ピーナッツバター(ビ)in石川
幼馴染とふたりで見た景色。
私は今でこそ、外に出ることが好きだけれど小さいときは屋内にいることの方が圧倒的に好きだった。対して彼女は外で遊ぶことが好きでたくさん外に連れ出してもらった。
ふたりでふたりだけの謎の祭りも開催した。お泊りもした。ファミコンもした。喧嘩もたくさんした。ひとつひとつを覚えてはいないけど、縄跳びを壊してしまいふたりで大泣きすることもあった。川の上にかかる土管の上を歩いたりもした。(落ちたら意識不明の重体案件。今考えたら怖すぎる。)
私の幼少期を語るうえで彼女の存在は欠かせないし、遠く離れていても救われていた。
あの頃のようにすべてを共有することはできないけれど、今でも共有できる景色があることが嬉しいんだ。
そんな彼女と石川県を旅した3日間。
金沢市を含めたくさんの場所を訪れた。
(到着前は呟いた通り、金沢旅行のつもりだった。)
そんな中の、一部のお話を。
来たるピーナッツバターmagic
私たちの旅の行方を決める決定的な出来事が起こったのが1日目の深夜。
ホテルまでの帰り道、寄ったスーパーでなんとなく買ったピーナッツバターサンドを食べることにした。
そのパンが、衝撃的に美味しかった。
深夜の空腹という魔法のスパイスがかかっていたのかもしれないけれど、とても美味しかったのだ。
「このパンをつくっているのってどんなお店なんだろう?」
と、疑問に思い調べてみると、どうやら小松市という場所に本店がある「あづま屋」というパン屋さんなのだと知る。
「え、もっと、このお店のパン食べたい。」
「この、頭脳パン食べたい。」
「この、ホワイトサンド美味しそう。」
「じゃあ、明日行こうよ。」
そうして、あっという間に小松市行きが決まった深夜24:00。
「私たち、ピーナッツバターmagicにかかっちゃったね。」
結果、私が食べたかった頭脳パンは既に売り切れていたけれど、小松市まで足を運んで良かったな。初めて訪れる街だけど、何故か知っている街のような気がして面白かったんだ。
結局、前日に決まったこの小松市行きが、
この旅、一番の想い出になった。
(カーテンが無くて、遮光シートが貼られていた宿も同じくらい強い思い出だったりするけれど。遮光シートのど真ん中にいた謎の丑、いつか夢に出てきそう。)
ラスト・バス
バスがたくさん走る金沢市。
ホテルから金沢駅までの帰り道、この旅最後のバスに乗った。
2日前は全く知らなかった景色が、知っている景色に変化していることを実感し、少し感傷的な気持ちになっていた。
しばらくして、
ん?これは、知らない景色だな、と思っていたら乗るバスを間違えてしまっていた。
いや、慣れていたのではなかったのかい。
だいぶ金沢駅から離れてしまい少し不安になって、途中で降りる時、正しく目的地に向かうバスを運転手さんに尋ねた。すると、その方は運賃箱を手で押さえ、「お金は要らないよ。気をつけてね。」と言った。予期せず、驚いた。そんな運転手さんの優しさに触れ、心の温度が1度くらい上昇した。
間違えるのも悪くないね。
さいごに
この旅で、金沢21世紀美術館も、ひがし茶屋街も、兼六園も、住みたくなるほど惹き込まれた石川県立図書館も訪れた。美味しすぎる香箱蟹も食べた。だけど、やっぱり私の記憶はピーナッツバター、一色。
10年後にでもさ、また小松市まで行って、今度こそ頭脳パン食べようね。
次は、滋賀でも岡山でもヨーロッパでも行こう。
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