【歌集】泡沫の日々
罪の無き顔をして居り少年のその寂寞のその宿命を
死を以ちて償へし事有る無しを醒めた目を以て問ふ少年の
許し合ふ醒めた心のテロリストいつそ死ねればどんなに楽かと
澄み渡る裁きの春の天空に凧揚げしたる児等の歓声
面白い嗚呼面白い面白い兎角おもろい面白きかな
貧しさは引き金となる犯罪の故に恵めと国脅す様
百均で扇子なんぞを選びたる我に地獄の熱を送れよ
寂れたる中華料理屋老店主テレビに出し事得意気に云ふ
食べつつも病や過去を思ひつつ心の中を読まれし気のして
無機質に買い物するならマニュアルのプラスチックなチェーン店が良い
「メンヘラ」と 嗤ふ世間の正しさを手榴弾投げ粉々にしたい
整へる身なりで出会ひし看護師の別人見る様戸惑ひし顔
遺伝子の劣つた奴は殺されるナチスもさう云ふ方式だつた
無関心無様な愛の反対は憎しみにすら疲れてゐてくれ
僕の事好きでも嫌いでもいいよあなたがそれで満足ならば
あの友の吸つてゐたあの銘柄を切らしてロングピースに戻せり
一本が二十円弱の煙草が灰になりゆく愛の代わりに
学食のカウンター席窓辺にて独り泣きにき未来想ひて
革命と愛と美の国仏蘭西に我の名あれど遥かに遠し
転寝の間に人の一生が消へゆく事も皆忘れて
殺し合ふアラブのニュース上の空世の中の事がもう如何でも良い
南北の首脳会談だから何君が笑つてくれればそれで
母の日に公費で買ひしカーネーション如何かそれだけ赦して下さい
平成三十年四月、五月