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化学発光の色々

生物発光に続いて、化学発光のお話。化学式が出てくるので、卒倒する人は筆記見本だと思ってお気軽に眺めてください。
光を放つ物質として身近なのは蛍光ペンなどの蛍光色素ですが、これらは紫外線等の光エネルギーなしに自ら「発光」することはありません。(暗闇で見たらわかりますね)

化学発光というのは、このような、外からの光エネルギーは用いず、その代わりに化学反応のエネルギーで発光を起こす現象のことを言います。

まず1つ目が「ルミノール反応」。警察の鑑識が血痕を探るのに使う物質ですね。

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ルミノールは(生物のルシフェリンと違って)単一の化合物の名称です。ルミノールは、過酸化水素で酸化すると、中間体を経て励起状態のフタル酸ジアニオンになり、これが基底状態に戻るときに発光します。

最初の過酸化水素による酸化反応は、鉄イオンを触媒として促進されます。血液があるとその中の鉄イオンが触媒となり、急激に反応が促進されて発光するわけです。なお必要な鉄イオンはppmオーダー(%のさらに1万分の1の桁)なので、拭き取った程度でごまかせないのは本当です。大人しく諦めましょう。

ルミノール反応の面白い点は、酸化による発光の終了後に残るフタル酸ジアニオンも蛍光物質であることです。鑑識がブラックライトを当てているのは、発光の後に残ったこの蛍光物質を紫外線励起させて、蛍光によって血痕を探っているのです。この性質があるので何も発光に頼らずとも検査できる訳ですね。

次は、皆さんご存知オタクの光る棒、もといケミカルライトの原理である、「シュウ酸エステル化学発光」です。(サイリュームなどと呼びますが、これは登録商標。日本では株式会社ルミカが使用権を持っていますが、自社でも製品名があるようなので、今は必ずしもサイリュームとは呼びませんね。)

これもやはり、シュウ酸エステル(サイリュームの場合はシュウ酸ジフェニル)という基質を、過酸化水素で酸化することで得られる励起状態の化合物からの発光ですが、この反応の特徴は、シュウ酸エステル自体が光る訳ではないという点です。

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酸化されたシュウ酸エステルは、ジオキセタンという真四角の結合をもつ化合物を生成します。このジオキセタンは開裂する時、近くにいる蛍光色素にエネルギーを渡して励起させ、その蛍光色素が光るという原理です。なので蛍光色素を変えれば、カラーバリエーションが製造可能になるという訳なのです。

ケミカルライトのポッキンする前の片内側のガラスアンプルは蛍光色素とシュウ酸エステルが入った蛍光液で、外側は過酸化水素とか触媒の入った酸化液です。こういう配合なので、ポッキンする前に紫外線を当てると普通に蛍光が出ます。お試しください。

あとこれは余談ですが、ルミカが持っている技術は、もちろんこの配合もですが、より本質的には「ガラスアンプル封入技術」です。輸送時には割れず、折ろうと思えば折れる程よい強度の薄いガラスの知見に加え、液体を漏れなく完璧に封じられる技術があるので、どうもアンプル封入のOEM等も得意な様子。

株式会社ルミカは、この化学発光の原理や、触媒作用を勉強できるキットを販売しています。

夏休みの自由研究に良いかも知れませんね!

夏休み前に言えよという話ですが。
<完>

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