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おたよりコーナー#9に投稿しました。

本当なんです、信じてください。どうも、神山です。

先日、『さやわかのカルチャーお白洲』の大人気コーナー「おたよりコーナー」の第9回にて読まれた僕のおたよりについて、多分、地図とかがないと、どこのどういった話をしているかわからないと思ったので、そのあたりを注釈に入れて、おたよりを公開します。是非放送版もご覧ください。

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こんばんは、神山です。現在これを書いているのは、絶賛オリンピックというイベントが開かれており、金メダルと感染者数速報がタイムラインやニュースサイトのトップページに並ぶような時期になります。札幌でも競歩やマラソンで人手が増えたとか、札幌市民は地下にいるから地元民じゃない、みたいなのがバズってました。そんなことはともかく、今回は、ゲンロンカフェ北海道イベントが来月にはアーカイブから消えてしまうなぁ、ということで、北海道について考えた(怪?)文章をお送りします。

2021年3月29日にゲンロンカフェにて行われたトークイベント、『さやわか×武富健治×春木晶子 北海道を衝け―番外地はいつミルクランドになったのか』にて、北海道は外部からどのようなイメージを持たれるのか、ということを内面化し、イメージの操作に特化してしまった土地である、という話があった。※アフターイベントも面白かったよ、見てね!

この放送のあと、GWに、白老や登別といった胆振西部を観光した。胆振西部は、ウポポイ=存在した・しているアイヌ、伊達時代村=存在しなかった江戸時代、登別マリンパークニクス=存在しなかった西洋の城が共存しているという空間になっている。ここで思ったことは、登別が極めてフィクション、エンターテイメントによって観光客の注目を集めてようとしているのに対して、白老はアイヌのノンフィクション性や正しさによって注目を集めようとしている土地ということ。これらは相反しているようだが、先日のイベントを考えると、どちらも外から持たれるイメージをどのように操作したいのか、ということで合致している。

※緑の旗を立てているところのうち、右の1本が苫小牧(ノーザンホースパーク)、中央の2本が白老(ウポポイなど)、左の4本くらいあるところが登別(マリンパークニクス他)。胆振地方は西端は豊浦町(洞爺湖町の一つ西隣)、東端はむかわ町なので、今回のおたよりやこれまでのnote記事では「胆振西部」としてきた場所は、実際的には胆振中央と言うべきなのかもしれません。

もちろん、観光地だけでなく名産品にも、イメージの操作は付きまとう。養殖マス、白老牛、たらこ、温泉についても、品質や効能などの科学による裏打ちがあるものの、そのようなエビデンスは、牧歌的で大らかな北海道ブランドを打ち立てるための一要素として使われている。

そんな北海道らしさに過度に縛られてしまったアニメ作品がある。『フランチェスカ』だ。2014年7月から北海道ローカルで放映された作品で、北海道を舞台とし、カワイイ女の子のゾンビが活躍するアニメである。そのあらすじは、石川啄木がゾンビとして甦り、誤って新選組を復活させてしまう。新選組は現代の北海道をEZO共和国とすべく、侵略を開始する。その危険を察知したクラーク博士(ゾンビ)は新渡戸稲造(ゾンビ)と共に、人造人間?フランチェスカを蘇らせ、北海道を守るべく新選組と戦うという、誰もが知っている北海道にまつわる偉人のイメージを利用したものだった。

円盤も持っているし、様々なイベントにも参加したという身で正直に言おう。『フランチェスカ』は典型的に失敗した地域振興アニメ、クソアニメであったと。

箱館戦争を戦った土方歳三ほか新選組が登場したり、クラーク博士だけでなく新渡戸稲造が登場するにも関わらず、フランチェスカは現実の北海道史を下敷きにしていない。作品内における北海道史は、超・超古代北海道文明ナンマラシバレルネェ王国が崩壊し、超古代北海道弁が使われる時代がやってくる。その後、縄文時代から始まり現実の歴史をなぞっているかに思えるが、鎌倉時代に源義経が内地から稚内へ逃げてくる、さらに源義経=チンギスハン説を援用しモンゴルへ渡る、という伝説的な歴史を採用する。時を経て箱館戦争勃発、五稜郭の戦いや、クラークたちが生前北海道大学にいたことが描かれるも、その間にアイヌがいたことは描かれない。

現実の北海道史はおおまかに次のようなものである。縄文時代以後、内地は弥生時代に変遷したが、北海道はそのまま続縄文時代に入り、アイヌ文化へと変遷していく。江戸時代になり、松前藩が誕生することでいわゆる”日本史”と再合流する。そして明治時代を迎え、開拓史が置かれ、1869年に「北海道」が誕生する。この歴史のなかで、和人によるアイヌの征服行為があったのは確かだろう。その後、北海道は開拓100年を記念して塔を建てたりする。一方で51年後、151周年目である2020年には民族共生象徴空間:ウポポイをオープンする。

ゴールデンカムイが流行り、ウポポイがPRされている2021年から観測すると滑稽かもしれないが、7年前、北海道を宣伝するコンテンツにも関わらず、アイヌについて深く考えていなかったのだ。短期間で北海道のPRを兼ねながら、さまざまな制限のうえでアニメ作品をつくった結果、名産物や名所とキャラクターを絡めることが限界だったのだと思う。それによって描かれた日常は、あまりに普遍的であった。アニメが終わった後も、フランチェスカたちのように、当然大通公園でビールを飲み、ジンギスカンを食べることができると思っていた。しかし、そんな日常すらいま、ここにはない。

2021年の現実は、オリンピックで競歩やマラソンが開かれるということで、大通公園の中心部は柵に囲まれ、芝生は剥がされテントだけがある空間となってしまっている。コロナ禍で各地のお祭りも、イベントもなくなっていく。もちろん、日本全体がそうではあるのはわかっているけれど。安倍元首相が発出する前に、道独自と名付けた緊急事態宣言を出した鈴木知事は、本当に感染症の抑え込みたかったのかもしれない。というか、そうであってほしい。結局のところ、皮肉にも1年以上つづく自粛生活の先駆けとなってしまったわけだが。

フランチェスカの北海道観は、アイヌと和人・過去と現代の功罪を取り入れたものではなく、名産地や景勝、偉人を扱った観光的な需要に応えるためイメージを操作するものだった。いま、現実の政治がそれに近づいてしまっている。フランチェスカがクソアニメであるならば、その政治もまたクソ政治ということになるだろう。どうか、その状況にあることを省みて、イメージ操作に明け暮れず、具体的な方法で困難を解決していける方向に進んでほしい。

ふたたび「助けて、フランチェスカ」と言わないで済むように。

お読みいただき、ありがとうございました。

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ふたたびこんばんは、神山です。先ほどのおたよりの『フランチェスカ』の説明で、北海道発のアンデッド系ご当地アイドルとして、萌えキャラクター文化を通して北海道ブランドに付加価値をつけるコンセプトのもとで生まれ、石狩振興局の公式PRキャラクターとなり、官民一体となった地域振興プロジェクトとしてアニメなどのコンテンツが進行していた、ということを載せ忘れておりました。以上、補足のおたよりでした。

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