
冬の終わり
2月27日
河畔の林で日暮れを待っていました
できればこの冬が終わるまでに
フユシャクのメスの姿が見たい
それには彼らの活動が活発になる夜に
彼らの活動しそうな場所にいることが
より目撃の確率を高めることになると考えたのです
対岸の住宅の明かりが輝きを強め
樹木の間の闇が深くなっていきます
梢の向こうに星が瞬き
耳を澄ますと
植物の呼吸音が聞こえてきそうです
でも枯葉を踏む足音以外
何者かが蠢く気配はまるでありません
と
足元から小さな蛾が飛び立ち
懐中電灯の灯りの中を横切りました
しかし姿を追う百均電灯の光芒は瞬く間に闇に呑まれ
見失った蛾は2度と見ることはできませんでした
見つけたのは蜘蛛でした
桜の樹皮から這い出したところでしたが
光を警戒してか身をすくめています
かわゆい
オニグモの一種のようです
それからはまた何者も見つけられず
とうとう地下鉄駅に出る橋のたもとに至りました
時間は午後9時
気持ちは駅に向かいつつ
並木の最後の一本を覗き込むと
目線のやや上の闇に蝶が浮かんでいました
タテハチョウ科のヒメアカタテハです
成虫で越冬中なのか
それとも羽化したての成虫なのか
傷のないきれいな翅をしています
珍しい蝶ではありません
そして目当てのフユシャクでもなかったのですが
私だけ
季節の変わり目に立ち会ったかのような
清々しい気分に包まれました
“Mushi kago biraki” is brought to you by Tenomarche