光ってなんだろう?
はじめに
光とは何でしょうか?
身近すぎて、改めて考えることは少ないように思います。しかしながら、少し考えてみると私たちは普段から光を利用しています。光がなければ趣味も仕事もほとんどできません。つまり、光がなければ生活できません。
実際、朝起きてから初めにすることは電気をつけたり、カーテンを開けたりして部屋を明るくすることだと思います。ここでは、そんな光について簡単に説明することを試みようと思います。
光の正体
いきなり結論になりますが、光の正体から説明します。
私たちが日常で光というときは人の目に見える可視光のことを指します。
実はこの可視光の正体は電磁波です。
電磁波とは電場と磁場の振動が波として空間を伝わっていくものです。
ここで、電場は単位電荷をある場所に置いたときにその電荷が受ける電気的な力によって定義されます。これはその空間が持つ電磁気的な性質といえます。ある2つの物体に静電気などの電気的な力が働くとき、物体の間には力を伝えるものは何もないように見えますが、実はそうではなく、電場という空間の電気的な性質を通して力が働くということです。言い換えれば、物体の間に直接に力が働くのではなく、物体と電場の間に相互作用があり、それが空間を伝わって別の物体と相互作用をすることによって電気的な力が働きます。
磁場も同様に単位磁荷に働くによって定義されます(実際には磁荷は見つかっていないので正確ではないですが)。実は電磁気学をきちんと勉強すると、電場と磁場の時間変化はMaxwell方程式で記述され、相対論的な枠組みでは互いに表裏一体であることがわかります。電場の変化が磁場の変化を生み、磁場の変化がまた電場を生む、といった形で伝播していくのが電磁波であるといえます。
ちょっと混乱するかもしれませんが、空間が持っている電磁気的な性質が波として伝わっていく現象が電磁波であるという認識で問題ないです。
この電磁波の波長がおよそ300[nm]~700[nm]程度の範囲であるときに、その電磁波は可視光と呼ばれます。この波長領域のうち、波長が短いほど紫色に、逆に長いほど赤色のように見えます。部屋を明るくしてくれる蛍光灯の光は白っぽいですが、これは複数の波長の光が合わさって白く見えています。また、ほかの波長をもつ電磁波は私たちの目には見えませんが、生活の中で利用される機会が多いので、実は身近な存在です。
可視光とほかの仲間たち
私たちが見ることができる電磁波は可視光ですが、可視光よりも波長が少し短いものを紫外線といいます(紫色の光の外側の領域に相当します)。肌によくないといわれるヤツです。日焼け止めの話でUVケアというとき、このUVというのはUltraVioletの略で紫外線を意味しています。
さらに波長が短い電磁波はX線と呼ばれます。これはレントゲンに使われます。X線が私たちの体を通過するとき、いくつかは体内にあたって跳ね返ってきますが、X線がぶつかる物質の内部構造や元素の重さによって跳ね返り方が違うので、筋肉や内臓を無視して骨だけが見えたりします(骨は他の組織と比べて密度が高く、主成分であるカルシウム原子は水素原子や炭素原子と比べて重いです)。
X線の別名としてγ線(ガンマ線)というものもあります。両者は本質的には同じものですが、発生機構の違いによって区別されます。γ線は原子核の内部の現象を由来とする短い波長の電磁波のことを表します。逆にそれ以外の現象を原因とする短波長の電磁波のことをX線といいます。γ線は私たちの生活にあまりなじみがないですが、宇宙に目を向けてみると、星の爆発などの天体現象のときには非常にたくさん出てきたりします。
逆に波長が長い領域を見てみます。可視光よりも波長が少し長い電磁波は赤外線と呼ばれます(赤色の光の外側の領域に相当します)。
赤外線も目には見えませんが、センサーやカメラに使われることが多いです。また、身近なところでは家電のリモコンなどに使われています。赤外線はX線に比べてエネルギーが低く、低電力で発生させることができるので、幅広く利用されています。
また、赤外線は波長が長くて透過性が低いですが、電磁波のエネルギーとしては物質を構成する分子の運動と同じ程度の領域になっています。分子運動に対応するエネルギーの赤外線を物質に当てるとその分子運動を活性化させることができ、それは熱として放出されることが多いです。したがって赤外線によってモノを温めることができるという性質があり、これも私たちの生活に利用されています。たとえば、電気ヒーターなどにこの性質が応用されています。
さらに赤外線よりも波長が長い電磁波はマイクロ波と呼ばれます。これは電子レンジに使われています。水分子の持つエネルギーと同じ程度のエネルギーを持っているため、水分が含まれる食品を加熱するのに適しています。
マイクロ波よりも長い波長領域の電磁波はそれぞれ波長が短いほうから順番に、短波、中波、長波などと呼ばれます。これらの電磁波は衛星通信や無線、ラジオなどに使われています。波長の長い波は透過性はほとんどないですが、物体に回り込んで遠くまで伝わりやすい性質があり(波の回折)、それを生かして上記の通信などに利用されています。
このように、私たちの身の回りは電磁波だらけです。
電磁波の便利な性質を利用して、その用途ごとに名前を付けているだけで、
それらはすべて同じものということになります。
個人的には、1つの概念によって複数の現象が説明されるということに感動を覚えるので、これはなかなか面白い事実だと思います。
じつは物理をちゃんとやっていくと光は電磁波なので電気と磁気を扱う電磁気学という枠組みで扱うことができ、よりエレガントで興味深い記述が可能です。
また、光は電子などの素粒子の仲間に含まれますが、現代物理学における粒子は量子として扱われます。量子を扱う学問は量子力学と呼ばれ、これも非常に面白いですが、長くなるのでここでは割愛します。できれば別の記事で解説していきたいと思います。
モノを見るとはどういうことか?
ここでは可視光という電磁波を使った身近な例として、私たちがモノを見るというのはどういうことなのかを改めて見ていきたいと思います。
私たちが朝に目覚めて、部屋の電気をつけるところを想像してみます。
スイッチを押すと蛍光灯から光が出ます。それは私たちの目に入って光として認識されます。また、光は部屋に置いてあるものや壁にあたって反射されてから目に入ってくることもあります。
私たちがモノを見るとき、実際にはモノにあたった光を見ています。
光がモノに当たって反射されるとき、そのモノを形成している物質の種類や表面の構造などによって特定の波長の光が強められたり弱められたりすることがあります。この光を見ることによってモノの色を認識できます。
たとえば、部屋に置いてある観葉植物(サンスベリアとか)にあたった蛍光灯の光が反射され、500[nm]の光になってから目に入ったとすると、その観葉植物は緑色に見えることになります。
私たちは普段からモノがどのように見えるかによってそのモノの状態を推測したりしますが、それはそのモノに当たった光がどのように反射されたかを見ていることになるので、実際に表面の構造変わっていれば違ったふうに見えることになります。そういった意味でモノの見た目でモノの状態を判断することは理にかなっているといえます。
たとえば、観葉植物が枯れてしまえば葉の形状や構造は水分が抜けたり細胞が変容してしまったりして、元気だったころとはまったく変わったものになっているはずです。その状態で観葉植物に当たった光を目で見たとすると、たしかに以前とは色が違っているはずです。もはや緑ではなく、茶色や黒色に見えることでしょう。
少し余談ですが、モノが黒く見えるということは、そこから光があまり反射してこないことを表しています。光が当たっているのに跳ね返っていないということは光が吸収されていることになります。吸収された光が持っていたエネルギーは熱として放出されたりします。天気のいい日に黒い服を着て歩いていると、いつもより暑く感じることがあると思いますが、それは気のせいではなく、実際に黒い服が日光を吸収して発熱していることによるものです。
また、現代ではふつうにモノを見る場合と違うシチュエーションがありえます。それはパソコンやスマホの画面を見るときです。この場合は蛍光灯の光が画面に当たった反射光を見ているのではなく、画面自体が発した光を見ています。
自然界では主な光源は太陽ですが、光が強すぎて目を傷めるので直接見ようとすることは多くありません。私たちが光る画面を見るようになったのは進化の過程でいえばここ100年程度のことですので、画面からの直接光をみるという特殊な状況での視覚の運用というのは人体にとっては想定外でしょう。そのことが目の疲れにつながってくるのかもしれません。
ありきたりな話ですが、画面で目が疲れたときには遠くの景色を見るなどして、モノが見えるということについて改めて考えてみるのも興味深いかと思います。
まとめ
以下が今回のまとめになります。
可視光は電磁波のこと。
紫外線やX線、赤外線、マイクロ波、ラジオ波なども可視光と同じ電磁波で、波長が異なるだけ。
モノを見ることはモノに当たった光を見ること。