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【PFFアワード2024】セレクション・メンバーおすすめ3作品《♯09髭野 純》

PFFアワードの予備審査に参加したのは2022年以来、今回が二回目。初参加の時とセレクション・メンバーの顔ぶれも大きく変わり、審査基準にも変化があった。今年はメンバーそれぞれが推す作品がかなりばらけたように感じた。そのため一次通過作品含めて議論も白熱した。最終的に決まった入選作の個性的なラインナップ、観客の皆さまや最終審査員の方々がどう受け止めるのか今からワクワクドキドキしている。沢山の自主映画がつくられている事実を浴びるように受け止めつつ、良い映画とは何かを考えさせられ、それについて対話するセレクションの過程は、修行のようでもあり、発見の場でもあり、いつも貴重な経験になっている。

『さよならピーチ』

学生映画に関して、近年は京都芸術大学が注目を集めることが多かったように思うが(今年も『さよならピーチ』が入選)、今年のPFFアワードには「東北芸術工科大学」から二作品が選出されている。『チューリップちゃん』(渡辺咲樹監督)と『季節のない愛』(中里有希監督)。そして、この二作品を自分自身推していたことは偶然ではないように思う。

『チューリップちゃん』

『チューリップちゃん』は、可愛らしいタイトルとは裏腹に、18分の尺の中に「人生(の豊かさ)とは何か」というテーマが込められ、アニメーションの自由さが縦横無尽に炸裂する作品。台詞だけでなく、劇中に登場する美術や背景にもこだわりが詰まっていて素晴らしい。
「ルックバック」の藤本タツキ先生も東北芸術工科大学出身らしく、ぜひ『チューリップちゃん』をいつか観てほしいと勝手に願っている。

『季節のない愛』

『季節のない愛』は、PFFアワード2022でエンタテインメント賞(ホリプロ賞)を受賞した『水槽』の中里有希監督による初長編。前作とはやや対照的に、夏の東北を舞台に30代の女性二人の喪失感や葛藤を丁寧なリズムで描いていく。監督自身の高校時代の友人へ思いを馳せたという物語は、観客の心を静かに揺さぶるだろう。

『さようならイカロス』

そして、今年もう一本見逃せなかったのは、青山学院大学在学中だという田辺洸成監督『さようならイカロス』。ヒリついた青春を凝縮した内容で、監督自らも出演している。監督の身近な仲間たちなのだろうか、メジャーな映画では味わえないようなキャストの面構えの良さや存在感が際立った作品。会場でお見かけできたらうれしく思う。

セレクション・メンバー:髭野 純(映画プロデューサー)

「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」
日程:9月7日(土)~21日(土)
会場:国立映画アーカイブ ※月曜休館

「ぴあフィルムフェスティバル in 京都2024」
日程:11月9日(土)~17日(日)
会場:京都文化博物館 ※月曜休館

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