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伊藤キム×岩渕貞太「カラダノオト」対談 <後編>

言葉でも音でもなく「声」

貞太:ラストシーンの話をしちゃうけど(笑)まあ、内容は見てのお楽しみでいいかなと。
 すごく良いなと思って見てたんです。いわゆる声を出すこと、(それ自体は)良くあるというか、考えようと思えばいくらでも出来るけど、(あのシーンは)キムさんが出した現時点での一つの…解答?解答っていうと何か決まっちゃうけど…。
 キムさんが声とか息とか踊りとかを考えた中での、一個の、なんかこう「強い塊」を見た気がした。私はもうあれはキムさんのギターソロにしか見えなかった。

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貞太:逆に言うと、何でも声に聞こえてくるような気がしてきた、音自体が。
 声っていう言葉になってるけど。(椅子を叩く)これは音で、これは声で、とかじゃなくて、色んな場所で色んな声があるんじゃないか。それは人が出すから声っていう訳じゃなくて。そこら中にあるものは「声」なんじゃないか?
 音から声になるって、ある種のメッセージが届くって事な気がして。(キムさんの声が)エレキギターの歪みにも聞こえた。逆にエレキギターの歪みは声なんだ、風の音も声なんだ、世界が声に溢れていて、私たちは色んなものから色んなメッセージを受け取ることができる。
 まあ別に、「世界は声にあふれてる」とか言いたいわけじゃないんですけど、自分の見えてる世界がすごく変わるようなそういう体験をしたんじゃないかな。


キム:(あのシーンを)自分でやってて思うのは、「コロナ」っていう声を上げられない状況で、僕が声を出して、周りにダンサー達がいて動いているっていう状況で、「声を持たない人の代弁」をしているようでもあり、声が出せない状況で、出してはいけない、やってはいけない事をやっているという後ろめたいというのがあったり…。
 あれがもし言葉だったらあんまり広がっていかないのかなっていう気がするけど。でもそうじゃなくて、単なる「声」、つまり音の響き。言葉だとそこに意味が乗っかって人はそれを聞くと解釈しようとする。でも声という音の響きであれば「いろんなものに声がある」って言ってくれたけど、そういう風にどんどん広がっていくのかなという気がします。

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貞太:声って面白いなって。
 キムさんは今「言葉ではない」って言ったけど、今日見た感じでは「感情」でもない感じはした。「辛い」とか「悲しい」とかじゃない。でもサイン音とかでもなくて、ただの音でもないし、言葉でもないし、感情でもないし、でもどれも重なってるような気もする。それが「声」っていう言い方にしてみるのは面白いんだなって。
 「声」っていう、声自体には意味も感情もないので、ただの音色とか音なのかもしれないけど、そんな純粋な声を聞けるってどこで聴けばいいんだろう?
 いつ私たちはそういう「声」っていうのに出会うのかな?と。
それは「言葉」とか「音」とかこの作品の中で色んなものを使ったから、(展示とか)いろんな変遷があった上で「あ、声に出会えた」っていう感じ。あのシーンだけあればいいとも思わなくて、色んなプロセスがあってあれが声になるっていうふうに私は感じられた。

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人の在り方、生の在り方

キム:今回の作品は「カラダノオト」っていうタイトルですけど、それは「体の音」っていう意味でもあり「体のノートを綴っていく」という意味でもあり。
 (創作を)やっていくと、人間の営みというか生の営み、在り方というか、そういうことに視点が移っていってて。
 例えば、人と人との関係性だったり集団になった時だったり、あるいは逆に個人になった時に違いがあるなとか、そういうことを稽古しながら見つけていって振付に反映させていったり。
 輪廻転生。人が死んで、また生き返って、年老いてまた死んで、生き返ってって言う、物事が循環しているということだったり。あと、男女の性愛。男と女が交わって、そこで新しい生命ができて、男と女の欲望から生命ができるっていう…。
 面白いね!

貞太:(笑)

キム:つまり「やりてー!」「セックスしてー!」っていう、そういう下世話な感覚が命を生み出す…これすごいね。

貞太:キムさん、お二人いらっしゃるし。欲望に突き動かされて(笑)

キム:欲望に突き動かされて二人できちゃったんでね!

貞太:ちゃんと実証している!

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キム:でも人間のそういう色んな営みであったり在り方であったり…それは孤独であったり、歓喜であったり、そういうことが…「カラダノオト」って言うと身体のことだけな感じ(だけども)実はそう言う人間のあり方も描けると良いな。

貞太:始めの展示なんかは、ゴロっとした物質的なものから始まるけど、何かそういうものがまた間のシーンで出てきて最後まで行くってなったらまたより面白い。
 今日は1月の時点で合わせて通しを見せてもらったのでまだまだ濃くなるんだなっていう感じがして本番が楽しみです。もう締めに入ってますけども(笑)

キム:これ面白いね!初めてこういうの(対談)をやったけど。飲み屋で二人でしゃべるのとはまた違った感じがあって、見る人に共有しようとする、一緒に話をすることで出てくるものだから。
 今日はとても良い時間でした。ありがとうございました。


貞太:私も楽しかったです。ありがとうございました。

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収録日:2022年1月19日(水)
撮影場所:森下スタジオAスタジオ

動画版URL↓(前編)
https://youtu.be/SNBfoQH7CCg

後編↓
https://www.youtube.com/watch?v=2cT6pJ4H_FY

公演予約ページ(Google form)
https://forms.gle/NQz9cczgaGHNJBwC7

Gmailからのご予約→info@gero.kim 
こちらのアドレスに以下を明記の上お送りください。
件名:カラダノオト予約
本文:ご希望の公演日時、お名前、一般・学生・障害者等の券種、枚数、
※当日現金にてお支払いください。

※公演情報※

「カラダノオト」

「身体の音」を踊る
「身体ノート」を綴る

2019年の『踊ってから喋るか?喋ってから踊るか?』に次ぐ、フィジカルシアターカンパニーGEROの3年ぶりの新作。
言葉を発するという行為を見つめ直し、「息~音~声~言葉~意味」というルートを、身体という道具を使って巡るパフォーマンス。身体が発する音をサウンドアートにまで高め、またダンサーたち自身がインスタレーションの素材となる。
現代社会での「言葉の役割」と「人間のあり方」をフォーカシングしてゆく。

構成・演出・振付:伊藤キム

出演:青沼沙季、甲斐美奈寿、KEKE、志筑瑞希、篠原健、鈴木しゆう、鈴木淳、根本和歌菜、伊藤キム

衣裳アドバイザー:臼井梨恵 
音響プラン:星野大輔
音響オペレーション:常田千晴
舞台監督:川口眞人
宣伝美術・PV製作:KEKE
協力:BankART1929、横浜市神奈川区民文化センターかなっくホール、伊豆牧子、増田愛祐美、本永直子、高橋風華
制作協力:レイヨンヴェール、呉宮百合香
企画・制作・主催:フィジカルシアターカンパニーGERO

【スケジュール】(開演の30分前よりチケット引換開始)
3/18(金)19:00~
3/19(土)12:00 ~ / ☆16:00~
3/20(日)★12:00~ / 16:00〜
3/21(月祝)15:00~

開演の30分前よりチケット引換開始。

☆終演後「アフター突っ込んだトーク」開催
★20日(土)12:00~の回のみ未就学児の方でもご観覧いただけます

【チケット料金】 
フリースペースでの観覧となります。(3/20(土)12:00の回を除き未就学児入場不可)

 一般前売:3,500円
 学生:2,500円 ○入場時に身分証明証をご提示ください。
※当日券は各料金500円増し
 障がい者割引:ご来場時に障がい者手帳ご提示で、お支払いいただくチケット料金から1,000円をキャッシュバックいたします。

【チケット取扱】
Googleformからのご予約→ https://forms.gle/NQz9cczgaGHNJBwC7
Gmailからのご予約→info@gero.kim 
こちらのアドレスに以下を明記の上お送りください。
件名:カラダノオト予約
本文:ご希望の公演日時、お名前、一般・学生・障害者等の券種、枚数、
※当日現金にてお支払いください。

【チケット発売日】 2022年1月30日(日)

【会場】BankART Station
〒220-0012 横浜市西区みなとみらい5-1 みなとみらい線「新高島」駅B1F
http://www.bankart1929.com/bank2020/space/station/index.html

【お問い合わせ】 フィジカルシアターカンパニーGERO  info@gero.kim

伊藤キム
1987年、舞踏家・古川あんずに師事。1995年「伊藤キム+輝く未来」を結成し、バニョレ国際振付賞(1996)、第一回朝日舞台芸術賞・寺山修司賞(2002)などを受賞。2005年からの1年間、バックパックを背負って半年間の世界一周の旅に出る。2011年の「輝く未来」の解散後は、京都・本能寺創建600年記念イベント『本能寺のD』の演出・振付・出演(2013)、六本木アートナイト2014パレードの監修、小中高生へのワークショップや振付、おやじが踊って給仕する「おやじカフェ」のプロデュースを国内外で行う。青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。2015年、フィジカルシアターカンパニーGEROを結成し、ダンスにヴォイスや言葉を取り込んだ新しい創作スタイルを追究している。
フィジカルシアターカンパニーGERO
振付家・ダンサーの伊藤キムによって2015年に結成。ダンス、演劇、音楽、マイムなど、様々なバックボーンを持つメンバーで構成される。体内に存在する生々しい感覚や人と人との関係のあり方を、独特のユーモアやアイロニーを交えて表現。身体という楽器で言葉を演奏するスタイルを探求し、フィジカルシアターの新しい境地を開拓している。


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