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#昔書いたやつ
【ショートショート】亡き妻のためのパヴァーヌ#毎週ショートショートnote
夜がまだ明けきらぬ時刻。
彼は掘り起こした棺の中で眠っていた最愛の妻を胸に掻き抱く。彼の口からは、銀狼の咆哮にも似た嗚咽が漏れる。
まなじりから流れ落ちた宝珠は、人知れぬ平野に積もる新雪のように白い妻の頬で弾け、薄明かりの下、妻の肌をより一層輝かせていた。
やがて、妻の頬を撫でる一滴の水晶が色褪せた妻の唇に吸い込まれる。温もりを失った妻は顔を上げ、充血した瞳で彼に優しい微笑みを向けた