HMAMATSU Edit 展示レビュー
2021年6月26日から7月18日まで名古屋の写真ギャラリーPHOTO GALLERY FLOW NAGOYAにて開催されている写真家である若木信吾と編集者である後藤繁雄との共同企画「Hamamatsu Edit」の写真展のレビュー
NEO TOKYO ZINEとしてブックも発売され、地元浜松での展示を終えての名古屋での巡回展示である。これらの写真は、若木信吾が地元である浜松に戻って撮影を行ったローカル写真であるのだが、一見すると知り合い同士の記念撮影にも見えかねないこれらの写真は一体どういった意味があるのか。
昨年である2020年に我々は強制的に地元、いわゆるローカルという枠に押し込められるという経験を世界的に一斉に行った。
生活は一変し、ニュースタンダードという言葉が独り歩きをし、ネットワークと融合した生活は加速し、人間が動きを止めた地球は少しだけ自然を取り戻した。
それぞれの人々がそれぞれに出来ること、可能性を模索したのは、ほんの数ヶ月前の話である。
あの時、写真家に出来ることは何であったのであろう?
人の居なくなった街を撮る写真家も居た。自宅にこもり、室内での撮影に望んだ人や、過去に撮りためた写真と一人で向かい合った写真家も居たであろう。
では若木信吾と後藤繁雄の考えた、出来ることは何であったのか?
たとえば、この先数十年が経過し、我々が一般通常の生活を取り戻した時、写真家である若木信吾の仕事の軌跡を辿ったときに、なぜこの写真を撮影したのであろうかと写真の意味を読み解くときが必ず来るであろう。それほどまでに、これらの写真群からは一般的な写真としての異質さが漂ってくる。
それらを読み解く過程のキーワードとして2020年が浮かび上ったときに、コロナというカタストロフがより顕著に浮き彫りになるであろう。
ここに映っている人々は、普段から浜松に居ないで、同じ様に地元に戻りローカルという枠に押し込まれた人々かもしれない。実際に真相はわからないが、その年、その時期に地元に滞在していたという記録である。
こう考えた時、2020年でなければならないローカルな写真が未来に意味を持って蘇ってくるための印を若木信吾は付けたのだと思うに至った。
2020年がいつか忘れる日が来て、これらの写真を見ることで思い出す時が来ることを切に願う。
2021.7.8
PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA
https://www.photo260nagoya.com/
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