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デビューアルバム „Duettist“ 発売への裏話

2024年11月6日、私たちにとってデビューアルバムとなる „Duettist“ がFontecより発売となりました!

これまでにも他の方とのジョイントでのCD制作には参加させていただいたことがありますし、10月18日にもAlpha Classicsより”Next Generation Mozart Soloists“(ウィーン放送交響楽団、Howard Griffiths氏とのモーツァルト:2台のピアノのための協奏曲を録音)が発売されたばかりですが、
私たちの演奏がまるまるっと収録されたCDが発売されるのは今回が初めてとなります。

Duettist


発売記念コンサート、もうすぐです!



私たち姉妹はピアノデュオ科で学ぶためにドイツへ渡り、日本への完全帰国後もピアノデュオを中心に演奏活動を行っていて、レパートリーも少しずつ積み重なっているところではありますが…

「ピアノデュオとして演奏しています」とお話ししても、やはり一般的にはまだまだ馴染みがなく、興味も薄い分野なのかなぁ、と感じることも多いですし、ピアノソロと比べると、いわゆる「名曲」と言われる作品の数、そして音源の数は圧倒的に違います。

ですが、それはピアノデュオの奥深い魅力、そして可能性の高さとは何ら関係がなく、幼い頃より親の影響でラベック姉妹の録音を取り憑かれたように聴き、姉妹でピアノデュオとして演奏活動することへの淡い憧れを抱いていた私たちにとって、自分たちの音源でピアノデュオ作品を後世に伝えることは、ひとつの大きな夢でした。


今回の素晴らしい機会を与えてくださったFontecの皆さまをはじめ、このレコーディングの実現から販売に至るまでに関わってくださった全ての皆さまに、心から感謝しております。


ピアノデュオに長年夢中になっている"Duettist"の身として、初めてのCDリリースにあたってどのピアノデュオ作品を録音したいか… 約1年ほどかけてたくさん悩みました。


今回収録したのは、以下の4曲です。
1. ラヴェル:マ・メール・ロワ
2. フォーレ:ドリー組曲 Op.56
3. サン=サーンス:ベートーヴェンの主題による変奏曲 Op.35
4. レーガー:ベートーヴェンの主題による変奏曲とフーガ Op.86

今日は収録作品への想いを述べるところで終わりそうなので… また裏話②,③,...と続けようと思います(笑)


〈今回のプログラミングについて〉

収録作品について熟考する上で、私と妹の中で本当にたくさんの案が出ました!
全くカラーの違うプログラムがいくつか出来て、二人で相談しながら何度も揉めて(笑)、、それらはまた第2弾、第3弾とレコーディングできる機会があればと密かに願っています。

最終的に決まったのは、「ベートーヴェンの主題による〜」を架け橋に、ピアノデュオの名作がフランスからドイツへと流れていくようなプログラムとなりました。
前半2曲が連弾、そして後半2曲が2台ピアノの作品。4曲それぞれに違った種類のきらめきがあり、小品集&変奏曲ということもあって表情と色彩の種類に富んでおり、そのような作品の方が自分たちらしさをより引き出せるんじゃないかな?という思いから決定しました。

さらに、どの作品も私たちにとって思い入れが深く… 私たちの大きすぎる愛が、CDを通して聴いてくださった方に伝わっていたらいいなと思います。次に1曲ずつへの思いを、できるだけ簡潔に語りたいと思います。


〈1. ラヴェル:マ・メール・ロワ〉
この作品は管弦楽版も有名ですが、実はもともとピアノ連弾のための作品です。

まだ私たちが福岡の中高生で、当時は気分転換のひとつとしてピアノデュオに親しんでいた頃にこの作品と出会い、何となく二人で弾いてはその特別な和声感と、シンプルでいて複雑な声部同士の絡み合いに魅了されたのを覚えています。私(彩)はいつもセコンド(ピアノの下の方のパート)を受け持っているのですが、一人で弾いていても眉間に皺が寄ってしまうほど、本当にシンプルなのに何でこんなに音の並びが魅力的なんだろう…と。
5曲それぞれに「親指小僧」「美女と野獣」などのストーリーが題材となっているのも、この作品を楽しめる魅力のひとつですよね。

きちんと向き合ったのはドイツに留学してからですが、特に私たちにとって思い出されるのは、フランスでの合宿中にマ・メール・ロワに取り組んだ時のこと… ドイツ生活ではなかなか味わえないような(🤫)美味しいお食事やお菓子を楽しみ、古城に登り、新鮮な空気の中でこの作品について語り合ったことが、演奏中にふっと蘇ります。


〈2. フォーレ:ドリー組曲 Op.56〉
これはまさしく、私たちがピアノデュオの世界に憧れるきっかけとなった作品と言えると思います。ラベック姉妹が演奏するドリー組曲は父の愛聴版で、私たちは当時小学生だったと思いますが、そのピアノソロでは表現し得ない独特の響き、そしてご姉妹の阿吽の呼吸の虜になりました。

1曲目のマ・メール・ロワが「物語」ならば、この作品に対してはフランスの美術館で6枚の「絵」を見ているような感覚で演奏しています。
また、今回は2台ピアノの作品を録音したことにより、小田原三の丸ホールに置いてある素晴らしいスタインウェイのフルコンを2台ご用意いただいたのですが…
連弾作品をどちらのピアノで収録しようかと試弾していた時に、2台のピアノそれぞれの僅かなキャラクターの違いが、マ・メール・ロワとドリー組曲それぞれのイメージにピッタリと当てはまっていることに気がついて。贅沢にピアノを入れ替えて録音させていただきました。(ご快諾くださったスタッフの皆さまに感謝です…!)ですので、2作品の音色の違いもぜひお楽しみください。

〈3. サン=サーンス:ベートーヴェンの主題による変奏曲 Op.35〉
この作品に出会ったのは、私たちがドイツへ飛んですぐ、まだ家が見つかっていなかった頃に宿泊していたホテルのベッド…。留学後初めてのレッスンを前に、私たちがやりたい曲をリスト化しよう!と意気込み、ピアノデュオ曲を漁っていたところに出会い、ベッドの上でふたりして飛び跳ねたのをよく覚えています。
その時聴いたのはGüher & Süher Pekinel姉妹による録音で、2021年に挑戦したミュンヘンコンクールのセミファイナルで私たちはこの作品を演奏し(当時の演奏は怖くてもう聴きたくありませんが笑)、その時たまたま審査員だったPekinel氏に私たちの演奏を気に入っていただけて、お話しする中で“Go your way“とお言葉をくださったのは今でも私たちにとって大きな宝物です。

2台のピアノがほとんど同じことを真似っこし合いながら変奏していくのは、ピアノデュオ作品の中でも珍しいと思いますし、終盤のフーガでの古典と新しさの融合は特にドラマチックです。

〈4. レーガー:ベートーヴェンの主題による変奏曲とフーガ Op.86〉
これは私たちが一番好きな2台ピアノ作品と言っても過言ではないほど、各所で好きです!と公言しています(笑)
留学するまではオルガン作品くらいしか触れたことのなかったレーガーですが、ドイツへ行って、ドイツ語にまみれた生活をして… それから少しずつレーガーの語法、そしてドイツ人らしい笑いどころが分からない(?)ジョークが含まれた音楽が腑に落ちていったような気がします。

私たちがドイツへ飛んで行った理由のひとつである師匠・Stenzl兄弟の録音を当時合宿に参加していたオクセンハウゼンのベッドの上で聴いたことで(またまた…)運命的な出会いを果たし、先述したミュンヘンコンクールが終わった直後の何とも言えない気持ちのまま楽譜屋さんへ走って、受賞者記念コンサートまでの間に譜読みしていたなぁ、といつも懐かしく思い出します。

ベートーヴェンやブラームスなど、先人たちに対するレーガーの大きなリスペクトが感じられ、ピアノデュオだからこそ成し得る音数の多さと複雑な響きは弾き甲斐があります。それと対比するかのような、この世の全ての汚れから浄化されるような美しさ…  そのギャップを感じて、一人で練習しながら何度も泣きました(笑)
フーガは狂気じみているようにも感じられますが、最後はフーガのテーマとベートーヴェンのテーマが感動的に入り混じり、レーガーの凄まじさに直接触れられる喜びを感じます。



…という、少々長くなりましたが、とにかく私たちの思いが詰まった4曲を素晴らしい環境で録音させていただき心から幸せでしたし、CDを通して自分たちの演奏で心の底から大好きな作品をご紹介できることを、ドキドキしつつも本当に喜ばしいことだと思っております。
CDのご感想、お聴きできたら嬉しいです。

今日はこの辺りで失礼します! ②に続く…💛

by 彩

11/22(金) 18:30〜 @Hakuju Hall
♪CD発売記念コンサート♪
チケットお申し込みはこちら↓
https://teket.jp/11583/39972


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