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【詩】僕等は夏に色々仮託し過ぎ、それはそう、それはそうと

悲しみが悲しみとしてある為に悲しむ
よく分からないんだ、君の言ってる事
よく分からないんだ、僕が考えてる事
大人になったら
大人になった時にそういった
悲しみや虚しさを知るのだろうか

夏を追いかけていくから光る
汗も花火もアクエリも光る
手を動かしていればできる
自分で山積みにしてしまった宿題とか
前世から積読のままにしたカルマの
答え合わせとか
あの死んでしまった人達への追悼とか

全然望んでない事:
退屈、勉強、訓練、孤独
加齢、改悪、生産、労働
説明、訂正、詳細、確認

全然望んでる事:
破壊、創造、冒険、奇跡
過去、現在、未来、憂鬱
銃声、動乱、狂気、混沌
秩序、善悪、民衆、歴史
灼熱、太陽、大地、山河
海洋、生殖、体験、悟逹

この世界がバーチャルだとして
ただのゲームだとして
主人公の勇者の君は深刻な顔をして剣を取る
その剣がペンでもギターでもキーボードでも
とにかく僕らは王子王女として
生まれたはずだ

見えるものと見えないものと
具象と抽象、解像度は荒い
それでも海図と羅針盤を頼りに大海原へ出た

軋む桟橋、磯の香り
浜に打ち上げられた海藻やごみ
飛び交う鴎、曳網
漁船に乗り込む荒々しい漁師達
海原を染め上げる金色の朝日
大漁旗を掲げた漁船にエンジンが掛かる
風も船体もスクリューも調子は上々
そんな景色を想い出しては我等が帆船は進む

未だ見ぬ大陸、マゼランも、コロンブスも
今度は支配ではなく友好の為に
そう願っている

真っ暗な広い広い広漠な空間に
恒星と惑星が無数に輝く
青い地球は遥か彼方、
太陽の光を反射する点である
我々は太陽系の外に出て
プロキシマ・ケンタウリの辺りにいる
この国際宇宙ステーションは広大だ
このステーションで生まれた赤ん坊や
亡くなった方も含めて
約1万人の乗組員がいる
このステーションはさながら街だ
食糧は青い光を放つ野菜工場で生産され
動物プランクトンと大豆を混ぜたもので
肉を作る
地球との交信が途絶えて久しい
何しろ4.2光年離れているのだ
時は21XX年、未踏の惑星を目指して
宇宙大航海時代の嚆矢という訳だ

ハッと目が覚める
冷房の効いた部屋の畳の上で
うたた寝していたようだ
すぐに出かける準備をする
チャリで港まで行くつもりだ
玄関を開けると
夏の蒸せ返る様な熱気と強い陽射し
特に理由は無い
夏を追いかけて
汗も花火もアクエリも光るから
強いて言うなら未来の香りを嗅ぐ為に
もっと言うなら
死んでしまった人達の魂を知る為に
今はまだ限られた時と空間を
追いかけるつもりだ


令和5年7月某日

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