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『マイ・プレゼント』制作秘話

2022年本屋大賞2位『赤と青とエスキース』でタッグを組まれた、青山美智子先生とU-ku先生のショートショート集『マイ・プレゼント』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。

編集を担当した『赤と青とエスキース』が2022年本屋大賞2位をいただいたとき、私には作者の青山美智子先生のほかにもう一人、喜びを分かち合いたい人がいました。それは、同書のカバーを美しい絵画で彩ってくださった、水彩作家のU-ku(ゆーく)さんです。

U-kuさんとの出会いはおよそ1年前、ある画材屋さんでのことでした。私と青山先生は、『赤と青とエスキース』のプロットを詰めていく過程で「額縁」について取材をさせていただくため、その画材屋さんを訪れました。そこでご対応くださったのが、当時スタッフとして働かれていたU-kuさんでした。ご説明を伺ううちに、U-kuさんご自身も絵を描いていることを知り、もうすぐ個展を控えていることも教えていただきました。そこで、取材の御礼を兼ねて、青山先生と一緒に個展にお邪魔することにしたのです。
日本橋の素敵なギャラリーの入口をくぐり、狭い階段をのぼった先、そこにはU-kuさんの世界が広がっていました。淡く、繊細なのに力強い。寂し気な絵もあれば、激しさを感じる絵もありました。そして、注目すべきはどの絵にも、小さな女の子が描かれていたことでした。私には、その小さな女の子が、青山先生の作品に登場する主人公のように見えてなりませんでした。一枚の絵を見ているのに、まるで一冊の小説を読んだかのような、「物語」を感じました。青山先生もずっとU-kuさんの絵を食い入るようにご覧になっています。
そのとき、誰からともなく、「皆で本をつくってみたい」と言いました。U-kuさんの絵に、青山先生の言葉が合わさったら、どんな素敵なことが起こるだろう。そんな私たち3人の妄想が形になったのが、『マイ・プレゼント』という本です。思えば、『赤と青とエスキース』の装画としてお借りした「春一番」という絵と出合ったのもこの個展のときでした。
「present(プレゼント)」には、「贈り物」のほかに、「現在」という意味もあります。絵を見て、文章を読む。文章を読んで、絵を見る。どちらの読み方も正解です。どんな読み方も正解です。この本を読んで気になる文章や絵があったのなら、それはきっと「いま」の自分だけが見つけられる、何かのヒントなのかもしれません。
『マイ・プレゼント』には、夏の発売にふさわしい涼し気な青い水彩画を集めました。冬には、赤い水彩画を基調にした『ユア・プレゼント(仮)』も発売予定です。あなただけの「赤と青」の物語をぜひ見つけてみてください。

第一事業制作局 文化事業部 文芸文庫課 北村淳子

note 編集の現場から(顔)