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虚構・現実・コロナ黙示録について。

感情がジェットコースター。どうも、神山です。

桜宮サーガ、「チーム・バチスタの栄光」から始まる、海堂尊による医療小説シリーズです。最近だと、ブラックペアンが嵐の二宮君主演でやってたりと、なんだかんだいろんな人に知られているシリーズなのではないでしょうか。今日はそんなシリーズの最新刊「コロナ黙示録」の話です。

桜宮サーガ、数年前に「スカラムーシュ・ムーン」が刊行されたあとは長編発表もなく、作者はゲバラシリーズという新しい作品を刊行しておりました。短編集は出てましたが・・・。

そんななか、2019新型コロナウイルス感染症の流行があり、それをうけた新刊が今回の「コロナ黙示録」です。桜宮サーガオールスターで、現実を襲ったコロナ禍に対して対応していく、という話となっており、虚実織り交ぜた作品です。フィクションながら、コロナ禍絡みのここ半年のことがまとめられており、良作だと思います。でも、でもなぁ…。

政権批判部分が、濃いのに、面白くない…。戯画的に描かれる安倍政権批判。確かに現実世界とシンクロさせてコロナ禍の話をするためには、現政権の話や各都道府県の知事の話などをすべきでしょう。でも、その手つきが、医療パートに比べてあまりにも露骨でメッセージが作品のフィクション性を乗り越えてきてしまっている……。

今作のみならず、基本的に桜宮サーガの各作品における「敵」は疾病よりも、治療や防疫、検視などの医療の進歩を妨げる人間たちです。病、基本的に治したり付き合ったりする存在ですが、環境なので。今回もCOVID-19は敵というよりは発生してしまった厄災で、敵として挙げられるのは現政権を戯画的にうつしている人々。結果としてどうなったのかは、ネタバレになるのでしませんが、現在進行形のCOVID-19が撲滅されたり、ワクチンが開発されたりはしないのでご安心を。

桜宮サーガファンとして勧めるかどうかは正直微妙なところ。本作がなくても各シリーズはちゃんとひとまずの終わりを迎えており、地方自治の話や新型インフルエンザを題材にした防疫の話、医療行政や司法の話、地方医療の話は既存のシリーズ作品で読めちゃうので・・・。ぼくが好きなのはバブル三部作だし・・・。

というわけで、宙ぶらりんな評価の一冊です。シリーズファンで全体を押さえておきたい、という人は読まなきゃですが、マジで政権批判パートのせいで筆者を嫌いになるリスクはあります。桜宮サーガのフィクションキャラクターたちはいつも通りで、感動するシーンすらあるんですけどね・・・。

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