<第10回>ビジネスパーソンよ、マンガを抱け!
今回はちょっと趣向を変え、私が読んでみてよかった「ビジネスに効く⁉」マンガを4作品、「独断」と「偏見」でご紹介します。「いまさら、マンガなんて……」と、侮るなかれ! マンガだからこそ、伝わるものがあるんですよ。
では、早速いってみましょう!
マーケ用語も学べる、業界初の青果市場エンタメ
➊『八百森のエリー』仔鹿リナ著(モーニングKC)
「野菜に人生捧げますか!?」と、登場人物が絶叫するようなマンガは、過去なかったのではないでしょうか(笑)。
「八百森のエリー」は北関東の大手仲卸・八百森(やおもり)青果を舞台に、国立大学の農業試験場から入社した主人公の卯月瑛利(うづき・えいり)、通称エリーや同僚の大虎倫球(のりたま)、先輩の鹿野タカシなどの活躍が描かれます。青果仲卸を舞台にした、「業界初の青果市場エンターテイメント」です。
また、「取引数量最小化の原理」などのマーケティング用語を、強面の教育係、鹿野タカシが現場で教える場面など、内容は実際の現場にとても近く、著者の綿密な取材が感じられます。
教科書でしか知らない偉人が続々と登場する歴史物語
➋『昭和天皇物語』能條純一著/半藤一利原作/永福一成脚本(ビッグコミックス)
作家・半藤一利氏の『昭和史』を原作に、漫画界の巨人・能條純一氏が「昭和天皇から見た昭和史」という視点で挑む渾身作。教科書でしか知らない歴史上の偉人が続々登場する歴史物語は、知られざる人間ドラマの宝庫だったのだと、改めて感じます。
戦争を「感情」で描く、証言文学の金字塔がマンガに
➌『戦争は女の顔をしていない』小梅けいと作画/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作/速水螺旋人監修(KADOKAWA)
原作者アレクシエーヴィチ氏は2015年、ノンフィクション作家として初めてノーベル文学賞を受賞した人物。
500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けたノーベル文学賞受賞作家の、主著にして「生きている文学」のコミカライズです。
戦争を「事実」ではなく、「感情」で描く証言文学の金字塔が、マンガで読めるとは思いませんでした。
"ソ連では第二次世界大戦で100万人を超える女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず、兵士として武器を手にして戦った。しかし、戦後は世間から白い目で見られ、自らの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――"のです。
1878年の長崎を舞台にした「明治アンティーク浪漫」
➍『ニュクスの角灯』高浜寛著(乱コミックス)
第24回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」受賞作(2020年)。この賞は、その年の日本マンガの最高峰というべき作品に贈られている賞ですが、まさに大賞にふさわしい傑作です。
高浜寛氏の初長編でもあり、普遍的な物語の面白さだけではなく、歴史上の人物を登場させるなど、内容の深さもあります。
明治時代に活躍した"長崎3大女傑"の一人、大浦慶の話や、ヨーロッパでの熱狂的なジャポニズム、日本の貿易会社の礎といわれる"起立工商会社"の話など、教科書では1行の描写で終わってしまう内容が描かれています。
"1878年・長崎……触れたモノの未来が見える 不思議な少女と、先進と享楽の都・パリから やってきた夢の品々をめぐる、豊潤なる「明治アンティーク浪漫」。"です。
以上4作品、試し読みしてみて、続きが気になったマンガは、ぜひ読んでみてくださいね!
★おまけ★最近読み直した本
『2020年6月30日にまたここで会おう』瀧本哲史著(星海社新書)
「君たちは、自分の力で、世の中を変えていけ! 僕は日本の未来に期待している。支援は惜しまない」。2019年8月に、病いのため夭逝した瀧本哲史氏。"伝説の東大講義‟は、未来への普遍的なメッセージを感じずにはいられません。私たちは、これから何を学び、どう生きるべきなのか。お勧めです。