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こなみんフェス

こなみんからのお誘い

2023年某日、こなみんから12月にこなみんフェス(正式名称は「Konamin Rock Festival」)を開催するので出展してみないか?との連絡がある。被写体を「佐野小波」に限定したいわゆるモデル展のようだが、コンセプト資料を見るとそれを圧倒的に超越したフェスのような形にしたいとのこと。”アイデンティティ”って言葉も含まれていたように記憶している。

なぜ僕なのか?

お誘いが来たのが筋トレ中の朝7時過ぎで、実際に参加すると回答したのは21時近くになってから。その間、僕が参加するべき理由は何か?なぜ彼女は僕を誘ったのか?という自問自答を重ねていた。実のところ僕は彼女と知り合ったのは2015年で早8年も経過してるが撮影したことは1度しかない。それもビジネスマンこなみんが上司の理不尽にムカついてパソコンを叩きつけたのちに飲んだくれるっていうのがテーマの撮影だ(なんだそれ)。彼女のアイデンディティはそこには欠片もない。それに僕には女性を可愛く撮りたいっていう感覚がない。本当になぜ僕を誘ってくれたのか。

飲んだくれて挙句空き缶を叩きつけるの図(2017年撮影)

彼女と知り合って8年の間にどんなことがあってどんな話をしたのか、思い返して彼女が本質的にどんな人間なのか考えた(これはお誘いのあった当日だけじゃなくて、フェス開催当日早朝まで続いた)。その結果、僕がフィーチャーしたいと思い浮かんだ部分を表現する人は(たぶん)僕しかいないし、長い期間ある程度客観的にこなみんを見てきたからこそできる表現があり、伝えられることがあり、そこに僕が参加する意義があると思うに至ったので彼女に参加の意思を伝えた。(それ以外にも撮影した過去1回の写真を上記の理由で使うわけにもいかなかったから改めて撮影もしなきゃいけない。時間的に問題はないのか?も考えたけど大した問題じゃなかった)

展示準備

展示の準備は案外考えることが多い。

  • レイアウト

  • 何に印刷するか

  • どう見せるか

  • どの写真を使うか

  • ステートメント、キャプション etc.

今回この中で薄い和紙に印刷することだけはすぐに決まった。理由はなんとなくこなみんっぽかったから。もう1点、具体的にどうするかは別にして、コロナ禍を経て展示に足を運んで頂けることの有難さを以前以上に考えるようになったので、ただ観るだけではなく何か体験して帰ってもらいたいとも考えていた。

一言で「薄い和紙」といっても色々ある。今回の展示のために調達した和紙は16種類(自分で印刷する前提なのでインクジェットプリント用の和紙だ)。試し刷りをしていく中で出会ったのが「手すき伊勢和紙 大直紙(おおなおし)」。これが本当に薄い。透ける。そこで「あれ?これは別の印刷を下に重ねたら面白いのでは?」と思いつき、もうちょっと発色がよくて透け感も少ない「伊勢和紙Light 雪色」のプリントを重ねてみたら、あら不思議、めちゃくちゃしっくり来た。これは是非めくってもらおう!という発想までには秒もかからなかった。(とはいえ重ねた時の色合いの調整はまぁまぁ大変だった)

撮影

是非めくってもらおうって思った時点で実は展示初日の2週間前。なんせどんな体験をしてもらうかでずっと悩んで、あまりに時間が迫ってたからとりあえず印刷だけでもと進めたのが功を奏した。やっぱり悩む前に動けだ。ただ、展示で写真を2枚重ねるって決めたタイミングで、めくった先の写真はちょっと趣向を凝らすべきだと考え、結果展示の1週間前に急遽撮影を組むという恐ろしいことを決定した。こんな余裕のないスケジュールになってしまったにもかかわらず対応してくれたこなみんに感謝。

1回目の撮影の写真(2回目のはあえてここでは出さず・・・)

展示内容

さて、ここまで引っ張ってきたが「僕がフィーチャーしたかったこなみんの一部」とは、彼女が撮影後にXにポストする撮影者への空リプ。これが僕との展示用の2回目の撮影のあとのソレ。(違ったら恥ずかしいし、同じ写真家としてみた時のあなたのセンスが僕は羨ましいです)

「佐野小波」という存在はそれぞれとらえ方は異なるとは思うが、大枠としては「写真に写る人」。それは需要があってはじめて成り立つ存在で、可愛く、または綺麗でいれば10年続けられるものではなく、彼女は意識して需要を創り続けている。その1つの象徴がこの空リプであることは間違いない。僕が知ってる限り彼女のこれは途切れることなく約150文字というフォーマットを決めて何年も続いている。これを真似してやってみた人もいるだろう。しかしこれだけ長年続いている人を僕は知らない。余談だが僕はインスタに8枚しか写真が上がっていないというくらい継続できない。

このポスト、撮影者本人は「自分との撮影をこれだけ丁寧に捉えてくれてありがたい」と思うのはもちろんだが、それだけじゃなくそれ以外の人にも効果があって、リピーターの獲得だけでなく、新規獲得にも繋がっている最強施策だと僕は感じている。例えば、このポストは撮影したことがない人が見たらどう思うだろうか?撮ってみたいと思ってしまうのではないだろうか?

佐野小波が佐野小波であり続けられる理由

というわけで私の展示は空リプにスポットをあてた「佐野小波が佐野小波であり続けられる理由」をコンセプトにした。ラフに触ってめくってもらえるようにあまり綺麗綺麗した形にもしなかった。水平知らんがな?外れてもなんなら落ちてもいいようにくぎに引っ掛けただけだしね。和紙の感触も楽しんでもらえたと思うし、めくったときに見れる写真も楽しんでもらえたように思う。

合法的にめくって覗ける展示(ヤツナミ談)
僕の展示の正しい観方

個人的な反省

  • まず何より一般的に展示物には触ってはいけないという暗黙の了解があるので、声をかけないとめくってくれない!そんなの当たり前なんだけど、声掛けがなくても誰でも気軽にめくれるように何かもう一工夫するべきだった。

  • ステートメントの文字がいくらなんでも小さすぎた。とはいえ、プリントをこれ以上大きくするのはスペース上無理ってことでこっちももう一工夫するべきだった。

裏話的なやつ

  • 展示した写真と空リプには僕の撮影とは何の関係もない。ただ、当然だけど自分の撮影の時の空リプを使って作成してみたりはした。ただ、上にも書いたけどあまりの羞恥プレイのごとくの恥ずかしさにボツにした。

  • 一番下のステートメントが書いてある写真で、こなみんの表情がわからないどころかそもそも顔がわからない写真を選んでいるのは撮影する人がこなみんの表情を決められるんだよというようなニュアンスが込められてる。

  • 使わせていただいた空リプは偶然にも今回こなみんフェスでご一緒した作品の撮影のときのものが2つも含まれてた笑

嬉しいやら恥ずかしいやらでボツ

展示写真

こなみんフェスを終えて

出展者としてはとても楽しく充実した展示を行うことができたし、作品の解説を聞いてくださった人からは共感を得たような満足感もあった。ただ、反省にも書いた通りまだまだやれたことはあったと思うし、写真的にもこれからも精進していきたい。
改めてご来場くださった皆様、一緒にフェスを盛り上げてくれた仲間、こなみんを筆頭にした運営メンバー、全員に感謝いたします。

写真展に遊びに来てくれた旧友と話したときに、やっぱりこういうところに来ると写真が好きな人たちと写真作品の話ができるのがいいよねという言葉があって、改めて昔吉祥寺の小さいスペースでやった二人展でご来場くださった方に珈琲や紅茶をふるまいながらのんびりやったのもよかったなーまたやりたいなーとか思ったりした。いつかまたやるかもね。


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