【楕円】微分方程式の美しい性質 ~植物の成長戦略~
この記事で何が言いたいかというと、以下の定理を見つけました!
これにまつわる問題設定、証明、議論などすべてを記した資料がこちらです。
大学1年生レベルの数学知識がある方は、こちらを読んだ方が早いと思います。
(というか、頑張ったのでぜひ読んでください…笑)
というわけでここからは、難しさをできるだけ排除して定理の内容を説明していきます!
難しい話は抜きに解説
【テーマ設定】一年草の成長
僕が取っていた生命系の授業で、以下のような問題が出されました。
問題の意味や解決手段は後述しますが、これを考察している時に例の定理を発見しました。
…と、まるで自分が発見したかのように書いてますが、実際には同クラスのSくんが発見しました。
寛大なSくんが内容の公開を許可してくれたため、こうして公開しています。ありがとう!
【数学で表現】植物はどんなルールで成長している?
さて、先ほどの問題について考えていきましょう。
……いや、アバウトすぎてどうすればいいのかわからない!!
というわけで、植物の成長のルールを数学的に表現し、数学の問題に置き換えます(モデル化)
まず、問題にあるように植物を
葉や茎根の部分(重さx)
花の部分(重さy)
に分けて考え、
各部分の成長速度は以下のルール(微分方程式)を守っているものとします。
(というより、このルールが答えとなるのでこれを採用しています。この式の合理性は資料を参照してください。)
この式により、花と茎根全体の成長量に制限を課しています。
大事なことは、このルールが表す図形が以下の楕円になるということ!
というわけで、これを「楕円形」のルールとでも呼びましょう。
【植物の目的】子孫を残すためには?
さて、先ほど定めたルールはガチガチの制限というわけではなく、ある程度自由に成長が行えます。
花はまったく成長させずに茎根だけ成長させても良し、花の成長に全振りして茎根はまったく成長させても良し、どちらも同時に成長させても良し…
では、実際の植物はどのような成長をするのでしょうか?
言い換えると、植物は何を目的として成長しているのでしょうか?
それはずばり、
子孫を残すこと
(花の重さyをできるだけ大きくすること)
でしょう。
では、花を大きくするためにはどのような成長戦略を取るべきか?
「そんなの簡単! 茎根の成長を諦めて花の成長に全振りすれば良いに決まってる!」
残念ながら話はそう簡単ではありません。
花を大きくするためには、茎根もある程度成長させていく必要があるからです。言い換えると、花と茎根を「バランスよく」成長させる必要があります。
以下のような話をイメージしてください。
一番「バランスのよい」成長のさせ方は、
ポントリャーギンの最大原理により、数学的に求めることができます。
結果は以下の通り。
【最適な成長】なんとまたまた楕円登場!!
ここまでの流れをまとめると、
植物を茎根(x)と花(y)にわけ、「楕円形」の成長ルールを設定
花をできるだけ大きくする成長戦略を導出
でした。
では、最適な成長戦略における(茎根の大きさ、花の大きさ)の時間経過を(x,y)平面にプロットしてみましょう。
――――!!!!????
これ、なにかに似てますよね??
そう、例の楕円です!!
で、何がすごいの?
今までの議論で
最適戦略が表す図形が、
ルール(微分方程式)が表す楕円とそっくり
ということがわかりました。
実は、冒頭の仰々しい定理もこれと同じことを言っています。
僕はこの定理をきちんと証明できたとき、脳に電撃が走り、しばらく他のことが手につかなくなりました笑
ルールと最適戦略が同形であるということは、非自明で、深淵で、美しい事実だと思うのですが、口下手なばかりにこの感動を伝えられないのが残念です。
詩的に表現するなら……
思いつかない笑
ただひとつ言えるのは、より一般の微分方程式で同様の主張ができたとしたら、それは解析分野の大きな進歩になるということです。
楕円形ではなく双曲線形なら?リサージュ曲線なら?…
今後の課題です。
(大口叩いておいて既出だったらどうしようかと不安になってきました)
最後に
ここまでの説明はわかりやすさ重視のために、省略や誤魔化しを含んでいます。
厳密かつ詳細な説明は冒頭の資料を参照してください。
宣伝のため再掲!
ほとんど全ての重要なアイディア(三角関数による力学系設定、エネルギー解釈、相平面表示での関係…)を考え出してくれたばかりか内容の公開を許可してくれたSくん、考察や検算に協力してくれた5人の方々、ポントリャーギンの最大原理を解説してくださったKさん、そしてそもそものきっかけを与えてくださったT先生に感謝してこれを終えます。
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