【PFFアワード2024】セレクション・メンバーおすすめ3作品《♯16宮城 伸》
『これらが全てFantasyだったあの頃。』
創作と現実、二つの次元を行き来する身体。
主人公の女性のオープニングシークエンスは、この作品で展開される劇中劇における物語を予期させるような、彼女の未来への期待を抱かせるような、兆候的なショットだった。一方で、次に繋がれるもう一人の主人公である男性のシークエンスは、事後的であり、唐突な出来事がどのように起こったかをまず考えさせる。鑑賞者の思考は彼の過去に方向付けられる。そういう意味でこの2つのシークエンスは対照的であり、鮮やかなラストシーンに目掛けられていた。ワンショット内の照明の操作によって、TVモニターに映し出されるイメージにより画面内で発生する視線の二重化によって、時間を伸縮しショットを繋ぎ直すことによって、机に向かう主人公の男性の思考の紆余曲折が、趣向を凝らした様々な映画的技法により表象されていた。脚本家である主人公男性の意図を越え、脚本や俳優としての理想に縛り付けられた主人公女性の身体が自由を獲得するイメージと、主人公女性のラストシーンの天空への羽ばたきが、脚本を描き切った男性主人公のイマジナリーの映像である、ということとが頭の中でオーバーラップしていった。
『END of DINOSAURS』
ここではないどこか、から始まるオープニングショット。
主人公が連呼することから見えるように、「変化」に対する見方感じ方を、主人公がどう変化させていくか、が主題の映画だと受け止めた。主人公は、国境を越えるような、物理的な場所移動によって変化を享受していた、あるいは求めていたが、友人との交流の中で、そうではない変化の求め方に気付き、新しい自己との出会いに開かれていく。赤外線カメラからオフィスにいる主人公を捉えるオープニングショットとその切り返しは、カメラと被写体との空間的な切り離しがあることから、ここではないどこかを求める主題と合致していた。
『Into a Landscape』
点から風景へ、知ること、経験することの純粋な喜び。
画面に浮かぶ、絶えず運動する一つの点が、伸縮し膨張し、線や面を形成、カラフルに色を変え、姿を現し、徐々に空、大地、自然の風景が胎動し、加速度的に画面全体にランドスケープが立ち上がるように見えた。その映像はどこか、初めて物事に触れ、掴み、それを知り、経験し、世界を広げていく際の純粋な喜びや楽しさ、世界を広げ、発見していくリズムを全身で受け止めているような、情感のあるイメージに満ち溢れていました。絵画が持つキャンバスに対する求心的なアスペクトを飛び越えて、抽象から半抽象的に飛躍する映像が、画面外にも広がっていき、鑑賞者の心象に届いていく力を感じました。
セレクション・メンバー:宮城 伸(クリエイティブプロダクション社員)
「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」
日程:9月7日(土)~21日(土)
会場:国立映画アーカイブ ※月曜休館
「ぴあフィルムフェスティバル in 京都2024」
日程:11月9日(土)~17日(日)
会場:京都文化博物館 ※月曜休館