電話越しの


昨日の夜は娘と夜通しずっと電話をした。午前3時過ぎまで。そんな時間まで起きてるのも久しぶりだし長電話すること自体久しぶりだったから眠たかったけど楽しかった。女同士の夜中の電話は大体が好きな人の話と相場が決まっているんだけど娘も例に違わずだった。話しながら泣き始めた娘は途中何度も鼻をかんだ。電話越しで聞く鼻をかむ音はなかなかの轟音でつい顔をしかめてしまったけど、私もよく電話しながら泣いては鼻をかんでいたなと思った。その時電話の奥にいた彼ら彼女らがこんな轟音を聞かされていたと数十年後に知る。黙って聞いていてくれた彼ら彼女らの深い愛も。

夜中の電話は楽しい。ずっと繋がっていたくなる。切るのは淋しい。電話だけじゃなくて、大体いつも大抵別れがたい。バイバイ、っていうときは淋しくて泣きたくなるから不機嫌になる。どうしてみんな同じ場所に帰れないんだろう。

あの頃の夜を思い出すと「私だらしないから彼氏ができるとすぐに同棲しちゃうんだよね。」って言っていた友人のことも思い出す。なんかちょっとかっこいいなあって思った。自分だって本当はすぐに好きな人と暮らしたいけど、当時の私はいつも一歩踏み出せずにいるだけだったから。終電間際の駅の改札で仏頂面で別れ、電車に飛び乗ると同時にメールして、家に着いた瞬間電話して。それだけで精一杯だった。

娘の電話越しの鼻かみ音を聞いていたらそんな夜のことをぼんやりと思い出して、そしてふいに我に帰り不思議な気持ちになる。電話の向こうで恋バナしながら鼻をかんでいるのはあの時の私ではなくて、ついこの前まで赤ちゃんだった娘。
あと何回こんなタイムトリップができるだろう。

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