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スベり高等学校

(本文410文字)

 朝の全校集会で、私は壇上に上がろうとして躓いた。マイクにオデコをぶつけたが、いつものお約束、生徒は冷ややかにスルーする。

「パァー、うわっ、出たっ!」
 いつもの光景に、ここでも生徒達は無反応。
「皆の衆、おはようでござる」
 すべった。順調な出だしだ。

「今日の運動会、皆んなに守って欲しいことが一つだけある。一度しか言わないぞ。怪我のないように、水分をしっかり摂り、全力で取り組むこと。もう一度言う。明日の運動会の為に、今日は授業中もしっかり寝ること。家に帰るまでが遠足だ。って言うとる場合か!」
 よし、ドンスベリだ。
「わぉ! 話は以上」

 地滑りで出来た地に育つサルスベリの群生林、その横に建つスベり高等学校。生徒全員、すべり止めとして受験し、やむを得ず入学することになっただけ。需要のない高校だ。

 初代校長にスベリ芸の達人が招聘されたが、その所為か、スベリ過ぎてすべり止めにもならず、すぐに廃校が決まった。閉店ガラガラだ。


(了)


#毎週ショートショートnote 参加させていただきます。
お題は【スベり高等学校】、作品タイトルもそのまま使わせていただきました。


今週こそ無理!と思いましたけど、何とか絞りだしました。
スベると言えばあの人しか思いつかなくて、色んな方も「すべり芸」には触れていたのでどうしようか迷いましたけど、他に書ける気がしないのでアップしました。