない……そうして「本当に、何も覚えてないの…?」というこのシーンが出来上がりました。

ーそういうことだったのですね!表情から、もどかしい気持ちが伝わってきます。

きさらぎゆり先生:双子が不吉っていう迷信は、前世で心中した恋人たちが罪を償うために生まれてきた、だから不吉なんだというお話なんです。前世、心中、贖罪、双子は不吉とされていたっていうイメージ、このあたりを結び付けて描いています。
 
―お話を伺っているとこの作品のイメージが変わってきたように思います。ですが、あまり暗い印象ではなくて、どちらかというと青春のような雰囲気を感じますね。
 
きさらぎゆり先生:そうですね。魅力的なイラストにしたい、かわいく描きたいというのが前提にあるので、青春のきらめきを交えて表現した感じです。
 
―これまでイラストレーターとして活動されてきた中で、感じた壁や挫折などはありましたか? 描いていて難しいと思う点や、どういう点で悩まれるのかも気になります!
 
きさらぎゆり先生:もっとうまく描きたいとか、そう思うことはありますけれども、大きな挫折は経験ないですね。ありがたいことに、周りの方がすごく良くして、周りの方に助けられて、ここまでやってこれたという感じです。
 
―周りの方との関係性が素敵ですね。これまで関わったお仕事で、ご自身の考え方や絵そのものに変化をもたらしたような作品はありましたか?

きさらぎゆり先生:作品ひとつを絞ってピックアップするのは難しいです。これまでの経験で言うと、新しいジャンルのイラストを描かせていただくときは、意識するポイントが変わったりして、面白いなと思うことはありますね。例えば、Vtuberのキャラクターデザインってなったら、上半身のデザインに重要そうなものを置くとか、考え方そのものが少しずつ違うんです。
 
―そうなんですね。先生はラノベやVTuberのデザインのお仕事が目を引くのですが、キャラクターデザインを手掛ける際に意識しているポイントや、描いていて楽しいと思うポイントはありますか?
 
きさらぎゆり先生:先ほどと被っちゃうんですけど、Vtuberのキャラクターデザインだったらバストアップに注目が集まるようにデザインするとか、新しいジャンルのイラストを手掛けることによって新しい気付きがあるのが、楽しいポイントのひとつだと思っています。

イラスト3:「巫女神楽」

「巫女神楽」

―最後の作品です。「巫女神楽」というイラストですが、こちらの作品を描かれたきっかけを教えてください。
 
きさらぎゆり先生:こちらは最近発行した同人誌に収録したイラストで、SNSにも載せていないのであまり知られていないと思うんですけど、狙い通りに描けたなと思っている作品です。私は昔から「巫女さん」という存在に憧れがありまして、いつか描きたいとずっと思っていたんです。この作品でやっと納得できるイラストにできました。
 
―とても細かく描き込まれていますね。透き通るような鮮やかな色使いがとても魅力的です。実際に何か資料を見ながら描かれたのでしょうか。
 
きさらぎゆり先生:神々しさが出るように、上の方から光が降ってきて、
下から見上げるような構図にしています。実際に色んな資料を見て、参考にしながら描きました。色使いについては、まずは直感的に色を置いて行って、そこから調整していくという作業で、イメージがより鮮やかに伝わるようにしています。頭のなかに具体的な理想像があるんです。それにどれだけ近付けられるか、そういう感じかもしれません。
 
―なるほど、話が変わるのですが、先生の中で締め切りを守るテクニックなどはありますか?
 
きさらぎゆり先生:厳密に1日1日の工程を決めるっていう感じではないんですけど、まず大まかに制作スケジュールを決めて、どの工程に何日かけて、最終的にこのあたりで完成する、という感じで、締め切りまでのスケジュールを管理しています。
 
―そういった中でも、何かこれという締め切りを守るコツなどありましたら伺いたいです。
 
きさらぎゆり先生:そうですね……締め切りが近付いてるなら、もう頑張るしかないですね。そこはもうテクニックとは別の次元になってきちゃいますね。そもそも、締め切りに迫られないように、ゆとりを持って作業していくことが大事なんだと思います。私もゆとりを持ちたいと思っているところなので。まあ、あんまり実践できていないんですけども。スケジュールについては私自身、まだ試行錯誤している最中です。
 
―ありがとうございます。ちなみに先生がイラストを描く時に一番楽しい瞬間を教えてください!

きさらぎゆり先生:最初からイラストのイメージが降ってきて、そこに近づけていくような作り方をする時もあれば、他の作家さんの作品からインスピレーションを受けて、発想を膨らませていく時もあるんですけども、ともかく最初はラフというものを描くんです。次にざっくりと色を乗せて、カラーラフというものを作るんです。このカラーラフがまとまった瞬間が一番楽しいですね。
 

今後の活動について


―現在でもコミックマーケットなどのイベントに参加していらっしゃいますが、今後の予定として、個展を開催されるなどの展望はあるのでしょうか?
 
きさらぎゆり先生:個展は、今すぐにやりたいということじゃないですけど、遠い将来そういう機会があったらいいですね。比較的近いところにある目標としては、ポップカルチャーの第一線で活躍するような、そういう風に活動できるクリエイターになりたいと思っています。名だたる絵師の方々と描きおろし作品を並べて、見劣りしない……むしろその中から私を選んでもらえるような、そんなイラストレーターになりたいです。
 
―最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
 
きさらぎゆり先生:ファンの皆様、いつも私のイラストを見てくださって、本当にありがとうございます。今回のインタビューについても、沢山のお便りを送ってくださって、ありがとうございます。周りの方が支えてくださっていると感じることが多く、ファンの方あってこその今だと思っています。感謝しかありません。これからの活動を楽しみにしていただけたら嬉しいです。
 

今回のインタビューでは、きさらぎゆり先生のイラストとの向き合い方を伺うことができました。イラスト制作は身構えて取り組むような特別なことではなく、もはや日常だとおっしゃるきさらぎゆり先生は、普段の生活や、旅行などの最中にも、イラストに活かせる風景があれば保存しておくように心がけていらっしゃるのだとか。参考資料を撮影するためにわざわざ出かけていくこともあるのだそうです。
きさらぎゆり先生のイラストが多くのファンの心を掴んで離さないのは、心の底からイラストを描くことが好きで、いつでもイラストについて考えている、そういう姿勢が作品のベースにあるからなのかもしれませんね。
おだやかな語り口調のきさらぎゆり先生でしたが、その中に秘めたイラストへの熱意はしっかりと伝わってきました。
ポップカルチャーの第一線を見据えて活動されているきさらぎゆり先生のこれからを楽しみにしています!
きさらぎゆり先生、この度は本当にありがとうございました。


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次回もお楽しみに!


インタビュー/記事:林 真一
記事:葉月 によ


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