【月刊pic-step9月号】potg先生 インタビュー
こんにちは、月刊pic-step編集部です!今回は、イラストレーターのpotg先生に対するインタビューをお届けいたします。先生の作品における独自のこだわりや、ファンの皆様から寄せられた質問に対するお答えを紹介していきます。
potg(ぴおてぐ)
花や自然の美しい風景を得意とするフリーのイラストレーター。ライトノベルの表紙や挿絵を手がけ、日本の実力派作家150名が特集された『ILLUSTRATION 2023』にも掲載される。
X(Twitter)フォロワー数は21万人を超える、人気クリエイター。
potg(ぴおてぐ)先生の描かれる花や自然の美しい作品は、ノスタルジックな雰囲気が漂い、多くのファンから支持を受けています。先生は、いつ頃からイラストレーターとしての道を志されたのでしょうか。
イラストレーターを志したのは小学5年生
ーいつ頃からイラストレーターとしての道を志されたのでしょうか。
potg先生:元々絵を描くことが好きで、小学5年生の頃にはイラストレーターを志していました。家にパソコンがあって、デジタルイラストにも早くから触れていたんです。当時はパソコンのマウスを使って絵を描いていましたね(笑)。
ーそれは凄いですね(笑)。当時から一貫してデジタルでイラストを描いていたのですか?
potg先生:デジタルだけでなく、水彩画も好きで描いていましたが、修正が難しいという理由で、修正が簡単に出来る油絵に移行しました。大学は美大に進学し、油絵を専攻して本格的に学びました。
ーアナログとデジタル、両方の技法を学んできたんですね!美大の受験は大変ではなかったですか?
potg先生:大変でしたが、周りに絵が好きな人も多く、環境が良かったですね。周りの友人たちも美大への進学を希望していたので、私もその流れに乗った感じです。美大の受験、特に実技の勉強はとても大変でしたが、その時に培った技術は、今の制作活動に間違いなく役立っています。
アナログとデジタルの両方を学んだpotg先生。ここから先は先生の作品についてお話を伺っていきます。
イラスト1:「白波ちゃん」
ー波の妖精のような、見た目もネーミングも可愛らしい作品ですが、どのようなきっかけから生まれたのでしょうか?
potg先生:友達から海の絵を描く事をおすすめされ描いてみた作品です。白い波が髪や服に変化するアイデアが面白いだろうと考え、実際に描いてみたら誕生したんです。奥行きを表現したくて、低い視点から見上げるような構図を考えました。
アイデアを提案されたご友人に、感謝の気持ちを伝えたいですね。ここからは、ファンの方々から頂いたご質問を交えながら、お話を伺っていきます。
potg先生:自分では速いと感じることはあまりありませんが、平均的には6時間から、最長で12時間くらいですかね。普段絵を描くのは、夕方から深夜1時ごろにかけて行っているんですけど、この作品を描いた時は、いつも通り絵を1枚描き終わった時、気分が良かったので「さらにもう一枚描くか!」となりまして…。その勢いで深夜に約3時間でこの作品を完成させました。
ー3時間…すごいですね。早すぎます。効率的な作業をするためのヒントやテクニックはありますか?
potg先生:テクニックというか、私の場合、迷う時間が少ないんだと思います。まず、ラフの段階でイメージを固めて、そのまま進んでいく方法を取っています。途中で試行錯誤する時間も非常に短く、問題を解決するまでの時間が早いという感じです。人の手の動きには限界があるため、悩む時間を短縮する努力を心がけています。
ーそういうことですか!その方法は簡単には真似できないかもしれませんね。
potg先生:私自身、時間をかけることがあまり得意ではないので、効率的に作業を進めるための工夫をしています。最近ではレイヤー分けを行わずに作業しています。以前は必要なレイヤーを探すのに時間がかかっていたので、今はレイヤーの代わりに選択範囲を使って、塗りたい部分を選んで塗る方法を採用しています。工夫を積み重ねることで、作業のスピードが向上していると思います。でもこの方法は不便な面もあるので、あまりおすすめは出来ません。
potg先生:普段私が使用している加工法をご紹介しますね。いくつかありますが、ノイズ加工や光の粒のエフェクトを撒いたり、レイヤーモードで差の絶対値を使うのがおすすめです。
具体的に説明すると、カラーパレットの右上から少し内側に位置する、彩度と明度が控えめでかつ力強い色を選び、それを塗りつぶしレイヤーとして使用します。その後、レイヤーの透明度を約10%程度に減少させることで、絵の雰囲気を残しつつ、重みのある雰囲気も演出できます。特に夕方や夜の風景に取り入れると効果的です。
ーこの加工によって、先生の作品に近づくことができるのですね。
potg先生:後はペイントソフトの『CLIP STUDIO PAINT EX』の有料プラグインの、輪郭抽出という機能を使って、水彩境界(※)の枠線の濃い箇所を抽出し、元の画像に重ね合わせると、境界線がクッキリと際立ち、印象的で見応えのある表現になります。
もし気になった場合には『CLIP STUDIO PAINT』の有料プラグイン一覧ページを見て、興味深そうなものがあればぜひ試してみてください。
※水彩境界:CLIP STUDIO PAINTの「境界効果」機能の1つで、描画部分の周りに水彩がにじんだような効果を付けられる。
ーとても参考になります。
potg先生:そして、加工方法の中でも非常に重要なのが、グラデーションマップの活用です。グラデーションマップは、色の明暗に応じて自動的に色を調整してくれる機能です。私はこのグラデーションマップをカラーモードというレイヤーモードで適用することを強くおすすめします。この方法は、元の絵の雰囲気やバランスを保ちつつ、軽くレイヤーを描くだけで色味を微妙に変えて、こなれた印象を手軽に演出できるので、おすすめです。
グラデーションマップのおすすめのカラーモードについてはこちらで詳しく解説をしているのでご覧ください。
イラスト2:「遠くを見ている」
potg先生:この作品もノイズ加工、水彩境界、シャープ加工、そして差の絶対値を活用しています。
ーなるほど、加工によって、先生独特の雰囲気が漂う作品に仕上がるのですね。続いて、先生の作品に描かれる、風景についての質問が寄せられています。
potg先生:元になっているのは、地元の自宅近くに広がる自然豊かなエリアです。自然に囲まれた環境で育ったこともあり、小学生のころから風景画が好きで、よく描いていました。そこには山道があり、普段は犬の散歩や山へよく遊びに行っていました。特に懐かしいのは、森の中にあるトンネルで、とても思い出に残っています。
ー先生は本当に自然がお好きなのですね。
potg先生:人混みが苦手で、自然が落ち着くのでとても好きです。大学選びも、都心ではなく、地元より地方の大学に進学しました。その大学は県庁所在地で、建物も多く立ち並んでいるのですが、すぐ近くに自然が広がっており、地元とは異なる雰囲気を楽しむことができました。人々の生活がちっぽけに見えるくらい壮大な山並みが毎日見れて幸せでした。
ーいいですね。風景の写真を撮影されることもありますか?
potg先生:実は風景の撮影をするためにデジカメを購入しましたが、写真だと色調が実際に見た感じとは異なるので、全然使っていません。記憶の中で景色を見た印象を、頑張って覚えるようにしています。
ー凄い記憶力ですね。ちなみに、こちらの作品はどのようにアイデアを思いついたのですか?
potg先生:長い髪の毛を描きたかったんです。風になびく長い髪のイメージを思い浮かべ、その発想からイメージを膨らませて形にしていきました。もともと長い髪を描くことに苦手意識があったのですが、イラストレーターのREDUMさんの作品からインスピレーションを得て、美しい髪の流れを真似て、長い髪を描く技術を習得しました。
REDUMさんの作品は、構図や色彩、陰影の表現が非常に素晴らしく、特に陰影の付け方がかっこよくて、ドラマティックで好きです。私にとって最も影響を受けたイラストレーターさんです。
ーそうなんですね。衣装についても何か影響を受けているのでしょうか?
potg先生:私の作品では、白いワンピースをまとった女の子と自然の風景を描くことが多いですが、これは『エコール』という海外の実写映画の影響を受けています。特に緑と白の色の組み合わせが際立つことに魅了され、影響を受けています。
ー普段からよく映画をご覧になりますか?
potg先生:普段映画鑑賞はあまりしないのですが、Twitterでおすすめされて観てみたところ、それがとても魅力的で、ハマってしまいました。
イラスト3:「庭」
ー素敵な庭の雰囲気が伝わる作品ですが、制作するきっかけはありましたか?
potg先生:主に自然を描くことが多いのですが、人工物を描く練習をしたくて描き始めたのがきっかけです。資料を参考にしながら描き進めていきました。のんびりと日光に照らされて庭で過ごすイメージが気に入っています。
ー時間帯なども意識を向けて描かれていますか?
potg先生:そうですね、私は昼下がりから夕方の時間帯の雰囲気が好きで、作品でも頻繁に表現しています。この作品はレイヤー分けを行わずに描くスタイルに切り替えたばかりで、まだ慣れていないため、最初は苦戦しましたが、完成したときには達成感を感じました。
ー背景を描く際に役立つテクニックやポイントはありますか?ちょうど背景についての質問をいただいています。
potg先生:ありがとうございます。そうですね、人物を先に描いてから背景を描くのは、とても難しいので、最初は背景だけを毎日練習することをおすすめします。後は、人物の隣に小さなモチーフを描いてみることから始めると、スムーズに取り組むことができると思います。
ーなるほど、着色についてはどの様にされていますか?
potg先生:背景と人物の色調が異なると、人物が浮いてしまうため、背景から色を取り入れて人物の色調に合わせるようにしています。
今後について
ー将来の方針や目指すところはありますか?
potg先生:シンプルな塗り方を保ちつつも、より情報量を増やし絵のクオリティーを高め、お仕事の価値を高めていくことを目標にしています。現在は背景のお仕事を多く頂いていますが、今後はキャラクターデザインや、人物をメインで描くお仕事も頂けるよう、表現の幅を広げるために努力したいと思っています。
ーファンの皆様へ、メッセージをお願いします。
potg先生:いつも私のイラストをご覧いただき、本当にありがとうございます。今回、たくさんの質問をいただき、非常に嬉しく思っています。現在は幸運なことに、沢山のファンの方々がいらっしゃるので、以前のように一人一人との交流に時間を割くことが難しくなっており、ファンの方々を幻滅させていないか心配しています。これからも、できる限り交流を大切にしていきたいと思っていますのでご安心いただければと思います。
また、将来に向けても、表現を向上させる努力を続けながら、様々な仕事に取り組んでいく予定です。これからも私の活動を見守っていただけると、大きな励みになります。
変わらぬ応援をどうぞよろしくお願いいたします。
今回のインタビューで、potg先生がファンの質問に丁寧にお答えされ、また交流に時間を割くことが難しい現状に対して心配される姿勢から、普段からファンを大切にされていることが、ひしひしと感じられました。加工のテクニックについても詳しくご説明いただきましたので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
現状に満足せず、向上心を持ち続けて活動されているpotg先生の、今後の更なるご活躍を楽しみにしています。
potg先生、この度は本当にありがとうございました。
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よろしくお願いします。
次回もお楽しみに!
インタビュー/記事:林 真一
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