羽化 夏の思い出
昨年羽化直後のツクツクボウシの写真をアップしましたが
そのひと月前にはアブラゼミの羽化を記録しています
ただその夜は羽化に至らなかったセミの最期も目撃し
その壮絶なドラマに打ちのめされていました
私たちがぞんざいに扱う命は
食われる命も食う命も
一つ一つが必死で生きており
一つ一つが儚く消えていく
まだ数えられるくらいの
シリアゲアリの一種と思われるアリは
成虫になろうとするセミの
殻から露出したやわらかい背に這い上り
強靭な顎を使って肉を食いちぎっていきます
その数は見る間に増え
時々ブルっと震えて殻から抜け出そうともがく生きた体を
瞬く間に黒く覆い尽くしてしまいました
そしてその少し上方では
もう一つの命が羽化を始めていたのです
すでに足元には不穏な気配が集まり始めています
急げ
早く
夜に向かって全身が飛び出したとき殻の腹部にまでアリは登っていました
まだ朝は遠く
それまでに翅脈に血液を流し翅を伸ばし乾かさねばならないのです
その場を求めて殻を離れたセミに追手が迫り
逃れる先にもアリは待ち受けています
もう見てらません
指に止まらせ安全と思われるササの茎に移します
私はアリが食糧を得る機会を奪ってしまいました
正しいことをしたのかどうか今も考えています